インドネシア:地震とムラピ火山 OCHA現状報告書 No.12

この報告書はインドネシア、ジャカルタの国連常駐/人道調整官事務所、及びジョクジャカルタの
国連チームによる情報に基づいている。
■概要
・政府は緊急支援再建プログラムのための資金要求額を1兆750億ルピア(1億1,460万2,197米ドル)
 から5兆ルピア(5億3,291万3,766米ドル)に引き上げた。
・外傷者が多いため、外科治療のための機器、医薬品、人員が至急必要である。
・ムラピ山の火山活動は活発になっている。周辺住民たちの避難が更に続いている。
■状況
1. 6月8日17時現在、死者5,722人、負傷者37,924人に上る。
家屋12万2,301戸が全壊し、更に41万5,169戸が地震により被害を受けた。
全ての統計数は災害管理調整委員会(BAKORNAS)による。政府(MENKOKERNAS)は地震の
被害者を以下のように3種類に分類し、彼らを援助する補償プログラムを準備している。
a)家が全壊 b)甚大な被害 c)軽度の被害
このプログラムの対象者数は全てのカテゴリーに相当する人々も含めて150万人になる。
2. 現地時間6月8日11時44分、マグニチュード4.3、改正メルカリ震度ⅡーⅢの余震がクラテンを
襲った。クラテンの北、約6.48kmの南緯7.8、東経110.3の地点、深さ15kmが震源地である。
揺れはジョクジャカルタ、及びその周辺でも感じられた。 
◇ジョクジャカルタ州
<バントゥール>
3. 6月8日現在、外傷治療数は1万2,872件から261件へ減少した。
4. バントゥールで最も被害の大きかったJetisでは人々が近隣住民や親戚と協力して瓦礫の
撤去作業や将来の家屋再建に使えそうな材料の再利用を始めている。
5. 地区当局はインスタント麺や瓦礫撤去のための機材一式を求めている。これらの品々は
現地調達されるべきである。
<ジョクジャカルタ特別州>
6. 物資配給ルートをふさいでいる瓦礫を撤去するための重機が必要とされている。
7. この地域の再建計画は諸大学と協力して進められている。
<中部ジャワ州>
8. 政府はCawas.Prambanan.Bayatに、テントや避難生活キットを提供する団体を迎え入れている。
この品々は現地で入手されるべきである。
9. 各自治体は地震による瓦礫や破片の撤去を始めた。煉瓦工事、大工仕事の道具援助は
喜ばれるだろう。必要なものは現地で入手できることになっている。
<ムラピ火山>
10. 専門家は、他の有名な火山ほどムラピ火山は危険でないと主張している。
2,3年毎に噴火するが、驚くほどのものではない。付近の住民は慣れている。
11. よく訓練されているので、村民は10分あれば屋外避難が出来る。
固定キャンプも再供給されつつある。(地震の救援物資として集められたのだ。)
村民は老人、女性、子供を夜このキャンプへ行かせ、その間は体に異常の無い者が家や財産を
守るために番をするのである。救援活動に最も影響するのは、人々が個々に様々な時間に、
また様々な期間、山を離れる事だ。これにより、救援物資の配給計画の優先順位を決める事が
難しくなる。
12. 火山学地震学危機緩和センターは溶岩流と火砕雲のレベルが上がっていると
報告している。未だ警戒レベルは最高のままである。溶岩ドームは1日に80回も
軽い崩壊が起こっている。
13. 県当局は6月8日15時現在、Magelangの5郡から1万2,074名が30のキャンプへ避難したと
伝えた。3,084人はSlemanの8キャンプへ、3,507人はKlatenの3キャンプへ避難した。
14. Boyolaliの県当局は、今まで出されていた避難命令を解除した。しかし、当局、自治体、
キャンプは状況が悪くなった時のための避難に備えている。
■政府の対応
15. 政府は緊急支援再建プログラムのための資金要求を1兆750億ルピア(1億1,400万米ドル)
から5兆ルピア(5億3,300万米ドル)へと引き上げた。
16. インドネシア政府国家開発庁(BAPPENAS)の構想によると、災害後の復興プログラムは
3段階に分けられている。
a)緊急対応期(1~2ヶ月)
捜索、援助、救急医療、仮避難所の用意、瓦礫撤去
b)修復期(2~12ヶ月)
公共サービス、基本的社会サービスの回復、経済的機関の復旧、住宅の再建、精神面のリハビリ
c)再建期(7~24ヶ月)
生産、通商、銀行といった経済活動の再建、輸送システム、通信システム、社会的文化的回復、制度的回復
17. 州政府は中部ジャワ州で被害を受けた地域に教室用のテントを150張提供した。
政府はGajah Mada大学心理学部と共に、心理社会的サポートを行う予定である。
7月17日からの新学期に向けて、生徒達を励ますために政府は無料の征服、鞄、その他の学用品を
提供しようと計画している。
■分野別の最新状況
◇健康
18. 外傷者が多いため、引き続き外科治療のための機器、医薬品、人員が緊急に必要とされて
いる。医療団は必要物資リスト作成、伝達が求められるだろう。この件についてはジョクジャカルタで
調整される。
19. 寄付された麻酔薬が大量に保健課に届いているが、多くはインドネシアでは馴染みのない
ものである。薬類の保管、分配、管理が州保険事務所の課題である。物資は全て登録され、
中央局を通して希望地に届けられる。一方、将来的には医療物資は現地調達される事が
強く勧められる。州保険事務所所長が議長を務める調整会議で、全ての物資は配布前に薬庫で
登録される事に決まった。
20. 保健省は、寄付される麻酔薬は最低1年の有効期限が残っているべきだと強調する。
WHOは情報システムの向上、キャパシティビルディングの向上のために州保健所をサポートし、
IT機器を提供する予定である。AusAID(オーストラリア国際開発庁)も物資管理、システム改善の
ため州政府を援助する。
21. 外来患者への医療サービスは、インドネシアと26の援助団の医療従事者による移動クリニック
が提供している。整形外科治療の専門家、医薬物資、機器を除いては今以上の医療従事者は
必要ないと政府は発表している。
22.はしかの予防接種、破傷風薬の配布、ビタミンAキャンペーンが実施されている。破傷風は
大人も含め5件報告され、1人は死に至っている。WHOグループは状況を見守り続けている。
破傷風の予防、治療法についての保健省のガイドラインは全ての医療機関、スタッフに伝えられた。
23. ジョクジャカルタの被災地域では破傷風患者が増えているとの報告を受け、IRDは
抗破傷風薬1,600缶の発送、配達を取りまとめている。IRDの報告によると、Northwest Medical
チームから1万8,000米ドル相当の人破傷風免疫グロブリンが現物寄付され、ジョクジャカルタ州
保健所と共に至急配布出来るよう調整中である。
24. 州保健所とUNICEFはメンタルヘルスと心理社会的なグループをまとめることに同意した。
各グループは保健省、社会省に報告する予定である。第一回のメンタルヘルス/心理社会合同
ミーティングは6月10日09時から州保健所で行われる。6件の自殺が報告された。他にも66名が
重度の情緒不安定や鬱で入院している。
25. WHOは「誰がどこで何に従事しているか」についての調査、地図作成を援助している。
WHOとGajah Mada大学は保健サービス、物資に関する全ての情報を提供するウェブサイトを
立ち上げている。www.disaster-java-06.simkes.org
26. IOM(国際移住機関)は1352人の退院患者と付き添いの家族を新たに病院から家へと戻した。
また、外傷患者のアメリカ海軍やJICA野外病院から郡回復センターへの移送もサポートしている。
27. 5つの準保健団がジョクジャカルタで結成され、定期的にミーティングを行っている
(医薬サービス、監督、伝染病の蔓延防止、予防接種、物流と保健提供、心理社会的サポートと
メンタルヘルス)。ジョクジャカルタ保健局のデイリーミーティングは州保健所で17時に開かれている。
28. 日本の製薬会社PT EISAIが医療物資、機材手配用として保健省に10億ルピアを寄付した。
一団はジョクジャカルタの病院を助けるために送られた。
◇避難所
29. 緊急シェルターの安全性は当初の見積もりほど良くはない。全く、もしくは部分的に居住困難と
思われる家屋の統計は、元々の見積もりであった14万戸の3倍の47万戸にもなる見込みである。
しかし、損害を受けた建物の数が世帯数と一致する訳ではないし、シェルターの点から、現在危機的
状況にある人数を把握する事は不可能だと指摘せねばならない。緊急シェルターの普及率の見積もり
は、現在、被災した2州の約80郡のうち12郡からのみ可能である。これらの郡の平均普及率は
65パーセントである。
30. 敏速シェルター安全性アセスメントがナショナルNGO組合とジョクジャカルタ大学工学部の
共同で計画されている。ベースラインデータは6月15日から利用出来る。
31. 「誰が何をどこで」地図の作成は進行中である。最初の地理学的ギャップ分析は近日中に
利用出来るようになる。
32. 緊急シェルター調整グループは全ての関係者の代表から成る戦略プランニンググループを
創設した。このグループは政府への説明に先駆けたフィードバックのために広く配布された戦略構想
のアウトラインを起草した。技術作業グループは創設途中である。
33. 現在、緊急シェルター調整グループには68のNGOメンバーがおり、そのうち3人は300人
以上のメンバーを抱えるナショナルNGO組合の代表である。
◇水と衛生設備
34. 衛生設備の需要が高まっている。31000のトイレが求められているが、約9000不足している。
35. 水の保管は未だ問題のままである。20万缶が求められているが、1万不足している。見積もりでは井戸野20パーセントがダメージを受けた。
36. UNICEFと緊密に協力しているAus AID アセスメントチームは水道、衛生設備への損害に
ついてよりシステマティックに査定中である。初めの調査によると、ほとんどの人が保管状態が
問題であるにも関わらず、未だに水源へと足を運んでおり、壊れた家のトイレがまだ使われていることもある。
37. 衛生推進作業グループと学校衛生グループは教育局の元に合併されるだろう。
◇食事
38. WFPは10万人分の米、添加麺、ビスケットを提供したが、油、魚、肉はない。WFPは来週、
家庭食事安全性・状況アセスメントの開始を予定している。
39. いくつかの孤立したコミュニティは未だ査定されたおらず、必要性は高まるだろう。
貧窮したコミュニティは確認されており、救援物資や支援を分配するためにUNICEFが調整する機関がある。
40. 現在、乳幼児とその母親のための適切な食事が不足している。粉ミルクを求める声が多い。
UNICEFは乳幼児用栄養食やミルクの支給についてジャカルタとジョクジャカルタの寄付、パートナー機関に訴えた。
41. UNICEFは緊急時の乳児保育指針に参加している。
 -母乳育児が緊急時こそより重要になる。
 -ミルク代用品は下痢、栄養失調、幼児死亡のリスクを高める。
 -もしミルク代用品が広く使われるなら、ガイドラインに述べられた原則に依り専門スタッフがその
   使用をチェックすべきである。
◇子供の保護
42. 保護活動の指針作成は完成した。主活動としては、子供のための交流スペース作り、カウンセ
リング、心理教育、食料を含む救援物資の分配が挙げられる。保護活動はSedayuとKasihanを
除いて、バントゥールの全ての被災郡で行われた。
43. 2つの出張コミュニティセンターと5つの子供センターは社会福祉課と地域NGOKakakの協力の
下で創立された。これらのセンターは子供のためのレクリエーションや心理社会的活動を行っている。
44. 傷つきやすい子供たちの登録について、国、州の保健局員10名と、セーブザチルドレンの
登録員5名のトレーニングが6月2日に行われた。8人の子供が登録によって身元が確認された。
他にも40人(CARDIにより確認された)が傷つきやすさの基準に当てはまっている。
45. UNICEFは、地理的なプログラミング範囲の欠陥といったような、保護クラスターで処理される
べき優先課題を見つけるためのコモンアセスメントと地図作成活動を始めている。
◇教育
46. 今日、4,000人の子供たちがUNICEFの緊急学校用テント20張の中の学校に戻っている。
47. 日本が3,000~4,000張の学校用テントを提供すると予想されている。
48. Plan Internationalは小中学校のために、学用品、教師要請、心理社会的サポートに加え、
100~120の一時的学習スペースを提供する予定である。
49. セーブザチルドレンUKは100の学校のための指導、学習物資に加え、300~400の学校用
テントを提供する予定である。
50. USAIDは全土プログラムといくつかの被災地域への特別プログラムを通して、技術援助、
緊急援助を提供する予定である。
51. UNICEFは、教師と生徒たちのための心理社会的サポートの組織、内容、養成の点での
技術援助、約25万人の教師と生徒のための指導、学習物資、そして1000張の学校用テントを
提供する予定である。
◇早期復旧
52. 中ジャワ政府は総貧困緩和プログラムの推進、生計基準の設定、監督者の提供を通して、
出来るだけ早く生活を元通りにしたいと思っている。
53. 復旧のための災害リスク軽減プログラムはクラスターグループで議論されてきた。いくつかの
組織はより安全な建築方法を奨励するためのリーフレットを作成し始めている。
54. 日本政府は復興と再建のためのニーズアセスメントを行うための使節団を派遣した。日本からの
寛大な援助1000万米ドルのうち5百万米ドルは復興再建プログラムに充てられる。
◇物流
<陸上・海上輸送>
55. クラスターミーティング上層部の決定によると、ロジスティックス調整メカニズムは
「ロジスティクスクラスター」に格上げされた。
56. 現在の陸上輸送需要は政府の配分で一日に10~20台のトラックに上る。
更に人道コミュニティ全体のためのトラック、更にSoloとジョクジャカルタでの帰航空輸の
予備のためのトラックがある。
57. ATLASロジスティックスはトラック15台、日常の需要に応えるための小型トラック数台を
所有している。キャパシティは需要に見合うように設定されている。コミュニティへのサービスの
一環として、ATLASロジスティックスはトラック運送に関するあらゆる文書(積荷リスト、
貨物運送状等)を準備している。今や
95の地域NGOと20の国際NGOがATLASロジスティクスを利用している。
58. IOMはトラックでの配達サービスと郡保健事務所(DHO)のためのミニバン、バスを提供
している。護送システムはMedanとジョクジャカルタ間のIFRCのニーズをサポートするために
機能している。
59. IOMは米500トンを輸送した。トラックはクラテンとバントゥールへの配達を行っている。
IOMは更に、政府、国際援助機関、海外の提供者に代わって被災地へ救援物資581トンを送り届けた。
60. トラック料金についてはIOMとATLASロジスティックスにより準備されている。緊急の
物資輸送対応はトラック及び燃料のコストに強い影響力を持っている訳ではない。
燃料ストックも同様に影響を受けず、供給も絶えず行われている。
61. 救援物資の陸上輸送サポートが必要な機関は、遅延を避けるため予めIOMもしくは
Atlasロジスティックスに連絡を入れるべきだ。
62. 一般に交代フライトは減ってきている。Solo とジョクジャカルタ空港の空輸連絡路は
うまいやり方で人道的援助を受け入れている。DHLDRTは2,3日中に撤退する予定だが、
TNI Air Force Personnel は荷降ろしと供給物の記録を続ける予定で、それを遅延なく
遂行している。チャーター機到着や空港からの供給物の集積の調整についてはMajor Alan
Toh(+62(0)8139224135,alanwokie@yahoo.com)に連絡を取られたい。
◇保管
63. バントゥールでは2棟の移動式倉庫が操業できる。WFPは6月10日からさらに5棟を
利用可能にするつもりだ。WFPはまた移動式で尚且つエアコンを完備した倉庫を求めている。
というのも、現在の倉庫は充分な気温管理が出来ていないからだ。
64. ATLASロジスティックスは北ジョクジャカルタの廃倉庫スペース400㎡を所有している。
65. 物流情報は近日中にリリーフウェブ(www.reliefweb.int)で入手可能になる。そこには
通関手続きの詳細、保管や他の物資輸送問題についての潜在的障害や関係も含まれる。
■調整と安全性
66. ジャカルタの災害管理チームミーティングは、定期的なIFRCとINGOの参加を考慮して、
これからはIASC(inter-Agency Standing Committee)ミーティングと呼ばれる。
67. 次の現場調整ミーティングは6月12日(月曜日)ジョクジャカルタで開かれる。
68. 調整ミーティング(火・木・土)とクラスターヘッドミーティング(月・水・金)は日替わりで
ジョクジャカルタで開かれている。
■求められている援助
政府はいつでも可能なときに、あらゆる援助が現地で享受され得るように求めた。
69. 地震による瓦礫を撤去するための重機が求められている。
70. 外科治療物資や機材が必要とされている。病院のサブグループは外科治療物資の
不足リストの提供、伝達が求められるだろう。これはジョクジャカルタで調整されることになっている。
71. 9,000の緊急時用トイレが必要である。
72. 1万個の石油缶が必要である。
73. 学校を再建するためには4,500張のテントもしくは仮学習スペース、大量の学校用具や
指導学習物資(教科書、黒板等)、発電機、衛生設備、そして1,528の常設学習スペースの確保が
必要である。
74. 生徒や教師のための心理社会的サポートも必要である。教育援助に興味があるなら
州教育課課長に連絡する事でジョクジャカルタ知事にその旨を伝えられる。
電話 +41-22- 917 12 34
ファックス +41-22-917 0023
Eメール ochagva@un.org
緊急時電話番号 +41-22–917 20 10
担当者
Ms. Merete Johansson
直通電話 +41-22-917 1694
Mr. Guido Galli
直通電話 +41-22-917 3171
プレス連絡先
(GVA)Ms. Elizabeth Byrs 直通電話 +41-22-917 2653
(NY)Ms. Stephanie Bunker 直通電話 +1-917 367 5126
情報源:UNOCHA
原文URL:reliefweb.int
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