インドネシア:愛、希望、そして決意が女性たちを津波後のより良い未来へと導く

Vivi Roselim, ACTインターナショナル
■インドネシア、西アチェ、2006.3.15
世界中が世界女性の日を祝った3月8日、女性たちがテントの外にひいたマットに座
り歓談していた。彼女達の会話を中断させたのは笑い声だった。2004年12月
26日の津波が彼女達に突きつけた大きな困難の最中、女性たちは共同生活や新たな
結婚を通して、友情、愛、そして人間関係の緊密さを再発見しつつある。
座って話し込んでいる間も、彼女たちの手は伝統的な贈り物であるRanup Lampuanを
作るのに忙しく動いていた。材料はバナナ、ビンロウジ、ライムといった様々な葉や
ビンロウの新芽、バナナの木の蕾などである。
皆、出来る限りの仕事をこなしているように見え、彼女達の手は素早く動きながらも
慎重に、葉を素敵な装飾品へと変身させていた。
こんな出来事は、女性たちが集う数多くのきっかけの一つに過ぎなかった。この村で
は500人以上が津波で命を落とし、この筆舌に尽くしがたいトラウマになるような
惨事が、村人たちを以前より緊密にしたのである。
しかし、この午後の「集会」は特別なものだった。「今晩、甥のLukman が恋人にプ
ロポーズするのです。私たちが作っているのは彼女の家族への贈り物です。」と34
歳のIrayaniは言った。彼女は、西アチェMeureboにある、津波で家を失った人々のた
めのTanjung Harapan Camp(希望の岬キャンプ)で暮らしている。Irayaniは甥の幸
せに喜んでおり、25歳のLukmanの結婚は自分達がこのキャンプで暮らし始めてから
少なくとも12組目だと付け加えた。
愛する人を亡くしたことで傷ついた人々の心から一度は忘れ去られた愛が、今、女性
たちによって大喜びで語られているのである。
46歳のYunasriは津波で夫と3人の子供たちを失った。だが、彼女は隣人たちと過
ごす事で慰めと愛情を見つけたのである。「私はキャンプで一人暮らしをしているの
で、ここでの友人が私の全てです。私の愛を彼らと分かち合っているのです。」と微
笑む彼女の肩には、友人達の手が置かれていた。何人かの女性はUjong Beurasok
camp に9ヶ月暮らしており、津波直後の緊急時からチャーチワールドサービス
(CWS)インドネシアの援助を受けている。CWSは国際団体 Action by
Churches Together(ACT)international の一員である。
政府による定住再分配が不確かな中でのキャンプ生活という困難にも関わらず、彼ら
は何とか生き抜こうとしている。悲しみの中にあっても、同じ運命を共有した者同
士、または単なる友情を超えた関係の中で愛情が育まれている。
彼女たちに愛とは何かと尋ねると、こんな答えが返ってきた。「愛とは説明できるも
のではなく、ただ感じるものです。」
「友人達が新しい夫や妻を見つけられて嬉しく思います。こんな状況の中、一人でい
るのは良い事ではないですから。でも独身であっても、私達にはお互いがいるのです
から恵まれています。」と、61歳のLatifahは言った。彼女はこのグループでは最
高齢で、津波で夫を失ったのである。
■ 愛、希望、そして決意
同じくTanjung Harapan camp に住み、最近再婚したばかりのRoyaniは相手を見つけ
た幸せを隠せなかった。「2ヶ月前に結婚したばかりです。知り合って1ヶ月足らず
で結婚しましたが幸せです。」と満面の笑みで話した。彼女は息子のズボンを直して
もらおうと仕立て屋に行ったところ、夫となる45歳の仕立て職人Basniと出会った
のだった。
前の夫を津波で亡くしたRoyaniは、こんな幸せをもう一度感じられるようになるとは
思わなかったと話す。愛の定義を尋ねると彼女はこう答えた。「愛について説明する
のは難しいです。ただ言えるのは、一緒にいることで愛は深まるという事です。」
彼女の新しい夫はRoyani と12歳の息子Misriyanto の大きな支えである。「精神
的にも経済的にも私たちを支えてくれています。もっとも面白いのは、彼が私の息子
を自分の息子のように扱ってくれることです。十分すぎるくらいにね。」Royaniは、
Basriの子供たちは成人し家庭も持っているのだと付け加えた。
混乱の中から全てをもう一度やり直すことは人々にとって容易いことではなかった。
Royaniは現在、パートタイムのメイドとして働いており、CWSの援助で、市場で売る
ための疑似餌も作っている。Basriは仕立て屋を続けているが、新しい家族のために
独立してビジネスをはじめようと考えている。
津波から生き延びたことは即ち、未来に向けた格闘を意味する。悲しみや悲嘆が影を
落としているにも関わらず、この女性達は愛、希望、決意を示したのである。
女性たちは、お互いの、または家族からの関心や支えだけを感じているのではなく、
外の世界からのものも認識している。「だから私達は、私達を助けてくれる人、助け
がある事を教えてくれている人全てに感謝の気持ちを伝えたいのです。」とRoyaniは
語った。
Vivi Roselim はACTインターナショナルの一員であるCWSインドネシアの情報
局員である。
原文URL: www.reliefweb.int
情報源:ACT International
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