No.35「もう一つの被災地」

ガジアンテプのとある地区。半壊したような住宅が立ち並び、その間の更地にテントが張られている。地震によって被害を受けた人たちがガレキの撤去された場所にテントを張って暮らしているように見える。だが、ここは違う意味での被災地だった。

クルド人の人たちの状況を知るために来たが、この地区の状況は違っていた。地震の被害が全くないわけではないが、それ以前からあるこの地区の状況は深刻なものだった。
20年ほど前からここに住む男性(50歳)は「いずれここは全部壊される。政府はここを再開発して金を稼ぎたいんだ。」とつぶやく。家屋をよく見ると地震の被害を受けたのではなく、解体されようとしていた。
「立ち退きの保障をもらっても新たな家を建てるには全然足りない。俺たちの命に価値がないということだ。人間皆、平等なはずなのに・・・」という。この男性は、以前はシャンルウルファ県にいたが仕事がない事でここに来たそうだ。「貧しいから安いここを選んだんだ。不法に家を建てるしかなかった」と。
5か月前まではスリッパ工場で働いていたが、「お前は年だから役に立たない」と解雇され、それからずっと無職だという。
「政府に対して不満がたくさん溜まっているが、自分の意見を言うと逮捕されるかもしれないからな・・・」と不安げな顔をする。
この震災の政府の対応について聴くと、「ガレキの下で生き埋めになっているヌルダの友人から電話が来たのですぐに政府に連絡した。AFAD(国家緊急事態管理庁)が来るから・・」と言われたが、その後も政府の支援が来ることはなかったそうだ。この男性もヌルダに救援に行ったが、道具も機械もなく「多くの人が置き去りにされていた」という。建築についても、「本来建てるべきでない田畑に住宅を建てている。建築業者も材料を選んでいる。でも、許可しているのはすべて政府だ」と言った後に、「考えていることをいう事も罪になるんだ」とポツリ。
「この国に正義はない。力を持っている人間が正義になる。皆、悪い状況だと気づいているが、何も言えないんだ」「不満が溜まっていたから話せてよかったよ」という言葉を最後にその場を後にした。

トルコには、地震という災害の前から災害のような厳しい状況の人たちがいるという現実を思い知らされた。
(吉椿)

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