CODE未来基金
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2016年度後期CODE未来基金プログラム ネパールフィールドワーク
プログラムの概要
2016年度後期募集プログラムで採択された、兵庫県立大学4回生の立浪雅美さんの「Discover ~未来への可能性を広げよう~」を実施しました。立浪さんを含む学生3名と2015年に発生したネパール地震の被災地を訪れました。
日 時:2017年2月22日~3月5日(11泊12日)
内
容:CODEが支援を行っているソルクンブ郡・グデル村を訪れ、現地の生活を体験し、住民と交流することを通して日本とは異なる生活や価値観などに触れ、異文化への理解を深めます。実際に村まで2日間かけて歩き、村をじっくり回って話を聞いたりすることで、限られた時間の中でも最大限の実態を知ることを狙いとしています。
フィールドワークのようす
~グデル村シャーレにて~
CODEの支援した26棟の耐震住宅の再建はほぼ完了した。訪問した日は、最後の1棟の引っ越しの日で、学生たちは、高齢女性2名にお話しを聞き、仏教行事も体験する事ができた。また、倒壊した寺院の跡に再建された老僧の自宅は一部屋を仮の寺院にしており、「自宅より寺を先に再建したかった」と語る僧侶の言葉にシェルパ族の文化を感じた。 幼い子どもを持つ母親へのヒアリングでは、妊娠時の定期検診や産前産後の通院も片道3時間の山道を歩くという厳しい現実を見せつけられた。 |
また、住民のご好意によってシェルパ族のダンスや歌を披露していただき、最後には参加者も交えて皆で踊り、交流を深めることができた。 その後、学生主導で住民との対話のワークショップの時間を持った。主に、村の自慢や故郷への想い、この村の課題などをテーマに意見交換したが、若者の声はあまり出なかった。もう少し時間をかけて若者どうしで共有体験の場を持てれば、相手への関心が芽生えたのではと反省。ワークショップでの住民の声から、「皆、この集落をよくするために学びたい。だが、何から学んだらいいのか分からない。」という事が見えてきた。 最終日、シャーレのリーダーたちとの意見交換の中で、他への依存からではなく、まずは自分達から出来ることを始めてみようという共通認識を持つことが出来た。 |
~グデル村グデルにて~
ラクパさんやニマさんの故郷であるシャーレからグデル村の中心部グデルへと徒歩(約2時間)で移動した。CODEのメインプロジェクトである耐震モデルハウスの見学を終え、立浪さんを中心にヘルスポスト(簡易診療所)でもスタッフへのヒアリングを行った。他の学生2名は各自、村歩きを行った。各自が、それぞれのスタイルとペースで住民に声をかけ、身振り手振りでコミュニケーションをとり、ほんの少し村の生活を体験させてもらっていた。
夜には、各自のその日の活動を共有した。医療スタッフにヒアリングした立浪さんは、もう少し相手の立場に寄り添って話を聴くことの大切さに気付いたことから、翌日は村の事情をよく知る医療スタッフと共に村を歩くことになった。
グデルでの2日目、医療スタッフ、ラムさんと共に村を歩いた。村の独居の高齢者や病気を抱えている人のお宅を回り、親しげに声をかけながら相手を気遣うラムさんの姿から、その人の生活(くらし)を知ること、寄り添うことの意味を感じとった学生たちであった。
最後に訪問した商店を営む女性タラライさんは、小学校の教師で、偶然にも大工のニマさん(CODEと共に住宅再建を行った)のお姉さんのような存在の人であった。ニマさんが日本から帰国してから、日本で学んだことをよく話していると語ってくれた。
~CODE未来基金ネパールフィールド研修を終えて~
12日間のフィールド研修中、グデル村に滞在できたのは、わずか4日間のみであった。時間的な限界もある中、学生たちは、それぞれのテーマをしっかりと持ち、共通して「一人の話をじっくりと聴く」ことを実践した。企画者の立浪さんは、医療の専門性以前にその地域のくらしを知り、目の前の人に寄り添う事をこの研修の中で考えさせられ、高橋くんは、「故郷を想う若者」をテーマに「ネパールの若者の声はなかった。あったのは一人ひとりの声だった。」と語った。「震災、一人に向き合う」をテーマにした今中さんは、自分なりの寄り添い方を考えながらネパールの山村で自分を見つける事ができたという。
学生たちは、ネパールの被災した村の住民に向き合う中で、三人三様に自分に向き合い、ネパールの山村を通して今の自分自身や今の日本が見えてきたようだった。この経験はきっと今後のそれぞれの道に活かされるに違いない。
なお、企画者の立浪さんはこの4月から尼崎の保健師として働き、将来は途上国で保健医療のNGOで働くことを希望しており、今中さんも四月より金融機関で働きながら今もCODEにかかわり、高橋さんはこのネパール研修を機に、未来基金の後期のインターンシップに申請をしている。CODE未来基金は、確実に若者の未来への第一歩になっている。(吉椿雅道)
参加した若者の感想
立浪 雅美(兵庫県立大学4年)
今回の私のフィールドワークのテーマは「村の生活の様子を知る」ということでした。将来途上国での国際保健活動に携わる保健師になりたいと思って今の大学に入学したのですが、大学での勉強や海外研修などを通して、貧困・災害・教育・医療など途上国の現場で生じるさまざまな課題は、現地住民の生活と密接につながっており、またそれぞれが複合的に関連しながら起きていることを学び、医療や看護のことだけ知っていてもだめなのだなと感じていました。未来基金でネパールに行く機会をいただけたことで、まずは村の人々がどんなふうに暮らしているのかを知りたい、実際に現地に行って自分の目で見て、村の人に話を聞いてみたいと考えていました。
ところが、現地でヘルスポスト(簡易診療所)の見学をしてスタッフに話を聞いた際、気がつけば私は、村で多い病気は何かとか、母子保健はどうなっているのかとか、看護に関することばかり質問攻めにしてしまい、周りが見えなくなっていました。診察を受けに来ていた村の人達がイライラしていたということにも、その日の夜のミーティングで指摘されるまでは気づけずにいました。「生活を知りたい」と思ってネパールに来たはずなのに、村の人に寄り添おうともせず、私は何をやっているのだろう…と、情けなくなりました。
「生活を知る」ためにはどうすればいいのか、始めは頭でぐるぐると考えていました。誰に何を聞けばいいのか、どこに行けばいいのか、考えれば考えるほどわからなくなって、逃げ出したくなりました。でもそこで、一緒に参加していたメンバーの2人が自然体で村の人に接していた姿や、目にしたものに素直に反応していた姿を思い出して、「頭で考えていても仕方ない。とにかく、自分が感じたものに正直になろう」と思い、村を歩いてみることにしました。すると、畑で葉っぱを収穫していたお母さんに出会い、家にあげてもらって、見よう見まねで料理を手伝って、ごはんを食べさせてもらうという体験をしました。言葉は全然わかりませんでしたが、普段こんなふうに暮らしているんだなと感じることができ、「生活を知る」という自分のテーマに、少しですが近づけた気がしました。
フィールドワークを通して、知識から入ろうとする視野の狭さは自分の弱みであるということに直面し、それに向き合うことはしんどい経験でもありましたが、他のメンバーや事務局の方に支えてもらったおかげで、自分の殻を破ることができ、新たな気づきを得ることができました。これから先、同じように知識先行になりがちな場面が出てしまうかもしれませんが、今回の経験をもとに、「今の自分は視野が狭くなっていないか?」と常に自問自答し、周りの人の声に耳を傾けられる柔軟さを持てるようになりたいと思います。
そして、今までの私は「将来“途上国”で保健活動をしたい」と漠然と考えていましたが、村の人ひとりひとりにお話を聞いたり、ヘルスポストのスタッフが村の人に自然に寄り添っている様子を見たりする中で、「このグデル村の人達にこれからも関わり続けたい」と思うようになりました。村の人の何人かとはSNSの連絡先を交換してつながることができたので、このつながりを大切にしながら、今回限りで終わりにするのではなく、絶対にまたグデル村に行こう、もっともっと交流を深めていこうと考えています。
今中 麻里愛(神戸学院大学2回生)
今回、立浪さんの企画でネパールの農村を訪れ、人と出会い、自分と向き合い、そして成長する機会を多く与えていただきました。参加を決めたのは、昨年8月の日中NGOボランティア研修に参加し、現場に行って話を聴くことの大切さを学んだからです。震災から2年が経つ今のネパールの現状を自分の目で見て確かめたいと思い参加しました。
研修中に自分のテーマとしていたことは「震災の被災者ひとりと向き合う」ということです。被災者と一括りにするのではなく、一人一人状況や考え方も違っていて、その中で「ひとり」と真剣に向き合い、寄り添いたいと思いました。
村歩きをしているときに75歳の村のお坊さんに話を聴く機会がありました。このお坊さんは震災で家もゴンパ(僧院)も潰れてしまっていましたが「家よりもゴンパを先に建ててほしいと思った」とおっしゃっていました。この言葉を聴いた時に、やはり話の聴くことの大切さというのが頭に浮かびました。外から来た日本人の私の考えでは、まず家を建てなければ…と勝手な思い込みをしてしまっていたと思います。話を聴かなければ現地の文化や宗教など何も見えてこず、勝手な思い込みで行動をし、結果、現地のことを何も考えていない一方的な支援になってしまうということを学びました。
また一緒に行ったメンバーからたくさんのことを学びました。初日に一緒に行った他のメンバーは積極的に質問をして村の人たちと交流をしているのに対し、私は何も行動に移すことができませんでした。遅れを取っている自分に焦りを感じ、どう動けば良いのかわからなくなってしまいました。その日に同行スタッフから他の人と競うのではなく自分なりの関わり方をしていけば良いと助言を頂き、次の日から自分なりの寄り添い方を考えながら村の人達と関わっていきました。その結果、相手と同じ目線に立ち、相手のことを考えた質問の仕方をすれば、楽しく話ができ、質問でない普通の会話から大切な村の現状が見えてくるということを学びました。
この研修の12日間は毎日、自分の未熟さや自分とは何なのかということと向き合い、辛いことも多かったのですが、こんなにも自分のことを深く考えることのでき、成長できる場は他にはなかったと思います。最終日に吉椿事務局長がおっしゃった「ネパールを通して日本が見え、ネパールを通して自分が見えてくる」という言葉がとても印象に残っていて、最短でも3日はかかる遠いネパールのグデル村ですが、私はこの村を通して「自分」ということを見つけることができました。また、遠いように感じるこの村に顔の見える繋がりができ、この村を支援したい、この人たちと一緒に村のことを考えていきたいと思うようになりました。
被災者と向き合うことで自分と向き合うことができ、自分らしさを見つけることができました。成長できる場を与えていただき本当にありがとうございました。この経験をいかし日本でできる自分なりの支援の仕方、CODEとの関わりを見つけていきます。
高橋 大希(愛媛大学2回生)
今回訪れた所は、ネパールの首都カトマンズから車と徒歩で3日かかるグデル村というところだった。そこで僕は、主にグデル村という農村に住む若者のアイデンティティについて知りたいと思い、数日間の間その地域で活動をした。なぜそのテーマで活動したのかというと、僕が僕自身のアイデンティティに悩み、模索していたからだと思う。そこで、農村部の若者の答えを聴けば、自分自身何が本当にやりたいのかどうなりたいのかそういったものが見えてくるような気がしたのかもしれない。
テーマを持ちながら数日間たくさんの人の声を聞いたり、現地の文化を体験したり、現地の人の仕事を手伝わせてもらったりした。そういった経験から、沢山の事を学び、感じ、得たと思う。でも、最も欲しかった自分自身のアイデンティティの部分は、研修が終わった今もあまりまだよくわからないままだ。
僕が聴きたかった『ネパールの若者』という声は存在しなかった。首都に強いあこがれを抱いている若者もいれば、故郷が大好きだが家族のために出稼ぎに行く若者もいる、親がおらず17歳で小学校に通う若者もいる、そこにあったのは『1人1人』の声だった。
僕はどこかで僕ではなく、『日本の若者』のアイデンティティを模索していたのかもしれない。『ネパールの若者』という声が存在しなかったように、『日本の若者』を追い求めても答えは出ないだろう。今回の研修から僕は沢山の事を学び、得たと思う。しかし僕は僕自身のアイデンティティに関して確固たる答えを出せていない。今後は『日本の若者』でなくその中の1人である『高橋大希』が、どうなりたいか、どうしたいのかを大切にしていきたい。そうしなければ、何も分からないし、辿り着けないという事に気づくことが出来た研修だった。