2008年5月に起きた四川省地震のレポートをお送りします。
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四川省地震4周年レポート No.4
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●対口支援の課題3「格差」
四川大地震の被災地は、四川省だけでなく甘粛省、陝西省、重慶市、雲南省などを含み、約50万㎡という広大な面積を占める。それは日本の国土の総面積約38万㎡をもはるかにしのぐ。約50万㎡の被災地には417の市県があり、被災の程度によって激甚災害指定地区のような極重災区、重災区、一般災区の3つに区分されている。被害の甚大な極重災区、重災区だけでも約13万㎡の広さがある。極重災区は、北川県、ブン川県、都江堰市、綿竹市など10市県、重災区は、四川省理県、江油市、黒水県などの山岳省少数民族エリアなどの29市県と甘粛省、陝西省の12市県、一般災区は、186県市に広がっている。
四川大地震の復興の中で対口支援によって支援を受けているのは、全被災地417市県の内、四川省の10の極重災区と8の重災区の一部の18市県のみである。(甘粛と陝西の重災区は天津市と広東省によって支援されている。)ここで見落とされているのは、四川省内の29の重災区のうち21の重災区は対口支援がなく、一般災区は、何の支援もないという事になる。対口支援から漏れた被災市県は、ほとんど独自の財源のみで再建を行わなければならない。これは、2009年6月の全人代(全国人民代表大会)の常務委員会によって指摘されており、資金不足で優先的に再建されるべき学校、病院さえも手間取っているという。
また、対口支援のしくみによる格差も起きている。ブン川県水麿鎮の禅寿老街は広東省仏山市の対口支援によって1800年代の清代の町並みを復元し、見事な復興を遂げた。伝統木造構法で再建された長屋はすべて無料で被災者に提供された。だが、一歩路地を入ると数十万元で自宅を自力再建した被災者もいる。
一方、北川県内のほとんどの被災地では、個人の住宅はデザインこそチャン族様式で統一再建されたが、費用は、政府の補助金(世帯数によって1.6万~2.2万元)以外は、すべて個人が多額のローンを組んで返済していかなくてはならない。北川県の人々は、ブン川県の住宅が無料で提供されている事をしる術もない。
被災地間でこのような格差が起きている原因のひとつには、復興プロジェクトは支援する省市が独自に計画、実施しており、被災地全体での調整、統一がなされていない。支援する省市が競う事で当然このような格差が生じる。また、支援する省市のGDPにも関係している。対口支援ではその省市のGDPの1%以上を使って行う。財政収入の多い省市はそれだけ多くの資金を使って復興事業を行う事が出来る。被災者一人あたりの援助を受ける額は、最も額の多い広東省の支援と黒竜江省の支援の間には40倍以上の開きがあると言われる。4年を迎え、復興宣言をした被災地だが、このような格差の問題はなかなか表に出てこない。