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中国四川省地震救援ニュース 87

Yさんレポートをお届けします。
「桃坪」という場所が被災地にある。四川省省都、成都から約60km、アバ州理県にあるチャン族の集落である。以前は桃の栽培が盛んだったことからこの名がついたそうだが、地震が起こる前までは四川でも有名な観光地のひとつであった。精密に石を敷き詰めて建てられたチャン族伝統家屋が見事に残り、それを縦横無尽にとりまく通路が迷路のようになっている。これは古来より外敵から防御するために考え出されたものであるという。また、ひと際目に着くのは、ちょう楼という高さ20~30mの塔で、昔は見張り台として使われていたそうで、現在は作物の貯蔵などに使われている。古いものは約1200年の歴史があり、チャン族が最も古い少数民族のひとつであることを思わせる。集落の多くの家は民宿として観光客を迎え入れ、チャン族の暮らしをそのまま味わうことできる。石積みの家の間を歩いているとどこか違う世界にタイムスリップをしたような感覚になってくる。
だが、この桃坪も地震によって大きな被害を受けた。石や土の壁が大きく崩れ落ち、いたるところに緑色の防護ネットが張られている姿が無残である。地震後、アバ州へと続く主要道路が崩落し、外部からのアクセスが不能となった。08年10月頃から道路の修復を終えたが、未だに観光客はまったくいない。道端で日向ぼっこをしながら刺繍をしているチャン族の女性たちに話を聞いた。
もともと地震前より民間の投資による観光開発の計画が進められていたという。ここに住んでいるチャン族の人々を別の場所に移転させ、この集落をそのまま博物館のようにするというものだったそうだ。新たに100ムー(1ムー約667㎡)の土地を開発し、そこに住民を移転させ、宿泊施設などを建設する計画で、すでに約7割の住宅が完成していたのだが、そのうち80%の家屋が地震によって危険家屋となったそうだ。民間企業による一人あたり1.5万元の補助の他は、自らの出費で家を建設していた矢先に地震が起きた。桃坪内の元の住居も被害を受け、新しい住宅も被害を受け、現在、ほとんどの住民は集落内でテントや掘立小屋を建て、暮らしている。
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今後の復興の話を伺うと、文化遺産として評価の高い元の集落は、国家文物局によって修復がなされるそうであるが、現在建設中の新居は政府の補助も何もないとう。たとえ元の家が修復されたとしても博物館として保存されるのであれば、以前のようにそこに暮らすことはできなくなる。一方、新居を補修、再建する為の資金も補助も全くない。そして最初に投資した民間企業も去ってしまったという。彼らは今後どこに住めばいいのか、いわば「宙ぶらりん」の状態である。人よりも文化遺産が優先される復興。もちろん文化の保護も重要であるが、そこに人々が暮らしているからこそ文化遺産としての価値もあるのではないかと思い
ながら話を聞いていた。。。
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