【四川省地震4周年レポート】No.5

2008年5月に起きた四川省地震のレポートをお送りします。
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四川省地震4周年レポート No.5
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●対口支援の課題4 「今後」
2012年5月12日。あの四川大地震から4年が過ぎた。
丸4年を待たずに2月に四川省政府は実質的な「復興宣言」を発表した。
「2012年四川省人民政府工作報告」によると、2万9692の復興事業は99%完了し、540万世帯、約1200万人の住宅を再建し、170万人の再就職支援も成功し、失業の問題も解決した。」と強調した。そして今後は「発展」に力を入れて行くという事だ。
 4年目を迎えた被災地には、大規模かつ真新しい街があちらこちらに広がる。対口支援の期間は3年という期限がある。ほとんどの事業を終えた対口支援の省市も間もなく撤退の準備も始まる事だろう。
多くの被災者は、新しい街に未だ馴染めないながらも早いスピードで綺麗な街や住宅が再建された事を喜んでいる。だが、これまで山間部の貧困地域に住んでいた被災者の人々は、見た事もないような新しい設備に戸惑っている。大幅に生活レベルが上がった事は喜ばしい事ではあるが、それを維持する為には当然これまで以上の費用を負担しなくてはいけなくなる。北川県の多くの農村住宅には、人間や家畜の糞尿から沼気と呼ばれるメタンガスを発生させる為のタンクを掘っていた。そのガスを炊事や電気として有効活用していた。だが、新しい街では当然、田畑もなく家畜を飼う事もできない。新しい暮らしの中では、すべてをお金で買わなくてはいけない。便利さを得た分、現金収入が必要になるのだが、新しい街にはまだ被災者を多く雇用できるほどの産業は生まれていない。
 学生、教師が1300名以上犠牲になった北川中学は、新北川県城(永昌鎮)に再建された。敷地面積約15万㎡(建築面積7,2万㎡)という大学並みの広大なキャンパス、教室、宿舎はもちろん様々な施設が整備されている。これは海外の華僑の支援によって通常の学校の10倍以上の2億元(26億円)資金が投入され建設されたが、2009年末には「豪華すぎる」との批判も起きている。
 対口支援の終了しようとする今、被災地に建設された豪華な街や施設を今後、地元だけでどれだけ維持、管理していく事が出来るのかが課題になる。
 成都市計画局のW氏に以前お会いした時に「通常は、西部大開発で数十年かかって行うべき事業をこの数年でやろうとしている。」と語った事を思い出す。凝縮された復興のしわ寄せは、被災地や被災者の暮らしに様々な陰を落としている。