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ネパール地震救援ニュース No.56

ネパール地震救援ニュース No.56
「三木の大工のもとで学ぶニマさん」

 ネパール・グデル村から来日中のニマ・シェルパさんが三木市の大工・稲見充典さんのもとで大工仕事を学びました。木材の元、末という木目の見方や継手の加工、譲っていただいた工具を使っての安全講習、ノミの研ぎ方などの道具のメンテナンス講習などを行いました。最近電気が通ったグデル村で電気工具が使われ始めましたが、慣れないために怪我人も出ているということで、村の大工の命を守るための安全講習が必要となりました。研ぎ石の種類だけでもネパールと違い、これまでネパールで学んだ以上の道具の繊細な扱いにニマさんは非常に関心をしていました。

加古川市に住んでいる大工を引退された方から「ネパールのために使っていただけるなら」とご厚意で、鋸やのみから電気工具まで多くの大工道具を譲っていただきました。今まで見たこともない様々な道具を前にして、ニマさんは目を輝かせて道具をどのようにグデルで役立てていくかをイメージしながら使い方を教わっていました。「前の持ち主の方は腕のいい大工だったのだろう」と稲見さんが言うように長く使われていながらもいい状態の道具が多く残されています。実際の日本の大工仕事を経験した古い家屋の屋根替えを手伝う際には、現場の空気を全身で感じ、現場で働く大工の仕事姿を見て所作を身につけています。ニマさんは日本で道具や技術、安全知識、考え方など多くのものを受け取っています。「日本の大工技術は今まで見たこともないものが多く、素晴らしいと感じるものがたくさんある。すべてが新鮮だ。村の他の大工さんにも伝えていきたい。」とニマさんは言います。「本当は研ぎを学ぶだけで3年。」と稲見さんが言うように、今回の研修の中だけではまだまだ学び足りていないことが多くありますが、今回教わった大工の基礎をネパールに帰って自ら技術を高めていくことでしょう。今回日本に訪れているのはニマさん一人ですが、グデル村や周辺の村の大工たちが彼から学ぶことで彼が受け取ったものは多くの大工たちに広がっていきます。(上野智彦)

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ネパール地震救援ニュース No.55

「ニマさん、ディープな京都に触れる。」

ネパールのグデル村から来日しているニマ・シェルパさん(25歳)とラクパ・シェルパさんと京都を一泊二日で訪問しました。
京都で耐震パネルを製作している丸浩工業さんを訪問させていただきました。耐震パネルは京都大学防災研究所でもその耐震性が証明されており、すべて左官職人さんによって手作業で製作されています。土とセメント類と新聞紙を微妙な配合で練り込んで作られるパネルは非常に軽く、山間部のグデル村でも、地元の土やロクタ(ミツマタ)などで応用できそうで、ニマさん、ラクパさんも興味深々でした。

その後、清水寺や伝統建造物の保存地区でもある清水の産寧坂などを見学し、寺院の大きな柱や清水の舞台の木組みの驚嘆するニマさんでした。
その日は、四川地震支援でもお世話になったシムズのマキさんの経営するSOI Guesthouse に宿泊させていただき、シムさんお手製のシンガポール料理をご馳走していただきました。夜遅くまで時間を忘れて、マキさんやラクパさんと語り合いました。四川とネパールがつながった瞬間でもありました。

翌日は、ネパール地震後から様々な知恵の支援をいただいている建築家、魚谷さん(魚谷繁礼建築研究所)に伝統建築の講義をしていただき、模型を使って、戦前と戦後の建築構法の違いを説明していただきました。「昔の木造建築は、柱と梁で揺れてもたせ、現代は筋交いなどで固めてもたせる構造になっている。伝統建築の改修で揺れようとしているのに固めている家屋も少なくない。それを見極めて町家の改修をしている。」と魚谷さんの説明にニマさんは真剣な表情で聞き入っていました。その後、魚谷さんが手がけている町屋や長屋の改修現場を見学させていただきました。細い路地にある朽ちかけた長屋をシングルマザー向けにローコスト賃貸にイノベーションした現場や遊郭の跡地を改修して、流木細工やギャラリー、本屋など若いアーティスト達が共同経営する町家モール、町家をゲストハウスに改修している現場などを見学させていただきました。

普段見ることのない路地裏のディープな京都を見せていただき、ニマさんやラクパさんは、古いものを改修して新たな発想で再活用しようとしているところや魚谷さんの言う「日本の伝統建築が腐った部材を取り換えられるように自由度が高く、そうやって日本建築はメンテナンスをしながら残ってきた」ところに感心していました。地震で大きな被害を受けたバクタプルのネワール伝統建築家、ラビンドラ・プーリ氏もメンテナンスの重要性を指摘していました。(吉椿雅道)

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ネパール地震救援ニュース No.54

「ニマさんが耐震レクチャーを受けました」

 CODEが耐震住宅再建プロジェクトを行っているネパール国ソルクンブ郡グデル村の大工、ニマ・シェルパさん(25歳)が日本で建築を学んでいます。これまでにも神戸の寺社や竹中大工道具館、津山の伝統住宅の建築現場などで学んできていますが、10月26日、27日の2日間、CODE賛助会員でありグデル村のモデルハウス建設でも多くのアドバイスをいただいている北茂紀建築設計事務所の北茂紀さんを講師に耐震住宅についてレクチャーを受けました。レクチャーの中ではネパールの耐震基準(NBC202、203、204)を用いて、モデルハウスでも取り入れた木製バンドやスルーストーン、木組みなどのグデル村で学んだ技術を復習し、地震の際にどの部分に負荷がかかり、技術がなぜ有効なのかという構造の基礎を学びました。構造を理解することでニマさんの豊富な技術を適所に活かすことができるようになり、それらの知識がニマさんを通じて他の大工に伝えられます。また応用として「方杖」(垂直材と水平材が交わる所に斜めに入れる補強材)やバットレス(控え壁)などの屋内に広い空間を確保するための家屋の補強方法も学びました。今後グデル村の大工が耐震技術を伝えるパタンジェ村(夢広の会が支援)の集会所で用いられます。グデル村やこの日までに日本で学んだ構造の知識や技術を整理し、耐震の重要性を再確認することで、引き続き日本で学ぶための基礎ができました。ニマさん自身、グデル村でのプロジェクトに大きなモチベーションを得、日本で学ぶことをもっとグデル村に生かしてくれるでしょう。

2日目には事務所の中庭にある藤棚を使い、釘を使わず方杖を入れる実践レクチャーが行われました。北さんから方杖の効果や入れ方を教わりながらも、細かい加工部分やジョイントの工夫などは木材加工が本職であるニマさん自身が北さんと相談しながら新たなアイデアを提案していくなどオリジナル性を発揮していました。藤棚は方杖を入れたことで揺れや衝撃にも明らかに強くなり、耐震の効果を実感している様子でした。ニマさんの学ぶ姿勢、チャレンジする姿勢には毎回驚かされます。

今後も三木の大工さんのもとで伝統建築について学びます。ニマさんが学び、それをネパールの山村でどのように活用していくのか、今から非常に楽しみです。ぜひ応援してください。
(上野智彦)

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ネパール地震救援ニュース No.53

「ニマさんと日本の伝統建築」

 日本で伝統建築を学んでいるネパールグデル村の大工ニマさんは、10月22日、伝統構法の建築会社尾上組の岡山県津山市の現場を訪れました。建設中の伝統家屋を見たニマさんは石場立ての礎石から屋根の梁や軒先まで食い入るように観察していました。以前、CODEの派遣でグデル村を訪れた山本耕資さん(当時京都建築専門学校)が伝えた竹小舞が使われている家屋を見て、どのように竹小舞を使い土壁を仕上げていくのか納得した様子でした。釘を一本も使わず、住む人のためを考えて設計されたこの家屋に感心しており「日本の伝統家屋は素晴らしい」と何度も言っていました。
 ニマさんは尾上組四代目棟梁の尾上結希さんの説明を受けながらも、その技術をどのようにグデル村の家屋に活かすことができるかを考えており、高水準な大工の技術を持ちながらも貪欲に日本の技術を吸収しようとする姿勢は日本人の我々も学ばなくてはいけません。
(上野智彦)

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