中国青海省地震レポート No.11

地震などの自然災害は容赦なく人の命を奪う。そして生き残った被災者の人々の暮らしをも根本から揺さぶる。チベットの民の多くは、半農半牧の暮らしで、夏場はヤクや羊を放牧させ、冬場に住居に暮らす二重生活である。だが、近年では政府による定住化政策によってその暮らしにも大きな変化が起きている。被災地、玉樹もその変化のど真ん中にあった。
2006年から始まった定住化政策によって、これまでの遊牧の暮らしを捨てて、家畜をお金に換え、アイデンティティーを喪失した人々(特に男性)は酒やギャンブルなどの遊びに身を落とすという悪循環も震災前から起きていたという。周知のように北米のネイティブアメリカンや豪州アボリジニー、南米アマゾンの先住民など世界中でこのような悲劇を生んでいる。
震災は、被災地に非常に大きな痛みをもたらす事に間違いないが、今後の復興を考える場合、ある意味大きなチャンスにもなり得る。今年の1月12日にM7.0の地震の起きたハイチは、今、まさに「国創り」を行おうとしている。被災地の内から湧き上がってくる人々の動きをしっかりと政府や国際機関、支援団体が後ろから見守り、支えていく事が出来さえすれば、きっといい復興への道を進むだろう。それは何よりも被災者自身の大きな自信と力になる。その為には被災地、被災者を信頼しなくてはならない。
前号でもふれたが、玉樹の復興計画が本格的に動き始めた。現在、四川大地震の復興過程の中での課題をしっかりと考えた上で、是非ともこの震災をいい機会と捉え、そこに住む人々にとって何が本当にいい暮らしなのか、その歴史、文化、伝統を熟考した上で復興計画を策定してもらいたい。そのためには被災者の「つぶやき」にちゃんと耳を傾けることである。

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