月別アーカイブ: 2015年12月

ネパール地震救援ニュース No.41

「燃料不足に陥るネパール」

「ガソリンが大変なことになってますね。」人に会う度に挨拶のように言われる。皆ガソリン不足の影響が仕事にも出ており愚痴をこぼさずにはいられない。カトマンズではタクシーの料金は通常の4倍、5倍近くにまで上がり、ほとんどのガソリンスタンドは休業状態で、高騰したガソリンは闇市で取り引きされている。自家用車以外ではバス、タクシーくらいしか移動手段がないネパールで今回のガソリン不足は通勤や買い物など普段の生活に大きく影響している。バスの本数が少なくなっているためバス停には人が集まり一台のバスに人が殺到、車中に入りきらない乗客は屋根の上に乗って移動している。ガソリンスタンドが休業しているにも関わらず、店の前には目途も立っていない給油の再会を待つ無人の車が溢れかえり付近の道路の端には列を作っている。特にタクシー、バス、トラックのドライバーは商売道具を失った状態であり、いつになるかわからないガソリンの再販売を今から待ちわびている。

今回の問題は移動だけではなく食事にも影響している。ガソリンと同時にLPガス不足も深刻になっており、メニューの制限や休業するお店が非常に多い。中心地まで出てくる人が少ないこともあり、通常は込み合う金曜日の夜でもお店はガラガラだ。燃料がストップした店や家庭では薪を使って火を確保している。しかしグデル村からカトマンズに住む親せきの家に避難してきている女性が「カトマンズは田舎と違い薪を手に入れるのは難しく、カトマンズでの生活が金銭的にも厳しくなっている。今一番大変なのはガスが使えず炊事が十分にできないこと。」と言うように、ガスの不足が避難してきた住民の家計をさらに圧迫している。

少なくなったとはいえ、まだ今はカトマンズ市内に車が走っている。しかし今後、インドからの物流が止まっている状態が続けばネパール国内のガソリンは底を突き、車が全く走れない、料理のための火も全く使えないという状況がすぐそこまで近づいている。ガソリン不足から2カ月が経過しようとしている中で問題解決の糸口が見えないことに住民は先の見えない大きな不安を感じている。
またカトマンズに住む方にとっては地方の被災地の状況よりも身近なガソリンの問題の方が大きな話題となっている。政府はこの問題への対応に追われており、表明している住宅再建のための補償などの被災地支援はまったく進んでいない。政府の補償に頼らざるを得ない地方の住民は家の再建の予定を立てることもできず、今年の冬の再建を諦めて半壊の家に住む被災者もいる。被災地復興の第一歩となるはずの新憲法の問題にネパールの被災地が取り残されている。(上野智彦)

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