憎しみの連鎖ではなく、支え合いの連鎖を!!-NO.10

プーチン率いるロシア軍は、ウクライナのマリウポリに続いて、ドンパス地方の制圧に向けて攻撃を続けている。さらに南部の港湾都市オデッサをも攻撃し、黒海沿岸の統合支配を目論んでいるのか。ウクライナにとってこのオデッサが破壊されると、海路が絶たれることになる。

先日4月24日は、ロシア・ウクライナ両国に信者の多い、東方正教会のイースター(復活祭)だった。「第一次大戦中、ロシア軍兵士の求めで戦場での復活祭停戦が実現したという」(2022・4・21毎日新聞)歴史もあったようだが、復活祭停戦は叶わなかった。この日、プーチン大統領はロシア正教会に行き、平和を誓った。でも、同時にウクライナに攻撃を仕掛けている。「平和の祈り」って何なのだ?と世界中の人は失望しただろう。

他方、同じ日に米国のブリンケン国務長官とオースティン国防長官はウクライナの首都キーウを訪問し、912億円分の軍事支援をゼレンスキーウクライナ大統領に表明し、同国防長官は「ウクライナの侵攻のようなことができない程度に、ロシアが弱体化することを望む」と米国の目標を語った。また29日にはポーランドが戦者200両以上をウクライナに供与したと。本気で停戦する気があるのか!と怒りがこみあげてくる。

そして、国連グテレス事務総長とのプーチン大統領およびゼレンスキー大統領との会談が行われた。4月27日付け朝日新聞によると、同事務総長は「効果的な対話や即時停戦、平和的解決のための条件を見つけたい」と会談に臨んだが、この願いが叶わなかった。辛うじて①人道支援として、ウクライナ国内で行った約340万人の支援を870万人に増やす。②プーチン大統領は、マリウポリの製鉄所にとどまる民間人の退避のため、国連と赤十字国際委員会が関与することを「原則合意」することを約束させた。が、水を差すようだがプーチンがこの合意を守るとは思えない。

一方で日本は、この機に乗じて、専守防衛原則に反し、軍事偏重路線に突き進もうとしている。私たちは決してこのことを看過できないことを指摘したい。
今、日本政府の自民党はこの情勢に乗じて「国家安全保障戦略」という、戦争への危険を高める軍拡政策の提言をまとめたと発表した。内容は①敵基地攻撃能力の保有。②防衛費を「対GDP比2パーセント以上」という目標を念頭に5年以内に拡大。③防衛装備移転三原則を見直し、侵略を受けている国に対しては「幅広い分野の装備の移転を可能とする」との言い方で、殺傷能力を持つ兵器の提供も検討するよう求めているという内容だ。この自民党の提案に対して平和構想研究会は21日、50人以上の呼びかけ人と600人を超える賛同者のもと、「平和憲法に基づく外交・安全保障の基本に立ち返って、与野党による幅広い視点から冷静な議論を求める緊急声明」を発表した。(声明の詳細はこちら

同声明は、ウクライナにおける戦争の長期化は、さらなる社会的・経済的悪影響をもたらしかねない。今、お金は武器にではなく、人々にこそ回さなければならないはずだと訴えている。
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)

憎しみの連鎖ではなく、支え合いの連鎖を!!-NO.9

プーチン率いるロシア軍がウクライナに進攻して2か月が過ぎた。ウクライナの人たちにとっては、想像に絶する2ヶ月だったと思われる。これでとりあえず停戦にでもなるなら、「ホッ!」とできる一刻(ひととき)が訪れたかも・・。
しかしプーチン大統領は、「マリウポリの製鉄所を解放した」と数日前に発表した。解放したというのは、プーチン大統領側の解釈で、ウクライナのゼレンスキー大統領は認めていない。ただ、制圧したならば、もうそれ以上攻撃をする必要があるのだろうか?その後もマスコミによる記事は、「製鉄所攻撃を継続」「(東方正教会の)イースターの後にもかかわらず攻撃がやまない」「製鉄所には重傷を負った兵士が500人いる」「(子どもたちは)2か月も地下の避難所にいて、太陽を見たい!」などとあるように、それでも攻撃を続けるのは、プーチン大統領は「ウクライナを根絶やし!」にするつもりなのか・・・・?

一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、「欲しいのは武器」と言っている(朝日新聞、2022・4・25)私は、その現場にいないけれども、「戦況」「制圧」「要塞」「武器が欲しい」などという言葉さえも聞きたくないし、その文字も見たくもない。どうしたらこの戦争が終わるのかという記事が何故少ないのだろうか?

さて、国連のグテレス事務総長が明日26日に、プーチン大統領と会う(28日にゼレンスキー大統領に会う予定)。遅きに失することのないことを祈りたい。ギリギリのところで佳い結果がでることを期待したい。

ロシアでは、果敢にも女性による反戦デモが行われている。神戸新聞4月25日付け記事によると、「ロシア軍が攻撃を開始した翌日の2月25日には、フェミニスト反戦レジスタンス(FAR)が結成された」とも。今のロシア・プーチン政権下の政治体制では、命懸けの反戦行動だ。こうした女性による行動は、「モスクワ在住のフェミニスト詩人ダリア・セレンコが提唱してきた「静かなピケ」という方法だ。これは、大がかりなデモではなく、各人が都合のよい時間と場所で日常的に可能なことを行う活動」(同紙)ということだと知った。

日本政府は辱めもなく、「ドローン」をウクライナに送る予定だが、反戦に世界中で連帯する私たち一人ひとりは、武器ではなく、「静かなピケ」に倣って、「武器を捨てる」という覚悟を備えなければならないだろうと思う。以前、このレポートでもお伝えしたように、15,000年前にモンゴルから歩いてベーリング海峡を渡り、カナダとアメリカの国境に辿り着き、未だにその子孫たちは「イロコイ連邦」を維持している。この人たちは、15,000年前の旅路では、「武器を置いて、戦う意志はない!」という行動で、不戦を貫いてきたので、未だに遺っているのだろう。
今こそ、イロコイ連邦のさまざまな歴史に学びたい。
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)

*CODEは、ウクライナ及びロシアから避難してきた方々に食糧支援を行います。ご協力のほどよろしくお願いいたします。
ご寄付はこちらから。

憎しみの連鎖ではなく、支え合いの連鎖を!!-NO.8

国連人権理事会がロシアの理事国資格停止を決めたという報道が発表され、それに反発したロシアは同会から脱退を表明した。

2月24日にロシアのプーチン政権がウクライナに進攻して以来、プーチン政権は蛮行を積み重ね、日に日に深刻な事態が明らかになっている。こうした事態を受けて、日本はじめ国際社会では、「ロシアに対するこの制裁措置は当然だ!」という声は少なくないと感じる。この決議は拘束力がないとはいえ、ロシアを国際社会から追放するということでもある。この間、アメリカはじめNATOや日本など、いわゆる西側諸国は、経済制裁という対露制裁を重ね、ロシア政権を追い詰めている感がある。

果たしてこのような制裁を重ねることで戦争終結が実現するのか、疑問を持たざるを得ない。「対話」の機会を少しでも残しておかなければ、「外交」手段を残しておかなければ、双方に犠牲者を出すばかりで、特にウクライナ側では、子ども、女性、高齢者、障害者などという逃げたくても逃げられない人たちにも、容赦なく攻撃がなされている。

プーチン政権に「戦争やめろ!」といくら叫んでも、状況は悪くなるばかりであるにもかかわらず、プーチン大統領をギリギリまで追い込み、国際社会からの追放とまで断罪することは、果たして効果的だろうか?何故か、モヤモヤした感情がこみ上げてくる。

今回の国連総会決議では、加盟国193カ国のうち、賛成は半分に満たない93カ国にとどまっている。棄権も58カ国もあり、反対表明は24カ国という結果である。そもそもこうして多数決で決めることは「民主主義」と言えるのだろうか?
平時では、「多様性の大切さ」「声なき声に耳を傾ける」「少数派にこそ目を向け救いの手を差し伸べよう」などと、特に子どもたちには教えているのではないだろうか?
大人のこうした行いを見た子どもたちはどう思うだろうか?

昨日4月9日付けの毎日新聞朝刊で、「今回の決議が、国連の正当性が揺らぐことにもつながりかねない怖さも含んでいる。国連の強みは、対立国も含めて『最低限の合意』をつくることにあるからだ」と鈴木一人さん(東大公共政策大学院教授)は言っている。加えて鈴木さんは「例えば日本の国会で特定の政党を排除して決議をとっても、民主的とは言いえないのと同じだ。ロシアが国連に背を向けてしまうと、世界の重要な問題に関して国際社会として最低限の合意もできなくなってしまうかもしれない」と懸念されている。根気よく「対話」を重ねるしかないと思うが・・・・・?                  
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)

憎しみの連鎖ではなく、支え合いの連鎖を!!-NO.7

トルコで行われた停戦協議で、露軍がウクライナの首都キーウ(キエフ)周辺から撤退させると約束した直後から、一部の露軍はキーウ周辺に残り、特にブチャでは凄惨な殺戮や拷問が行われたという報道が洪水のごとく溢れている。しかし、いつものようにロシア政権は関与を否定している。この凄惨な光景は、銀幕の上での話ではない。

「無差別殺害」「ジェノサイド(大量虐殺)」「巨大な墓場」など見出しが躍る。国際人権団体「ヒゥーマン・ライツ・ウオッチ」の報告を見ると、なんとおぞましいことが繰り返されたのか・・・・もう表現することすらできない。

ところで、私は本レポートNO.6で「殺す側に立つな!」と叫んだ。このメッセージはそもそも2001年「9・11」事件のあと、真宗大谷派の当時企画室参事をされていた「玉光順正さん」が、辺見庸さんとの対談で、「わたしたちは“殺される側”に立つべきである」と言われたことが私には大きな衝撃だったことが背景にある。お二人が対談の中で共通した点は、アメリカがとった報復のためのテロ攻撃にほとんどの国が、もろ手をあげてアメリカに賛同したことだ。そのアメリカのことを辺見庸さんは「80年代からのアメリカ一国的なグローバル化、つまりアメリカの資本、アメリカを中心とするマネーゲーム、アメリカ的な国策を背負った正義などが、相当浸透してしまったこと」と鋭く指摘された。(2001年12月1日 同朋新聞より引用)

さらに「もう一つ見逃せないのが、この報復戦争の非常に汚い側面として、ロシアや中国など、国内に反対する勢力を持った列強諸国がアメリカに肩入れして、互いに弾圧を見逃すということです」と辺見庸さんは加えた。そして、お二人は「今、すべての人が『個』に立ち返り、価値観を組み立て直す必要がある」と強調された。玉光順正さんは「仏教では、釈尊が亡くなる時に自灯明・法灯明という言葉を残されました。つまり自分で考える人間になれと、そのためには、教えを学べと言っています」と釈尊の言葉を紹介した。

1979年にソ連(当時)がアフガニスタンに侵攻し、その後ソ連が撤退したあと、内戦が続き、21年前の「9・11」のあとも大国が介入し、テロとの戦いを正当化して、無辜なるアフガニスタンの人たちが犠牲になったという歴史を振り返ると、今こそ私たち一人ひとりが、しっかりと自分と向き合い、何を考え、そしてどう行動するのかが問われている。少し長くなるが、先述した対談の紙面で玉光順正さんは、「私の視点」として、次のようにまとめられた。

「私たちは今、決して米国的正義感や大義名分に立ってはならない。間違いだらけの私たちは決して正義に立ってはならないし、正義を立ててはならない。正義と大義名分は、他を非難し排除するばかりか、必ずと言っていいほど暴虐に行きついてしまうことは、私たちが決して忘れてはならないことである。また、正義を立てると、私たちが今、たまたまこちらに居るということが見えなくなってしまう。私たちは今回の同時多発テロを糾弾する世界の多くの人びとは、たまたまこちらに居るということにすぎないのである。今の状況で確実に言えること、言わなければならないことは、テロリズムであろうと、その報復攻撃であろうと、その時、問われているのは、殺す側に立つのか、殺される側にたつのかということである。ブッシュ大統領の言うようにテロに立つのか、自由と民主主義に立つのかではない。またどっちもどっちというものでもない。どっちもどっちというのならそれは、どっちも殺す側でしかない。まず立つべきは殺される側であって、決して殺す側に立ってはならない」と。

「9・11」と今の状況と違うかもしれないが、人として生きるなら、このメッセージをしっかりと受け止めたい。
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)

憎しみの連鎖ではなく、支え合いの連鎖を!!-NO.6

先日29日トルコのイスタンブールで開かれた、ロシア政権の侵攻による戦争の今後についての協議で、ウクライナ側の「軍事的中立化」提案を受けて、ロシア側が首都キエフなどへの攻撃を「減らす」と応答した。これまで何度も停戦協議を積み重ねてきた成果と言えるのではないか。新聞各紙の見出しは「露にウクライナ譲歩」「光は見えたか 停戦協議」「停戦交渉『重要な進展』」などと一定の評価と判断しているようだが、ロシア側のいうキエフなどへの攻撃を減らすというのは嘘だろうという報道もある。

3月25日ロシア政権がウクライナに進攻して以来、衝突は激しくなるばかりで、双方に多くの犠牲者を出すばかりである。これまでは、殺すか、殺されるかの選択肢しかないような事態が進んでいたが、こうした停戦協議によって、休戦に向けたもう一つの提案が出されてくる。つまりこれは、「殺すか、殺されるか」の選択から、選択の幅が明らかに増えるということである。従って、停戦協議を根気よく続けることが一つの解決の道だと言える。ロシア側の対応が疑わしいとしても、停戦協議が少しずつでも具体化するということは、いわゆる「一縷の望み」が見えたということで、これまでの「殺すか、殺されるか」という選択肢しかない現実よりは、はるかに「生きる」ための選択が増えたということだ。

いつまでも「ロシアにつくか、ウクライナにつくか」という二項対立になるような表現は避けよう!

21年前の2001年の「9・11」事件を受けて、アメリカのブッシュ大統領が「アメリカにつくか、テロにつくか」と世界中に訴えた時と同じではないか。その後20年を経て2021年8月、その戦地となったアフガニスタンでは20年ぶりにタリバンの暫定政権が樹立し、やがてアメリカおよびNATOは撤退した。その結果、アフガニスタンが深刻な事態に陥っていることは記憶に新しい。昨年の8月以来アフガニスタンではアメリカなどによる経済制裁としてのアフガニスタンの銀行に対する資産凍結を決行したことで、NGOはじめ援助機関からの支援金が届かなくなった。他方、国連が人道支援として、飢餓に苦しむアフガニスタンの人々を対象に、食糧支援をする事態となった。そしていま、ほとんどアフガニスタンの記事は紙面から消えた。こうして大国の干渉によって、アフガニスタンと同じ轍は踏んではならない。

一日も早く完全停戦、できれば休戦に持ち込むことを願うばかりだ。この段階に来ても、マスコミは結果的にプーチン大統領を叩く報道が目立つ。もちろん今回のプーチン大統領がウクライナに侵攻し、無辜なる市民を殺している蛮行は許せるものではないことは繰り返し言ってきた。

でも、今こそ和平に向けた提案を、私たち一人ひとりが発信することを求められているのではないか!「NO WAR」とともに「殺す側に立つな!」と叫びたい。
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)

憎しみの連鎖ではなく、支え合いの連鎖を!!-NO.5

3月26日、バイデン大統領がワルシャワでの演説で、「民主主義と専制主義の戦い」として、「ロシア国民は我々の敵ではない」と言いつつも、プーチン大統領個人に「権力の座にとどまるべきではない。」と強調した。この発言が物議を醸しているが、この発言を撤回しないとまで言っているようだ。バイデン大統領は、今までも「虐殺者」「人殺しの独裁者」「真の悪党」「戦争犯罪人」などと個人批判を強めて来た。

さて、先月24日のプーチン政権によるウクライナ侵攻が始まって以来、停戦交渉も続いているが、未だ解決の道筋が見えないばかりか、日に日に凄惨な事態が深刻化している。一方国際社会では「反戦メッセージ」が広がり、「ウクライナに連帯」という声も大きくなっている。
敢えて、「しかし」と言わざるを得ない。反戦メッセージはあくまでもプーチン政権・ウクライナ双方に、「戦いは止めろ!」という声も入ってるのではないだろうか。「ウクライナに平和を ロシアに自由を」という声もある。29日付け朝日新聞「天声人語」では、「侵攻する側は、よその国に人殺しに来ている。自分の国を守る側も人殺しをせざるをえないところに追いやられている。今、他国の政治家たちがなすべきは勇ましさをたたえることではない。戦争を終わらせるすべを探ることだ」と。

冒頭のバイデン大統領の発言は、いかがなものかと首を傾げる。これでは戦争の激化を結果的に煽ることになるのではないのか。
今、最優先は対話の解決を提示するのが、世界のリーダーならではのアメリカの役割ではないだろうか?

くしくも今年沖縄復帰から50年という節目を迎える。日本政府はこの間、沖縄の民意を無視続け、沖縄の人たちを苦しめている。バイデン米大統領は、沖縄の民意は知っている筈だ。今こそ沖縄の民意に寄り添い、プーチン大統領に対して「我々は、英断を下し、沖縄を無条件完全開放した。プーチン大統領もウクライナから即時撤退しろ!」というくらいのことを決断しなければ、一方的な批判は有効ではないのだと断言したい。もう一つ、この戦争を終わらせる“すべ”は、先般の国連での「緊急特別会合」で南アが提案した案の背景をしっかりと考えると、そこにヒントがあるように思われる。
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)

憎しみの連鎖ではなく、支え合いの連鎖を!!-NO.4

一昨日、ウクライナのゼレンスキー大統領が日本の国会議員向けに演説をされた。演説終了後、直ちに岸田総理はウクライナに対する人道支援の追加を検討すると表明した。これまでも、同大統領は米国・英国・ドイツ・カナダ・イスラエルで演説をしてきた。各々の国のリーダーの名言や歴史を交え話す話術は、好感を持たれている。日本では「侵略の津波」という表現をし、連帯を求めた。確かに、歴史に残る演説でしょう。23日のフランスの国会では、「自由、平等、博愛に対する戦争だ」とフランス革命以来の国家理念を引き合いに出して支援を訴えたとのこと。評価は絶大だ。
しかし 、しかし、何故かもやもやしていて諸手を挙げて絶賛できない。確かに日に日にウクライナに対する国際社会からの連帯の声は拡がっている。その連帯の輪に水を差すつもりもない。昨日24日は、北大西洋条約機構(NATO)およびG7と関係国の首脳会議が開かれた。テーマは「対ロシアに対する制裁強化」の確認だった。でも、ロシア・ウクライナの双方に多大な被害をもたらした戦争は、もうすでに1ヶ月も続いてきた。今、急がなければならないのは、何とかして1ヶ月も続いた戦争を止めさせなければならないのであって、あくまでも結果的に“煽る”ことになる連帯では意味がない。

昨日(3月24日)の朝日新聞「私の視点」に投稿された千田悦子さん(元国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)職員)のメッセージに共感した。「世界が存続の危機に立つ今、唯一の被爆国であり、恒久平和を希求して戦争放棄した国民として、日本人が新しい戦争放棄というパラダイムを世界に提案すべきではないか」と提案されている。

先日、7千人の犠牲者を出した神戸大空襲から77年が経った日に、当時の惨状を聴覚障害の神戸生まれである山村賢二さん(90歳)が手話で語った。
「砲撃を受けるウクライナの街で地下壕に逃げ込む人たちを報道で見ると、77年前の自分と重なる。命を大事にして、一刻も早く戦争をやめてほしい」(神戸新聞2020・3・18)と。私はこの願いをしっかりと受け止めたい。

また同じ神戸市出身で、ソ連崩壊直前の1991年9月からウクライナ・キエフで暮らす江川さんの「怖いけど 逃げられない」という率直なことばが紹介された(毎日新聞2022・3・24)。江川さんは、2014年のクリミア戦争があったので「いつものように東部での戦闘が活発化するのだろうという程度にしか思っていなかった」と。そしてウクライナ人の妻は「どうして私がウクライナから逃げないといけないのか、ここは私の家」と。江川さんは「妻を残して逃げるわけにはいかない。極限状態になるとどうなるかわからないけれど、今のところ、家族がバラバラになるより、一緒の方が生き残れる確率があるのではないかと考えたんです」「(妻について)やっと手にした独立国を手放したくないないんです」と代弁されたそうだ。なんともやるせない・・・・。

でもこれだけは声を大にして言える。「とにかく生きよう!」
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)

*2022年3月23日に神戸市外国語大学が同大のロシア学科で学ぶ在校生の皆さん、卒業生そして新入生の皆さんに素晴らしいメッセージを発しました。こちらから是非、ご覧になって下さい。

憎しみの連鎖ではなく、支え合いの連鎖を!!-NO.3

ロシア・プーチン大統領がウクライナに侵攻してから1ヶ月となる。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の発表では、ウクライナの国内外の難民は1,000万人を超えるという。これは人口の2割に達する。プーチン大統領は、子ども、妊婦、高齢者などの非戦闘員である文民に対しての攻撃を止める気配がなく、戦闘激化するばかりで無差別攻撃となっているとしか思えない。ウクライナ南東部マリウポリでは、3,000人が死亡したという報道も。一方で停戦交渉は大詰めに来ているような報道があるが、具体的な成果があるようには思えない。

先日、日本ペンクラブ・言論表現委員会・国際委員会の共同企画で開催された緊急シンポジウム「ウクライナで、ロシアで、何が起きているのか?」というテーマで、ジャーナリストの金平茂紀さん(TBS報道局記者)と新田義貴さん(ジャーナリスト)が、「侵攻されるウクライナ現地レポート」として報告された。金平茂紀さんが最後に、「僕は『殺せ』っていうほうには行きたくないですね。『殺すな』というほうに必ず身を寄せていきたいと自分なりに思っています。」と決意をのべられた。
ここ連日、報道ではウクライナの被害が圧倒的に多く伝えられ、その凄惨な現実を耳にし、目にすると、ほんとうに胸が痛む。同時にプーチン大統領の命令で戦場に送られ、尊い命を落として行くロシアの若き兵士の屍を想像すると同じく胸が痛む。金平茂紀さんが言うように、私たちは両者に『殺すな!』と叫び続けなければならないと思う。

さて、27年前の阪神・淡路大震災のあと、被災地では多くの人が、「生きていてよかった!」そして、「人間は一人では生きて行けない。」と、誰もが誰かに支えられ、助けられ、「生を確認して抱きあった」。以来、震災で亡くなった方々の遺言のように、震災文化を後世に伝えることも誓い、27年が経過した今も、“子どもたちの子どもたちの子どもたちのために”、個を尊重し、命の尊さを伝え続けている。この被災地に居る、あるいはこの被災地に関わった多くの市民は、この「震災文化」を伝え続けて来た。この営みは、ロシアとウクライナが闘い続けている“いま”、この地の人たちは強く訴えることができる。“直ちに戦争を止めろ”、将来世代を担う“子どもを殺すな”と・・・・・。
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)

*CODEは、ウクライナおよびロシアからの避難民へ食糧を提供します。ご支援、ご協力お願いいたします。ご寄付はこちらから。
※使途・備考欄に「ウクライナ危機」とご記入ください。

憎しみの連鎖ではなく、支え合いの連鎖を!!-NO.2

ロシア・プーチン政権がウクライナに進攻し、戦争状態が長期化する様相を呈している。平行して両者の停戦合意を求めた交渉も続いているが、一気に停戦に行くような状況はもたらされていない。一方で、複数のメディアからはロシア兵の戦意喪失という前線の状況も伝わっており、プーチン大統領には明らかに焦りが見られる。

しかし、プーチン大統領は本当に停戦し、何らかの和解を本当に望んでいるのだろうか?あくまでもウクライナの全土制圧が達成され、ウクライナが無条件降伏をするまでは、攻撃を続けるという姿勢を崩さないようにも見える。というのは、今朝の各マスコミの情報では、プーチン大統領が戦闘員増兵のためにシリアなど中東から戦闘員を求めていることが明らかになった。少しでも戦争を止めようという意志があれば、これ以上戦争を激化させるという選択はあり得ないだろう?

3月14日、ロシアの国営テレビのニュースで、女性ディレクターの「戦争反対、プロバガンダを信じないで」というプラカードを掲げた覚悟の勇敢な講義活動が流された。加えてロシア国内での市民による反戦行動が日に日に高まっていることも踏まえると、プーチン政権の足下が揺らいできていることは間違いないだろう。
それだけに、プーチン大統領が全くの“良心”を失い、最悪の行動に出る可能性もあるところまできていることが、世界中の誰もが一番心配するところであることは、残念ながら否定できない。

神戸新聞3月15日付け夕刊に、兵庫県内に住む40代のウクライナ人が、「ロシア人を非難する気はない。でも、ウクライナで起きている真実を知ってほしい。私たちが攻撃される理由も、彼らが攻撃する理由もない」「私がウクライナ人で今は敵だということを忘れるぐらい、両国の人の距離は近い。なぜ戦っているのか分からない。不思議な戦争です。」と困惑されている。そして同紙によると「不安そうにニュースを見つめる自らの子どもたちには、正反対の主張を繰り広げる双方の報道を見せて、『ロシア人を責めたり、嫌いになったりしてはいけないよ。本当は素晴らしい国なんだ。でも、決して起きてはいけないことが、たった一人の人間の判断で起きてしまう。この悲劇をしっかり見て、考えて欲しい』と、彼は願った。

ここ連日双方に多くの死者が続出している中で、この報道を読んで、私たち大人が発する言葉にも、一人ひとりが覚悟を持った発言が求められるのではないだろうかと決意させられた。27年前の阪神・淡路大震災で、多くの人が「人間一人では生きて行けない!」と身に染みて痛感したという声を被災地のあちらこちらで聞いた。
このメッセージがどれだけの被災地に人々に勇気をもたらしたことか。今、あらためて思い出す。世界中の人と人はつながっているのだ!
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)

ウクライナおよびロシアからの避難民への食糧支援を行います

2022年2月24日、ロシアがウクライナに軍事侵攻し、2週間経た今もその戦闘は続いており終息の兆しは見えていません。ウクライナでは戦火を恐れて女性や子どもたちが隣国ポーランドなどに避難しています。その数は約220万人(3/10時点)にのぼると言われています。
また、反戦抗議デモが起きているロシアでもその圧政や徴兵、経済制裁の影響から国外へ逃れる人、退避する人が後を絶ちません。

日本には1915名(2021年末)のウクライナ人が暮らしており、その親族や知人が来日する可能性から、日本政府は3/2にウクライナ避難民の受け入れを表明し、すでに8名のウクライナからの避難民が親戚知人をたよって来日しています。
兵庫県にも91名のウクライナ人(2021年6月)が在住しています。兵庫県は、ウクライナからの避難民を想定して、住宅などの無償提供など避難民の受け入れを3/4に発表しました。

CODEは、阪神・淡路大震災をきっかけに「困った時はお互い様」の精神で生まれ、海外の被災地で復興支援活動を行ってきました。2020年からは新型コロナウイルス感染症の影響で困窮している在住ベトナム人やタリバンによる政変危機から退避してきたアフガニスタン人に食糧支援も行ってきました。

戦争は最大の災害です。被災地のNGOであるCODEは、ウクライナだけでなく、ロシアからの避難民に対して食糧支援を行います。ご支援・ご協力のほどよろしくお願いいたします。

CODE海外災害援助市民センター
事務局長 吉椿雅道

ご寄付はこちらからお願いいたします。
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