月別アーカイブ: 2022年5月

憎しみの連鎖ではなく、支え合いの連鎖を!!-NO.17

前回のレポートで、健気な13歳の中学生の言葉を紹介した。24日で露軍がウクライナに侵攻してから3カ月になる。今朝、マスコミ各紙をめくると、ウクライナのゼレンスキー大統領が21日にテレビのインタビューで「2月24日の侵攻以前の領土を取り戻すことができれば、ウクライナにとっての勝利と見なす」と発言したと紹介されていた。その言葉に歩調を合わすように、ウクライナ最高会議は「ロシアの侵攻に伴う戒厳令と総動員令を90日間延長すると承認した。」そして、23日アメリカのオースティン国防長官は、「ウクライナに対し、約20カ国が弾薬や戦車など新たな軍事支援を表明したことを発表した。
加えて、ウクライナのゼレンスキー大統領は、「(ウクライナ)からの男性の出国を認めることを求める請願書について、反対する姿勢を示した」と(朝日新聞 夕刊022・5・23)。なお、この請願書には2万5千人の署名が集まっていたとのこと。

「停戦」どころか、やはりウクライナは徹底して戦うという決意のようだ。「あ~・・・・・」ため息しか出ない。

5月10日付け毎日新聞に「100年後『野ばら』のリアル」という見出しで、日本のアンデルセン」と呼ばれた児童文学作家、小川未明(1882~1961年)による「野ばら」のことが紹介されていた。小見出しには「童話まるで露とウクライナ」と書かれていた。合わせて同記事には、「第一次大戦や太平洋戦争のさなかを生きた未明は、小説のほか約1200編の童話を残した。昭和初期には、雑誌「婦人之友」に「男の子を見るたびに『戦争』について考えます」という文章を寄せた。世の親が健やかに育てようと心を砕いてきた子供たちが、戦争によって「互に、罪もなく、怨みもなく、しかも殺し合って死ななければならぬ」「戦うことに於て、いかなる正義が得られ、いかなる真理の裁断が下され得るか」と、強く反戦を訴えた。未明は2人の子を病気で失った経験もあった」と紹介されていた。「婦人之友」に掲載された「男の子を見るたびに『戦争』について考えます」小川未明を婦人之友の会員である知人にお願いして、その文章全文を探して貰い、宝物のように手元に持っている。その寄稿した文章の一部は、先に同紙を通して一部紹介したが、「私は、戦争ということが、頭に浮び、心が暗くなるのをお覚えます。戦争!それは、決して空想ではない。しかも、いまの少年達にとっては、これを空想として考えることができない程、現実の問題として、真剣に迫りつつあることです」という下りもある。これは、昭和初期の文章です。今のウクライナとロシア軍の戦争のことではない。この「婦人之友」の文章を探してくれた知人も、この文章を読んで、「”男の子を見るたびに戦争のことを考えます’を読むと、私も長男がおり、また4人の孫たちは皆揃って男の子なので、本当に愛情をかけて育てられているあの子たちが戦場に駆り出されると想像するといたたまれませんね!そして、今現実にそのことが起こっていて、罪のない子どもたちを含め犠牲になっている、これを読むと遠い世界で起こっているというのではなく、我がことに引き寄せて、考えることができたように思います」と、感想を寄せて下さった。

とにかく一日も早く、停戦合意が成立することを祈るしかできない。
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)

憎しみの連鎖ではなく、支え合いの連鎖を!!-NO.16

5月20日、ロシア国防省は、ウクライナ南東部マリウポリを完全に制圧したと発表した。「マリウポリでは、約3カ月にわたる攻撃で民間人の死者は約2万人に上ると推定されており、街は廃墟となった」(神戸新聞 022・5・22)と。アゾフスターリ製鉄所からは、これまでに2439名が投降したとのこと。ただ、この数字は正確ではないという指摘もある。

さて、ウクライナ兵士の妻は映像で夫の姿を見て、「生きていて、本当に安心した。捕虜交換が一日でも早く実現することを願っている」(朝日新聞 2022・5・22)と語った。しかし、一方では昨日のテレビのニュースで、「地獄から別の地獄へ行くだけだ」と苦しい胸の内を語っていた妻もいる。この言葉は衝撃的でした。ロシア政権内では、ウクライナのアゾフ連隊の幹部は死刑もありうるという声が出ているという報道もあり、先のウクライナの兵士の妻が言った言葉が頭にこびりつく。
ロシア側は「解放」と表現するが、投降した兵士と民間人が移送される先は、親ロシア派が支配する地域の旧刑務所という報道もある。「地獄」でないことを祈るしかない。

他方、この製鉄所の地下には避難していた子どもがいて、最後の攻防でケガをした子どももいたようだ。加えてウクライナ各地では子どもの犠牲も相次いでいることも報じられている。子どもにまで被害が及ぼすのは痛ましい!

5月28日付け神戸新聞で、「戦争はしないで」という見出しで13歳の中学生の投稿が紹介されていた。少し長いが以下に紹介したい。

—みなさんは今、ロシアとウクライナとの間に戦争がおきていることをしっていますか?今ロシアがウクライナへ砲撃し、ミサイルを撃って攻撃しています。みなさんは、昔の第2次世界大戦の時の戦争をしっていますか?あの時、見なれない姿に世界は変わってしまい、大ぜいの人や幼い子どもがなくなりました。それから戦争はやめようといっていたけれど、ロシアとウクライナの間で、戦争が始まってしまいました。それに被害を受けているウクライナは「停戦して」とねがってもロシアは聞いてくれませんでした。でも、ある日、ロシアのテレビ放送局で、アナウンサーが話していると、ロシア側の一人の人が画面にでてきました。「ロシアはだまされている」「停戦して」とカードを示していました。ロシアの中にもこんな人がいるっていいと思いました。なので、みなさんは絶対に戦争はしないでください。―

というものだ。私たちは、こうした子どもの切ない思いに、きちんと向き合わなければならないとあらためて気づかされた。      
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)

憎しみの連鎖ではなく、支え合いの連鎖を!!-NO.15

5月17日ウクライナのマリウポリ・アゾフスターリ製鉄所から、ウクライナの「アゾフ連隊」の兵士が694名退避したことが報じられたが、まだ2,000人以上が残っていたとロシア国防省は指摘し、19日に計1730人が投降したとに発表した。

ウクライナ側は、ウクライナが拘束している露軍兵士との捕虜交換を求めていたが、ロシア側は「犯罪者は裁判を受けなければならない」と、引き渡しに難色を示しているそうだ。ロシア側は「国際的な基準に従って対処することを保証する」と言っているものの、アゾフスターリ製鉄所から“降伏”した民間人を含む約2,000人の中で、民間人に対してネオナチ派のアゾフ連隊であるかどうかの尋問がされている。「ロシア紙『モスコフスキー・コムソモーレツ』はウクライナ兵の処遇については、ロシアの法律家の論評を掲載。マリウポリがあるドネツク州の親ロシア派支配地域「ドネツク人民共和国」の「法律」が適用されるとし、死刑の適用もありうるとした」(朝日新聞 2022/5/19)との報道も。ジュネーブ条約に則れば、とんでもないロシア側の暴挙以外なにものでもない。

ところで、先般ロシア政府が出したロシアへの「入国禁止リスト」に名前のあがった岡部芳彦教授(神戸学院大学)の講義を拝聴した時に、同教授が「ドネツク州を“ロシア化”されることが、ウクライナの人たちにとっては屈辱的なこと。例えば、ある日からテレビの放送は、ロシアで流れている内容に変わり、使用言語もロシア語に統一されるというように暮らしが一変するということを想像できますか?」と聴視者に問われた。

また、同教授は5月17日の朝日新聞夕刊の取材で「太平洋戦争で惨禍を招いた原因の一つには、英語を禁止したことにあるのでは、と。あの頃、日本は英語を「敵性語」と位置づけ、野球のストライクは「よし」、「ボール」は「だめ」と呼んだ」と具体的な事例を語っておられた。さらに同教授は、先の戦勝記念日にプーチン大統領が演説の中でウクライナという言葉を一度も使わなかったことにも言及し、2022年5月20日付け神戸新聞では、「国名を呼ばない姿勢からは、ウクライナという国が存在しないという意識と民族性の否定を感じました。今回の侵攻を通じ、基本的人権の尊重や平和主義といった、私たちが当たり前だと感じている価値観が共有されていない国があることを意識しておく必要があると感じます」とも。これまで日露が友好的な外交関係ができることを願い尽力されてこられた岡部教授にとっては、残念な事態になろうとしているが、「対話の道を探り続けることで、戦争を終わらせると信じたい」と結んでおられた。
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)

憎しみの連鎖ではなく、支え合いの連鎖を!!-NO.14

とうとう、ウクライナ南東部のマリウポリがロシア軍による、2月末から約80日間の容赦ない攻撃が終わった。アゾフスターリ製鉄所には、一時ウクライナの兵士が1,000人以上もいて、負傷兵が約500人が取り残されているという報道もあった。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、「戦闘任務は完了した」「ウクライナの英雄たちは生きて帰ってこなければ。これが私たちの原則だ」と声明を出した。ロシア側は「ウクライナ軍が降伏した」と発表。手放しでは喜べないが、この地域においてはとりあえず戦闘状態が終わったということには、「ホッ!」と一息つける。

それにしても「包囲戦80日市街9割破壊」「無差別攻撃、2万人超犠牲」「マリウポリ陥落」「製鉄所部隊投稿」「激戦地露「戦果」宣伝」・・・・などなど、第二次世界大戦時の日本のニュースも、こんな報道が日々されていたのだろうか?遠く戦地と離れていても、どうも落ち着かない!

もちろん、日本に避難して来られたウクライナの人たちは、もっと落ち着かないだろう。ウクライナに夫を残し、単身で身内を頼って日本に来られた若いパートナーもいる。とにかく、ロシア・プーチン大統領は全面的に「無条件即時休戦宣言」をするべきだ。プーチン大統領が侵攻さえしなければ、誰一人こんなつらい思いをすることはなかったはずだ。憤りが込み上げてくる。

日本に避難された方のほとんどは、言葉が全く通じない。もちろん仕事はできないし、自由に移動もできない。小さなことかも知れないが、行政から住まいを提供されても、風呂にはシャワーがない。これまで暮らしてきた日々の暮らしが当たり前のようにない!ということが不安とストレスを増大させる。

CODEは、27年前の阪神・淡路大震災でボランティアの第1歩は「黙って(被災者の)傍にいること」と教えられた。日本に避難して来られているウクライナの人たち、そして今回のことで息を潜めながら、肩身の狭い思いをしているロシアの人たちに、大した支援はできないが、この「黙って傍にいる」ということだけは忘れていない。

先日も、ロシアの方でウクライナ支援を呼びかけている家族に出会った。「感動しました!」と声をかけた。複雑な表情だったが、訪ねていったことには喜んで下さった。
少しでも何かお手伝いができないかとCODEの関係者は東奔西走するが、27年前に「ボランティア元年」と言わしめたあの“空気”を思い出す。
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)

PS: ウクライナおよびロシアからの避難民に対しての具体的な支援活動(MOTTAINAIやさい便など)はCODEのHP・Facebookを見てください。

憎しみの連鎖ではなく、支え合いの連鎖を!!-NO.13

本日9日は、ロシアにとっては「対ドイツ戦勝記念日」だ。このナチスドイツとソ連(当時)が闘った戦争で、双方に3,000万人以上の死者が出たという凄まじい戦争だった。

何故、ロシア・プーチン政権は、いまこの状況のなかで行われなければならないのか?『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』(岩波新書)の著者大木毅さんによると、「独ソ戦では、ウクライナの独立勢力が一時的にナチスドイツと手を結び、ソ連に抵抗したことがある」と。2月24日のプーチン大統領率いる露軍がウクライナに侵攻したのも、プーチン大統領が、その正当性を主張する根拠に「ナチスからウクライナで苦しんでいるロシア住民を解放するため」を繰り返し公言している。つまり、プーチン大統領は、「ナチスを徹底して滅ぼす」ということを大義名分にしているからだ。

さて、このような情勢の中で、ロシアから出国している人が約388万人に上るという現実に目を向けなければならない。他方、ウクライナから国外退避をした人は、500万人~700万人と言われている。しかし、いまは国外退避する人より、ウクライナに戻って来る人が多いという報道もある。ロシアから国外に退避する人たちの声は報道によると、「プーチン政権に賛同できない」「制裁で国外とのビジネスができない」「生活が苦しくなる」(朝日新聞 022・5・8)という。中でも、「民主主義がなくなるこの国では希望が持てない」という若者の声が多い。
ウクライナに戻る人たちの中には、いのちがけで民主主義を守るという人たちも少なくないだろう。プーチン大統領が、ウクライナへの攻撃を止めないのは、「民主主義の台頭が怖いからだ。」と言った専門家もいた。

このことを、この日本の地で暮らす私たちは、どのように受け止めればいいのだろうか?このように言うと、多くの人は、「この日本で何の不自由があるのか?」と訝る人たちが少なくないだろう。
果たして、この国は自由なのか?私は、あらためて、しっかり考えて見たい。
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)

憎しみの連鎖ではなく、支え合いの連鎖を!!-NO.12

OCHA(国連人道問題調整事務所)によると、29日から退避作業が始まったウクライナ・マリウポリのアゾフスターリ製鉄所からの避難が100人を超えたようだ。しかし、残念ながら露軍は早くも攻撃を再開した。

さて前号でも触れたが、日本では昨日が憲法記念日だった。おそらく多くの人が、ロシア・ウクライナの情勢を踏まえて、憲法について考えさせられた一日だったのでは・・・・・と思う。
昨日の朝日新聞天声人語に敗戦の翌々年に配られた冊子『あたらしい憲法のはなし』にまつわることが紹介されていた。同冊子は「浅井清その他の人々の尽力でできた」とのこと。そして「憲法学者高見勝利さん(77)によれば、浅井清は慶応大で教えた根っからのリベラリストだった」と。ただ、「国は手のひらを返し、浅井に新憲法の解説役を任せる。〈嬉々として学校へ通う子ども達の姿を見るにつけ(略)憲法の知識を持たせる唯一の機会が、著者に与えられたことに感激を覚えた〉。と自著に記した一文は、彼の高揚感を伝える」と解説。その浅井は「〈くうしゅうでやけたところへいってごらんなさい。やけただれた土から、もう草が青々とはえています〉。と基本的人権を子どもに説くために草や木の生命力から説き起こした」と紹介している。(2022・5・3朝日新聞天声人語より引用)

これを読んで、私は27年前の阪神・淡路大震災後、天川佳実さんという方が「がれきに花を」という運動に携わっていたことを思いだした。きっと想像を絶する大地震だったが、なんと瓦礫の間から愛らしい花が咲いているのを見て、天川さんは勇気を貰ったと言っていた。なお、この運動は同時に「がれきに花をさかせよう!」と学校などでも広がった。

紛争下でも、自然災害下でも、大地の隙間からこうして花が咲く。それは、小さな“いのち”が自然の中で生かされているということを体感することでもあった。先述した浅井清は、そのことを子どもたちに伝えかったのかも知れない。

前号で伝えた「神戸市外国語大学の山本昭宏准教授のいう『国家や専門家が語る安全保障の言葉でなく、一人一人が自分の生活の中にある感覚で平和や憲法を語ることが大切だ』」というメッセージも同じ地下茎にある。

今、ウクライナ民話の『てぶくろ』という降りしきる雪のなか、片方だけの手袋に動物たちが暖をとろうと次々に入ってくる物語の絵本が超人気だそうな。是非読んで見ないといけないな・・・・!

ロシア・ウクライナの緊迫した情勢が続く中で、子どもをかかえる大人は、結構悩んでいるという話をよく聞く。バーチャルの戦争ゲームなどで育った子どもたちは、簡単に「死ね!」「殺せ!」という言葉を口にする。そのたびに、傍にいる大人は「ドキッ!」とし、戸惑っているようだ。私の知人のお父さんが、そうした子どもの言葉に、「どんな人であっても、人間である以上、“死ね!”と言ってはいけないよ!」と言ったそうだ。

ロシア・ウクライナ情勢を踏まえて、実にいろいろなことを考えさせられる。でも、自然の中での、小さな“いのち”、可憐な“いのち”に出会い、いのちは大切にしよう!!ということだけは、忘れてはならないということを肝に銘じたい。
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)

憎しみの連鎖ではなく、支え合いの連鎖を!!-NO.11

国連グテレス事務総長とプーチン大統領が合意した国連と赤十字国際委員会の関与による人道回廊による避難が始まり、2ヶ月による地下での避難生活から解放されたウクライナの人びとがいる。第一陣は希望した中南部のザポーリジャに到着したという報もあった。ウクライナのゼレンスキー大統領は、「初めて人道回廊が機能した」と評価した。私は、前回の本レポートで、「プーチンがこの合意を守るとは思わない」と否定的なコメントを書いたことをお詫びしなければならない。

テレビでは、乳児を含む子ども、高齢者、女性の避難の模様が映し出された。約100人が解放されたと。全部でこの地下には1000人近く居るだろうと言われていたので、まだわずかにしかすぎないが、とりあえずは「ホッ!」とするニュースだろう。

しかし、一方で「プーチン大統領が『対独戦勝記念日』の5月9日に、これまでの『特別軍事作戦』から、『戦争宣言』を発表するのでは」という報道も出されている。ロシアのラブロフ外相は「われわれの軍はその行動を特定の日に合わせることはしない」と述べているが、特別軍事作戦から戦争宣言にという変更は、一体何を意味するのだろうか?これまで何度も「核使用」をちらつかせているので、大変恐怖を感じる。

さて、日本は今日、75回目の憲法記念日だ。日本国憲法は、前文で「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。われらは全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和の内に生存する権利を有することを確認する」と掲げられている。
さらに憲法9条1項では「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」としている。

プーチン率いる露軍に対して、即時停戦を説得できるのは、日本の役割であることは明白である。2月24日、プーチン大統領のウクライナに対する一方的な侵攻から2ケ月以上の凄惨な現実を前にして、日本の選択肢はこれ以外にはないだろう。

そして私たち一人ひとりに問われているのは、神戸市外国語大学の山本昭宏准教授のいう「国家や専門家が語る安全保障の言葉でなく、一人一人が自分の生活の中にある感覚で平和や憲法を語ることが大切だ」(2022年5月3日神戸新聞社説より引用)という言葉を深く噛みしめることではないか。
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)

憎しみの連鎖ではなく、支え合いの連鎖を!!-NO.10

プーチン率いるロシア軍は、ウクライナのマリウポリに続いて、ドンパス地方の制圧に向けて攻撃を続けている。さらに南部の港湾都市オデッサをも攻撃し、黒海沿岸の統合支配を目論んでいるのか。ウクライナにとってこのオデッサが破壊されると、海路が絶たれることになる。

先日4月24日は、ロシア・ウクライナ両国に信者の多い、東方正教会のイースター(復活祭)だった。「第一次大戦中、ロシア軍兵士の求めで戦場での復活祭停戦が実現したという」(2022・4・21毎日新聞)歴史もあったようだが、復活祭停戦は叶わなかった。この日、プーチン大統領はロシア正教会に行き、平和を誓った。でも、同時にウクライナに攻撃を仕掛けている。「平和の祈り」って何なのだ?と世界中の人は失望しただろう。

他方、同じ日に米国のブリンケン国務長官とオースティン国防長官はウクライナの首都キーウを訪問し、912億円分の軍事支援をゼレンスキーウクライナ大統領に表明し、同国防長官は「ウクライナの侵攻のようなことができない程度に、ロシアが弱体化することを望む」と米国の目標を語った。また29日にはポーランドが戦者200両以上をウクライナに供与したと。本気で停戦する気があるのか!と怒りがこみあげてくる。

そして、国連グテレス事務総長とのプーチン大統領およびゼレンスキー大統領との会談が行われた。4月27日付け朝日新聞によると、同事務総長は「効果的な対話や即時停戦、平和的解決のための条件を見つけたい」と会談に臨んだが、この願いが叶わなかった。辛うじて①人道支援として、ウクライナ国内で行った約340万人の支援を870万人に増やす。②プーチン大統領は、マリウポリの製鉄所にとどまる民間人の退避のため、国連と赤十字国際委員会が関与することを「原則合意」することを約束させた。が、水を差すようだがプーチンがこの合意を守るとは思えない。

一方で日本は、この機に乗じて、専守防衛原則に反し、軍事偏重路線に突き進もうとしている。私たちは決してこのことを看過できないことを指摘したい。
今、日本政府の自民党はこの情勢に乗じて「国家安全保障戦略」という、戦争への危険を高める軍拡政策の提言をまとめたと発表した。内容は①敵基地攻撃能力の保有。②防衛費を「対GDP比2パーセント以上」という目標を念頭に5年以内に拡大。③防衛装備移転三原則を見直し、侵略を受けている国に対しては「幅広い分野の装備の移転を可能とする」との言い方で、殺傷能力を持つ兵器の提供も検討するよう求めているという内容だ。この自民党の提案に対して平和構想研究会は21日、50人以上の呼びかけ人と600人を超える賛同者のもと、「平和憲法に基づく外交・安全保障の基本に立ち返って、与野党による幅広い視点から冷静な議論を求める緊急声明」を発表した。(声明の詳細はこちら

同声明は、ウクライナにおける戦争の長期化は、さらなる社会的・経済的悪影響をもたらしかねない。今、お金は武器にではなく、人々にこそ回さなければならないはずだと訴えている。
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)