憎しみの連鎖ではなく、支え合いの連鎖を!!-NO.21

「国連難民高等弁務官事務(UNHCR)の集計によると、ロシアが侵攻したウクライナから国外へ脱出した避難民が8日までに700万人を超えた。・・・・ロシアには104万人が移った。」(毎日新聞 2022・6・10)と報じていた。一方で「448万人」が帰還しているとみられている」(同紙)とも。他方、こうした数字が発表される中で、「(ウクライナ南東部の港湾都市マリウポリのアゾフスターリ製鉄所で投降した)捕虜1000人露へ移送」(毎日新聞 2022・6・9)という記事が気になる。無事、ウクライナの故郷に帰ってくることができるだろうかと?

さて、未だウクライナ東部では露軍とウクライナ軍が、激しい衝突が続いている。ゼレンスキー・ウクライナ大統領は、8日に公開した演説動画で、セベロドネツクについて「すさまじい戦いになっている。とても厳しい。・・・・ドンパスの運命がここで決められようとしている」(朝日新聞2022・6・10)と述べた。明日12日は「ロシアの日」。プーチン大統領が「戦争を終わらせるシナリオを描くだろう」?という指摘もあるが・・・・・・?

6月9日付け朝日新聞では、(ウクライナから)出国する自由や「前線に立たない自由」を求める市民がいることを大きく紹介している。ウクライナでは、総動員が発令され、18~60歳の男性国民は、国を離れることができなくなっていたのである。叶わぬ願いなのか、戦時下においては、「自由」は保障されないのか・・・・?SNSでは、「兵士として戦え」「恥を知れ」という声も浴びせられたようだ。もちろん、「自由」は平時において獲得するものだろう。

ウクライナの母、ロシア人の父を持つロシア出身スイス在住の作家ミハイル・シーシキンは「気の遠くなるような人類の歴史のなかで、いったい、『国を愛せ』という呼びかけの末に、どれほどの命が犠牲になっただろう。そして今、ロシア人が、ウクライナ人が、同じ犠牲のもとに立たされようとしている。兄弟は共にその苦しみを味わい、いつの日か共に未来を取り戻そうとするだろう」「愚かな権力が、二国の民衆をけしかけ、敵対させるというおぞましいことをやってのけた。そこでは『言葉』までもが、理解し合うためではなく争うために利用されている」(『ウクライナとロシアの未来-2022年のあとに』ミハイル・シーシキン、奈倉有里訳より)と奈倉さんにメッセージを寄せられた。

2月24日以降の露軍によるウクライナ侵攻以来、この問題を自分事として引き寄せ、考えるための指針のようなメッセージが、こうして翻訳者の奈倉有里さんのご尽力があって、私たちの手許に届くということは大変有難い。
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)

PS:CODEは、ウクライナおよびロシアから神戸に避難している方々に、「MOTTAINAIやさい便」を届けています。この「MOTTAINAIやさい便」も、無数のちいさな橋をかける活動です。是非、応援して下さい。
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憎しみの連鎖ではなく、支え合いの連鎖を!!-NO.20

ロシアのプーチン大統領の後継者のことが、にわかに話題になっている。3人の候補者の名があがっているが、これまでのプーチン体制から推し測ると、誰になっても大きくは変わらないだろうとしか思えない。一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、7日英紙フィナンシャル・タイムズで、「徹底抗戦」を語ったそうだ。「欧州諸国の一部で対ロシア制裁による経済悪化を受け妥協点を探る動きが出ていることに、『理解できない』と反発した。」「フランスのマクロン大統領が『ロシアに屈辱を与えてはならない』と発言したことに、『理解できない』」と。さらに「私たちは全ての占領地域の解放を達成しなければならない。」「我々は戦場で勝利する必要がある」「ロシアとの間で引き分けは選択肢にない」とし、欧米諸国に一層の武器支援を」と求めたとのこと。

前号で ロシア出身作家の翻訳を多く手掛けている「奈倉有里」さんが『新潮』に紹介された「無数の橋をかけなおすーロシアから届く反戦の声」の一部を紹介しました。
また、他の作家さんの声を以下に紹介します。

—リュドミラ・ウリツカヤ(1943~)は、開戦直後に「痛み、恐怖、恥」と題した声明を出した。生命が潰されていく痛み、自らや子供たちや孫たちの命が危険にさらされる恐怖、全人類に大きな損害をもたらした政府の恥と国民の責任。ウリツカヤはこれまでも一貫して戦争に反対し、抵抗の声をあげてきた。「民族の敵」と糾弾されても、カラーボールを投げつけられても、彼女は黙らなかった。2014年に反戦デモに参加した時は、私が強いからじゃない。弱いから、恐ろしいからだ。子供や孫たちが、戦争のある世界で生きていくことになるかもしれないと思うと、怖くてしかたがないからだ」と話していた—と。

最後に奈倉有里さんのメッセージを紹介する。

私たち――文化に携わるすべての人間にできることは、特定の(国や民族や団体といった)まとまりを断罪することではなく、学ぶべき相手を探すこと、異教の優れた学者や作家や芸術家を探し、それを届け、受けとり、考えることだ。世界の学問を、人権活動を、文化を、文学を、つなぎ続ける。これは長い道のりの一端でありながら、緊急の課題でもある。恐怖と無理解が生む攻撃性ほど恐ろしいものはない。まだ伝わっていない大切なことはたくさんある。できることだけでいい。まったく同じ考えじゃなくてもいい。ただひたすら、武力に心を支配されることだけはせずに、無数のちいさな橋をかけなおそう。(初出:「新潮」2022年5月号)
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)

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憎しみの連鎖ではなく、支え合いの連鎖を!!-NO.19

昨日5日、映画『ドンバス』を観てきた。―2014年に一方的にウクライナの独立を宣言し、親ロシア派勢力によって実行支配されているウクライナ東部ドンバス地方で起きた実話を元に構成された映画-とチラシには書いてあった。ウクライナ出身の監督の作品で、カンヌ映画祭では監督賞も受賞している。

ただ、観賞後帰途に着く道すがら、何か割り切れない、モヤモヤした気持ちを抱き、ブツブツ独りごとをつぶやきながら歩いた。これまでもメディアからの情報では耳にしていたけれど、その理由は、「これは、ほんとうなのか?もしかすればウクライナ側のフェークではないか?」「いや、これはほんとうにロシア側が犯した“ロシア化”の数々の事実なのか?」と、混乱するほどの映像の連続だったからだ。正直、きつかった。

観たあとになったが、5日の朝日新聞朝刊を帰宅して読んだところ、ウクライナ首都キーウから北西部約40㎞郊外の村で、ロシア軍に連行された24歳の青年のことが書かれていた。その青年は同村の鋳物工場の窓もない部屋に監禁され、想像を絶する環境での生活を強いられていたようだ。その部屋には、トイレもなく「プラスチックの容器に排泄」「食事はロシア兵が食べるスープやかゆが提供された。スプーンがたりないので手を使って食べざるを得なかった。」(朝日新聞、2022・6・5)

「ロシア兵が撤退すると、工場ではロシア語で書かれた『誓約書』のような文書が見つかった。『ロシアの人々に対し、違法な行動はしないと約束します。』『ウクライナ軍のことや居場所について、ロシア兵に知らせることを約束します。』『書け、なぜならここは、ロシアになるのだから』。そう言って、ロシア兵が「サンプル」を読み上げたこともあった。」と(同紙より)。映画『ドンバス』の内容とほぼ同じだ。

ただ、それでもウクライナのゼレンスキー大統領に「最後まで戦え!」とは言えない自分がいる。同じ5日、同紙で西谷修(東京外国語大学名誉教授)さんが、「急ぐべきは戦争を一刻も早く止めることだ。唯一立てられる価値は「殺し合いをやめ、みんなが死なない」、これだけである。」と語っている。

ロシア出身作家の翻訳を多く手掛けている「奈倉有里」さんが『新潮』に紹介された「無数の橋をかけなおすーロシアから届く反戦の声」に、以下のような声もあった。

(2月25日のラジオで)「「ロシア政府で権力を握った人間は、まさかこんなふうに世界中の人間を踏み躙り、すべての意味あるものが意味をなくし――人を、神の探求も対話も芸術も、あらゆる価値あるものに取り組めない状態にし、ただ恐怖と憎しみに震える獣に変えてしまうような、そんな状態にすることが目的だったというのか。ほんとうにこんなことが目的なのか?!」困惑するリスナーの質問に対し、「アメリカとロシアのどちらが酷いか競争してはいけない。他国をみるなら、より良いと思うような国を見つけたときに、その『良さ』を競えばいい」「何を読んだらいいかというなら、ウクライナ文学を読もう」と(作家ドミートリ―・ヴィコフー1967~-)
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)

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憎しみの連鎖ではなく、支え合いの連鎖を!!-NO.18

プーチン大統領が率いる露軍が、ウクライナに侵攻してから3日で100日になるそうだ。しばらく停戦合意に関する交渉が遠のいていたように思うが、トルコのエルドアン大統領が仲介に入り、停戦合意に漕ぎつけようとしている動きが注目されている。

6月3日付の神戸新聞の記事を見るまでは、「正直、何でもいいから停戦して欲しい!」と願っていた。その3日の記事というのは、「トルコのエルドアン大統領が、シリア北部で敵対する少数民族クルド人勢力への新たな軍事作戦に踏み切る構えを強め、北大西洋条約機構(NATO)加盟各国と、新たな加盟を申請した北欧フィンランド、スウェーデンに作戦の支持を迫っている」というもの。これでは「何でもいいから!」とは言えない。

さて、ここ数日間で「ロシア外交官抗議の辞職」「反戦メッセージを国内外に発信する女性たち」「ウクライナ侵攻をめぐる内部告発」「露軍内部での反乱」「ウクライナへの従軍拒否」等々。さらに、これまでプーチン大統領にも大きな影響を与えて来たロシア正教会トップのキリル1世総主教(75)がプーチン大統領に、「できるだけ賢明に行動すべきだ」と発言、プーチン大統領が停戦に向けて舵を切る可能性が出てきたという、日刊ゲンダイのWebニュース(5月31日)が目に止まり、また希望が持てた。

ロシア国内でもこの戦争に反対している人が少なくないことは、これまでのプロガバンダの影響による数字ではなく、深層では相当な声があるだろうと推測できる。6月4日付け朝日新聞にも「ロシアの中の声」として、ロシア文学翻訳者の奈倉有里さんが、「日本の報道からは、抗議している人の姿が見えないと感じた。ロシア=悪と、国という属性で中にいる人のことを決めつけるようになると怖い。」という想いを吐露している。インタビュアーの記者が、「ウクライナの人には、それだけの憎しみを抱く理由があるのではないでしょうか。」と問うたことに対して、「そうだとしてもロシア語話者全員が悪いということはないわけです。どんな言葉が平和と和解につながるのかを、片時も忘れず考え続けることが必要です。人を『分類する』ことには暴力性が伴い、何々人は本質的にこうである』といった言葉は人を国籍や人種によってひとまとめにする言葉であることを、忘れないことです」と奈倉さんは話す。(朝日新聞 2022年6月4日より)

ただ、一方で最後まで戦うという強い意志を持っているウクライナのゼレンスキー大統領はじめウクライナの市民はどうだろうか?同大統領は、停戦交渉に応じるのだろうか?という懸念が残る。ゼレンスキー大統領を英雄視する空気もあるだけに・・・・・・・?
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)

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憎しみの連鎖ではなく、支え合いの連鎖を!!-NO.17

前回のレポートで、健気な13歳の中学生の言葉を紹介した。24日で露軍がウクライナに侵攻してから3カ月になる。今朝、マスコミ各紙をめくると、ウクライナのゼレンスキー大統領が21日にテレビのインタビューで「2月24日の侵攻以前の領土を取り戻すことができれば、ウクライナにとっての勝利と見なす」と発言したと紹介されていた。その言葉に歩調を合わすように、ウクライナ最高会議は「ロシアの侵攻に伴う戒厳令と総動員令を90日間延長すると承認した。」そして、23日アメリカのオースティン国防長官は、「ウクライナに対し、約20カ国が弾薬や戦車など新たな軍事支援を表明したことを発表した。
加えて、ウクライナのゼレンスキー大統領は、「(ウクライナ)からの男性の出国を認めることを求める請願書について、反対する姿勢を示した」と(朝日新聞 夕刊022・5・23)。なお、この請願書には2万5千人の署名が集まっていたとのこと。

「停戦」どころか、やはりウクライナは徹底して戦うという決意のようだ。「あ~・・・・・」ため息しか出ない。

5月10日付け毎日新聞に「100年後『野ばら』のリアル」という見出しで、日本のアンデルセン」と呼ばれた児童文学作家、小川未明(1882~1961年)による「野ばら」のことが紹介されていた。小見出しには「童話まるで露とウクライナ」と書かれていた。合わせて同記事には、「第一次大戦や太平洋戦争のさなかを生きた未明は、小説のほか約1200編の童話を残した。昭和初期には、雑誌「婦人之友」に「男の子を見るたびに『戦争』について考えます」という文章を寄せた。世の親が健やかに育てようと心を砕いてきた子供たちが、戦争によって「互に、罪もなく、怨みもなく、しかも殺し合って死ななければならぬ」「戦うことに於て、いかなる正義が得られ、いかなる真理の裁断が下され得るか」と、強く反戦を訴えた。未明は2人の子を病気で失った経験もあった」と紹介されていた。「婦人之友」に掲載された「男の子を見るたびに『戦争』について考えます」小川未明を婦人之友の会員である知人にお願いして、その文章全文を探して貰い、宝物のように手元に持っている。その寄稿した文章の一部は、先に同紙を通して一部紹介したが、「私は、戦争ということが、頭に浮び、心が暗くなるのをお覚えます。戦争!それは、決して空想ではない。しかも、いまの少年達にとっては、これを空想として考えることができない程、現実の問題として、真剣に迫りつつあることです」という下りもある。これは、昭和初期の文章です。今のウクライナとロシア軍の戦争のことではない。この「婦人之友」の文章を探してくれた知人も、この文章を読んで、「”男の子を見るたびに戦争のことを考えます’を読むと、私も長男がおり、また4人の孫たちは皆揃って男の子なので、本当に愛情をかけて育てられているあの子たちが戦場に駆り出されると想像するといたたまれませんね!そして、今現実にそのことが起こっていて、罪のない子どもたちを含め犠牲になっている、これを読むと遠い世界で起こっているというのではなく、我がことに引き寄せて、考えることができたように思います」と、感想を寄せて下さった。

とにかく一日も早く、停戦合意が成立することを祈るしかできない。
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)

憎しみの連鎖ではなく、支え合いの連鎖を!!-NO.16

5月20日、ロシア国防省は、ウクライナ南東部マリウポリを完全に制圧したと発表した。「マリウポリでは、約3カ月にわたる攻撃で民間人の死者は約2万人に上ると推定されており、街は廃墟となった」(神戸新聞 022・5・22)と。アゾフスターリ製鉄所からは、これまでに2439名が投降したとのこと。ただ、この数字は正確ではないという指摘もある。

さて、ウクライナ兵士の妻は映像で夫の姿を見て、「生きていて、本当に安心した。捕虜交換が一日でも早く実現することを願っている」(朝日新聞 2022・5・22)と語った。しかし、一方では昨日のテレビのニュースで、「地獄から別の地獄へ行くだけだ」と苦しい胸の内を語っていた妻もいる。この言葉は衝撃的でした。ロシア政権内では、ウクライナのアゾフ連隊の幹部は死刑もありうるという声が出ているという報道もあり、先のウクライナの兵士の妻が言った言葉が頭にこびりつく。
ロシア側は「解放」と表現するが、投降した兵士と民間人が移送される先は、親ロシア派が支配する地域の旧刑務所という報道もある。「地獄」でないことを祈るしかない。

他方、この製鉄所の地下には避難していた子どもがいて、最後の攻防でケガをした子どももいたようだ。加えてウクライナ各地では子どもの犠牲も相次いでいることも報じられている。子どもにまで被害が及ぼすのは痛ましい!

5月28日付け神戸新聞で、「戦争はしないで」という見出しで13歳の中学生の投稿が紹介されていた。少し長いが以下に紹介したい。

—みなさんは今、ロシアとウクライナとの間に戦争がおきていることをしっていますか?今ロシアがウクライナへ砲撃し、ミサイルを撃って攻撃しています。みなさんは、昔の第2次世界大戦の時の戦争をしっていますか?あの時、見なれない姿に世界は変わってしまい、大ぜいの人や幼い子どもがなくなりました。それから戦争はやめようといっていたけれど、ロシアとウクライナの間で、戦争が始まってしまいました。それに被害を受けているウクライナは「停戦して」とねがってもロシアは聞いてくれませんでした。でも、ある日、ロシアのテレビ放送局で、アナウンサーが話していると、ロシア側の一人の人が画面にでてきました。「ロシアはだまされている」「停戦して」とカードを示していました。ロシアの中にもこんな人がいるっていいと思いました。なので、みなさんは絶対に戦争はしないでください。―

というものだ。私たちは、こうした子どもの切ない思いに、きちんと向き合わなければならないとあらためて気づかされた。      
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)

憎しみの連鎖ではなく、支え合いの連鎖を!!-NO.15

5月17日ウクライナのマリウポリ・アゾフスターリ製鉄所から、ウクライナの「アゾフ連隊」の兵士が694名退避したことが報じられたが、まだ2,000人以上が残っていたとロシア国防省は指摘し、19日に計1730人が投降したとに発表した。

ウクライナ側は、ウクライナが拘束している露軍兵士との捕虜交換を求めていたが、ロシア側は「犯罪者は裁判を受けなければならない」と、引き渡しに難色を示しているそうだ。ロシア側は「国際的な基準に従って対処することを保証する」と言っているものの、アゾフスターリ製鉄所から“降伏”した民間人を含む約2,000人の中で、民間人に対してネオナチ派のアゾフ連隊であるかどうかの尋問がされている。「ロシア紙『モスコフスキー・コムソモーレツ』はウクライナ兵の処遇については、ロシアの法律家の論評を掲載。マリウポリがあるドネツク州の親ロシア派支配地域「ドネツク人民共和国」の「法律」が適用されるとし、死刑の適用もありうるとした」(朝日新聞 2022/5/19)との報道も。ジュネーブ条約に則れば、とんでもないロシア側の暴挙以外なにものでもない。

ところで、先般ロシア政府が出したロシアへの「入国禁止リスト」に名前のあがった岡部芳彦教授(神戸学院大学)の講義を拝聴した時に、同教授が「ドネツク州を“ロシア化”されることが、ウクライナの人たちにとっては屈辱的なこと。例えば、ある日からテレビの放送は、ロシアで流れている内容に変わり、使用言語もロシア語に統一されるというように暮らしが一変するということを想像できますか?」と聴視者に問われた。

また、同教授は5月17日の朝日新聞夕刊の取材で「太平洋戦争で惨禍を招いた原因の一つには、英語を禁止したことにあるのでは、と。あの頃、日本は英語を「敵性語」と位置づけ、野球のストライクは「よし」、「ボール」は「だめ」と呼んだ」と具体的な事例を語っておられた。さらに同教授は、先の戦勝記念日にプーチン大統領が演説の中でウクライナという言葉を一度も使わなかったことにも言及し、2022年5月20日付け神戸新聞では、「国名を呼ばない姿勢からは、ウクライナという国が存在しないという意識と民族性の否定を感じました。今回の侵攻を通じ、基本的人権の尊重や平和主義といった、私たちが当たり前だと感じている価値観が共有されていない国があることを意識しておく必要があると感じます」とも。これまで日露が友好的な外交関係ができることを願い尽力されてこられた岡部教授にとっては、残念な事態になろうとしているが、「対話の道を探り続けることで、戦争を終わらせると信じたい」と結んでおられた。
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)

憎しみの連鎖ではなく、支え合いの連鎖を!!-NO.14

とうとう、ウクライナ南東部のマリウポリがロシア軍による、2月末から約80日間の容赦ない攻撃が終わった。アゾフスターリ製鉄所には、一時ウクライナの兵士が1,000人以上もいて、負傷兵が約500人が取り残されているという報道もあった。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、「戦闘任務は完了した」「ウクライナの英雄たちは生きて帰ってこなければ。これが私たちの原則だ」と声明を出した。ロシア側は「ウクライナ軍が降伏した」と発表。手放しでは喜べないが、この地域においてはとりあえず戦闘状態が終わったということには、「ホッ!」と一息つける。

それにしても「包囲戦80日市街9割破壊」「無差別攻撃、2万人超犠牲」「マリウポリ陥落」「製鉄所部隊投稿」「激戦地露「戦果」宣伝」・・・・などなど、第二次世界大戦時の日本のニュースも、こんな報道が日々されていたのだろうか?遠く戦地と離れていても、どうも落ち着かない!

もちろん、日本に避難して来られたウクライナの人たちは、もっと落ち着かないだろう。ウクライナに夫を残し、単身で身内を頼って日本に来られた若いパートナーもいる。とにかく、ロシア・プーチン大統領は全面的に「無条件即時休戦宣言」をするべきだ。プーチン大統領が侵攻さえしなければ、誰一人こんなつらい思いをすることはなかったはずだ。憤りが込み上げてくる。

日本に避難された方のほとんどは、言葉が全く通じない。もちろん仕事はできないし、自由に移動もできない。小さなことかも知れないが、行政から住まいを提供されても、風呂にはシャワーがない。これまで暮らしてきた日々の暮らしが当たり前のようにない!ということが不安とストレスを増大させる。

CODEは、27年前の阪神・淡路大震災でボランティアの第1歩は「黙って(被災者の)傍にいること」と教えられた。日本に避難して来られているウクライナの人たち、そして今回のことで息を潜めながら、肩身の狭い思いをしているロシアの人たちに、大した支援はできないが、この「黙って傍にいる」ということだけは忘れていない。

先日も、ロシアの方でウクライナ支援を呼びかけている家族に出会った。「感動しました!」と声をかけた。複雑な表情だったが、訪ねていったことには喜んで下さった。
少しでも何かお手伝いができないかとCODEの関係者は東奔西走するが、27年前に「ボランティア元年」と言わしめたあの“空気”を思い出す。
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)

PS: ウクライナおよびロシアからの避難民に対しての具体的な支援活動(MOTTAINAIやさい便など)はCODEのHP・Facebookを見てください。

憎しみの連鎖ではなく、支え合いの連鎖を!!-NO.13

本日9日は、ロシアにとっては「対ドイツ戦勝記念日」だ。このナチスドイツとソ連(当時)が闘った戦争で、双方に3,000万人以上の死者が出たという凄まじい戦争だった。

何故、ロシア・プーチン政権は、いまこの状況のなかで行われなければならないのか?『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』(岩波新書)の著者大木毅さんによると、「独ソ戦では、ウクライナの独立勢力が一時的にナチスドイツと手を結び、ソ連に抵抗したことがある」と。2月24日のプーチン大統領率いる露軍がウクライナに侵攻したのも、プーチン大統領が、その正当性を主張する根拠に「ナチスからウクライナで苦しんでいるロシア住民を解放するため」を繰り返し公言している。つまり、プーチン大統領は、「ナチスを徹底して滅ぼす」ということを大義名分にしているからだ。

さて、このような情勢の中で、ロシアから出国している人が約388万人に上るという現実に目を向けなければならない。他方、ウクライナから国外退避をした人は、500万人~700万人と言われている。しかし、いまは国外退避する人より、ウクライナに戻って来る人が多いという報道もある。ロシアから国外に退避する人たちの声は報道によると、「プーチン政権に賛同できない」「制裁で国外とのビジネスができない」「生活が苦しくなる」(朝日新聞 022・5・8)という。中でも、「民主主義がなくなるこの国では希望が持てない」という若者の声が多い。
ウクライナに戻る人たちの中には、いのちがけで民主主義を守るという人たちも少なくないだろう。プーチン大統領が、ウクライナへの攻撃を止めないのは、「民主主義の台頭が怖いからだ。」と言った専門家もいた。

このことを、この日本の地で暮らす私たちは、どのように受け止めればいいのだろうか?このように言うと、多くの人は、「この日本で何の不自由があるのか?」と訝る人たちが少なくないだろう。
果たして、この国は自由なのか?私は、あらためて、しっかり考えて見たい。
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)

憎しみの連鎖ではなく、支え合いの連鎖を!!-NO.12

OCHA(国連人道問題調整事務所)によると、29日から退避作業が始まったウクライナ・マリウポリのアゾフスターリ製鉄所からの避難が100人を超えたようだ。しかし、残念ながら露軍は早くも攻撃を再開した。

さて前号でも触れたが、日本では昨日が憲法記念日だった。おそらく多くの人が、ロシア・ウクライナの情勢を踏まえて、憲法について考えさせられた一日だったのでは・・・・・と思う。
昨日の朝日新聞天声人語に敗戦の翌々年に配られた冊子『あたらしい憲法のはなし』にまつわることが紹介されていた。同冊子は「浅井清その他の人々の尽力でできた」とのこと。そして「憲法学者高見勝利さん(77)によれば、浅井清は慶応大で教えた根っからのリベラリストだった」と。ただ、「国は手のひらを返し、浅井に新憲法の解説役を任せる。〈嬉々として学校へ通う子ども達の姿を見るにつけ(略)憲法の知識を持たせる唯一の機会が、著者に与えられたことに感激を覚えた〉。と自著に記した一文は、彼の高揚感を伝える」と解説。その浅井は「〈くうしゅうでやけたところへいってごらんなさい。やけただれた土から、もう草が青々とはえています〉。と基本的人権を子どもに説くために草や木の生命力から説き起こした」と紹介している。(2022・5・3朝日新聞天声人語より引用)

これを読んで、私は27年前の阪神・淡路大震災後、天川佳実さんという方が「がれきに花を」という運動に携わっていたことを思いだした。きっと想像を絶する大地震だったが、なんと瓦礫の間から愛らしい花が咲いているのを見て、天川さんは勇気を貰ったと言っていた。なお、この運動は同時に「がれきに花をさかせよう!」と学校などでも広がった。

紛争下でも、自然災害下でも、大地の隙間からこうして花が咲く。それは、小さな“いのち”が自然の中で生かされているということを体感することでもあった。先述した浅井清は、そのことを子どもたちに伝えかったのかも知れない。

前号で伝えた「神戸市外国語大学の山本昭宏准教授のいう『国家や専門家が語る安全保障の言葉でなく、一人一人が自分の生活の中にある感覚で平和や憲法を語ることが大切だ』」というメッセージも同じ地下茎にある。

今、ウクライナ民話の『てぶくろ』という降りしきる雪のなか、片方だけの手袋に動物たちが暖をとろうと次々に入ってくる物語の絵本が超人気だそうな。是非読んで見ないといけないな・・・・!

ロシア・ウクライナの緊迫した情勢が続く中で、子どもをかかえる大人は、結構悩んでいるという話をよく聞く。バーチャルの戦争ゲームなどで育った子どもたちは、簡単に「死ね!」「殺せ!」という言葉を口にする。そのたびに、傍にいる大人は「ドキッ!」とし、戸惑っているようだ。私の知人のお父さんが、そうした子どもの言葉に、「どんな人であっても、人間である以上、“死ね!”と言ってはいけないよ!」と言ったそうだ。

ロシア・ウクライナ情勢を踏まえて、実にいろいろなことを考えさせられる。でも、自然の中での、小さな“いのち”、可憐な“いのち”に出会い、いのちは大切にしよう!!ということだけは、忘れてはならないということを肝に銘じたい。
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)