~【住宅問題編2】漁師から転職できるか?~ 第3次現地レポートvol.5

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【写真】ラグーンで投網を使い小魚を取る漁師(カルムナイ、4月15日)

 スリランカ、カルムナイの中の仮設団地では、最も海岸から遠いところに仮の住まいを確保しているタミール人の団地がある。ここはラグーン(湿地帯)には近いところだが、元の海岸までは10㎞はある。前号で紹介した連れ合いと子どもを亡くした彼が入っている仮設団地である。ここの住民には漁民が多いのだが、誰もが口々に「もう海岸には住みたくない」という。職業訓練所でもあれば、大工や溶接工、ドライバーの技術を身につけたいと訴える。


 3月28日の二度目の地震では、テレビやラジオで地震のことが報じられ、速く逃げるように繰り返し言われたとのこと。住民はその日、家に帰るのが怖くて、ほとんどが道路上など屋外で一夜を過ごし、早朝に避難指示は解除されたそうだ。パニックに巻きこまれ車の事故で3人の方が亡くなり、二人の女性が心臓発作で亡くなったそうだ。いずれにしろ、こうして前の記憶が消えないうちに地震が発生すると想像以上の恐怖感が襲ってくるのだろうか。海で生計を立てていた漁民が、もう海岸には住みたくないと訴えるというのは余程のことだろう。
 以前(1998年)パプアニューギニアに地震津波が発生した時もアイタペという海岸にいた人たちはそこから遠く離れた山に入って暮らしているというケースを知っているが、漁師が海を離れ転職するというのはやはり希なケースである。しかし、これからも津波災害の可能性を考えると思い切ってこういう選択も考えなければならないのかも知れない。
 ただ、漁といっても多様な漁法があり、また漁に関する生業のありかたも多様だ。ラグーンで投網をしかけ小物の魚を捕る人もいれば、対照的に大型船で沖まででて大物を捕るチームもいる。また、小舟に乗って沖の船まで解体した魚を買い、陸でまた別の仲介人に販売するという稼ぎ方もある。さらには、漁師が捕ってきた魚を少しだけ買い、行商をしている女性の姿も想像できる。こうして考えると、これからの復興過程において漁業再建は重要課題の一つであることは間違いないが、あまり急がずにじっくりと長期的な展望を持って考えたいものだ。おそらくエンジン付きの大型船と網を再確保しようと思うと、家よりも高価な財産になるのではないかと思う。被害のあったすべての漁師に船や網が配布されることはないという現実を受け止め、共同所有・共同管理という手法を検討するのも必要だ。暮らしの再建は大変なことは百も承知だが、ここはじっくりと考える時間を持ちたいものだ。
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