9月末、吉椿事務局長が四川省を訪れ、農家楽のワークショップを行いました。
その時のレポートをお送りします。
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中国四川省地震救援ニュース No.120
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2008年5月12日に中国四川省を襲った四川大地震(中国では、5.12ブン川大地震)では被災地の農村部の暮らしぶりが露わになった。中国国内で農村部から都市部へと出稼ぎに行く「農民工」は、2億6261万人(中国国家統計局調べ)と言われ、その人々の存在が現在の中国経済を陰で支えている。
大地震から5年を経た今も被災地では、未だ再建した住宅ローンの返済のために遠く外省へと出稼ぎに行く人々は多い。CODEの支援する北川県光明村の住民も約半数は出稼ぎに出ており、村は高齢者や子供が中心でどこか閑散としている。
そんな光明村では、CODEによって建設された「老年活動センター」を使って「農家楽」と呼ばれる農家レストランの経営を始めている。この農家楽の発祥の地である四川省では、都市の人々が週末、農村に出かけ、花や景色を楽しみ、郷土料理を食べ、お茶を飲みながら麻雀やトランプに興ずるというレジャーが人気である。このアグリツーリズムは、四川から中国全土へと広まっていった。
光明村の農家楽が順調に進めば、そこで雇用が生まれ、子どもを置いて出稼ぎに行かなくてもいい女性が出てくる。また村の高齢者の作る野菜を買い取ることで多少の現金収入も入り、家計の足しになる。
だが、光明村の農家楽はまだ始まったばかりで知名度もなく、時々、政府の会議や村のイベントなどで使われる程度で、普段は閑古鳥が鳴いている。また、住民の中には村の幹部が勝手にやっているだけだと斜に構えている人もいる。
そんな状況を何とかしようと先日、ボランティア仲間の協力で農家楽の専門家を招いてワークショップを開いた。北京の中国社会科学院から来ていただいたW先生は、日本に留学経験もあり、日本語も非常に堪能な方で中国の農村の人口問題や貧困脱出を研究している。W先生は、フィールドである北京や貴州省の貧困地域の農家楽で村おこしを行っている事例を光明村の人々に非常に分かりやすく伝えてくれた。「北京のある村では、たったひとりの女性が奮起、努力して、村民の信頼を勝ち取って、女性たちの力を生かし、農家楽を発展させていったのよ。」という話に住民参加や地域の力を如何に生かすかが、如何に大切かを教えてくれた。聞いている僕自身もどこからか力が湧いてくるような話だった。住民の人に感想を聞くと、いつも村の幹部に不信感を持っているLさんでさえも、どこか感心したように「あんな風にやれたらいいわねえ。」とつぶやいた。それを聞いたW先生はすかさず「あんたのように元気な女性がメンバーに入らないと!」とLさんをけしかけていた。
これまで上から下へとトップダウンで物事が決められ、言いたい事を言ってもなかなか聞き入れてもらえないという農村社会で生きてきた人々にとって、現状を変えるには計り知れないエネルギーがいるだろう。そして住民参加を実現するにはまだまだ課題も多い。だが、震災を通じてCODEや沢山のボランティア、W先生などの外部者と出会い、交流する事で少しずつではあるが、変わり始めている。そっとそばにいて、人と人をつなぐ役割がNGOやボランティアなのだとあらためて思う。
(吉椿雅道)