Yさんレポートで、「総合活動センター」を再建する香泉郷の様子をお伝えします。
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「総合活動センター」を再建する香泉郷は、北川県の南東に位置し、2200世帯、約7900人の住む農村地域である。そのうち約7500人(96%)が農民戸籍である。農村と言っても、郷内の森林被覆率は、80%で、標高が540m~780mと地形は決して平たんなものではない。日本の中山間地域のようなところである。山には杉、松、竹や茶木が多く、その下には斜面を利用して季節によってトウモロコシ畑や菜の花畑などが広がり、野菜や果樹が隙間を縫うように植えられている。最も低い部分では田んぼで米や小麦を作り、その水田にはアヒルが放し飼いにされている。そして自宅の裏には豚や鶏を飼っている。自分たちに必要なものを作り、食べる。余った分は売るか、親戚にあげる。時折くる移動販売で調味料などのわずかなものを買う。いわゆる自給自足の生活である。非常に豊かな暮らしである。
だが、当然、農村にも電気やテレビ、モーターバイクもあり、とりわけ子供の教育費に現金が必要になる。村には現金を得る仕事がないので多くの若者は遠く外省へと出稼ぎに出る。村に残っているのは、小学生と高齢者がほとんどである。
そんな農村に地震が起きた。地震の時、外に農作業に行っていた為、亡くなった人は少なかったが、郷の約1900戸(86%)の家屋が被害を受けた。住宅再建を余儀なくされた被災者の人々のほとんどが、多額なローンを組み、3年以内に返済しなくてはならない。これから返済に向けて頑張ろうとしているところに世界的な金融危機が起きた。「早く再建して早く出稼ぎに行って早く借金を返済しないと」と思っている矢先の出来事だった。この杞憂危機の影響で中国国内で約2000万人の失業者が出たと言われる。これまでのように簡単には仕事は見つからない。出稼ぎ人口の最も多い四川省の被災農村にも金融危機の暗い影を落としている。
そんな中でも少しずつ再建されていく自宅を前に被災者の人々はどこか嬉しそうにも見える。本来ならば、豊かであったはずの暮らしが、どこか不便で貧しいものと感じさせてしまう風潮。世界がこんな状況だからこそ四川の農村の被災者が、自らの暮らしにもっと自信を持ってもいいのではないかと思う。この「総合活動センター」はそのような暮らしを今一度、見つめなおす場になる事を願っている。
あれからもう1年。これまで寒々としていた被災農村に新たな春がやってきた。一面に咲き乱れる菜の花の黄色が、復興への希望を象徴しているように思えた。