中国青海省地震レポート No.2

地震発生から72時間が過ぎた。生存率が著しく低下すると言われるゴールデンタイムである。だが、一方で懸命の救助活動で妊婦が75時間ぶりにガレキの下から救出され、その2時間後に無事出産したという。
ニュースで流れている被災地の写真には赤茶の僧衣を身にまとったチベット僧たちが必死で救助活動を行う姿が映っている。四川省カンゼ州から来た約1000人の僧侶たちである。生存者の救助だけでなく、僧侶として亡くなった方を弔っているという。前回書いたように行政区画を超えた同じカム地方の人間(カムパ)だという意識から四川省から駆けつけたのだろう。
四川大地震から約2年、ずっとCODEの活動を支えてくれたSIM`S COZY GARDEN HOSTELのオーナー、Mさんからの情報によるとSIM`Sのチベット族のスタッフの女性Lさんは、以前1年ほど玉樹に住んでいた事もあり、友人の安否に涙を流したという。現在、彼女は自ら救援物資を集め、運んでくれるトラックを必死に探しているという。また同じく女性スタッフのQさん(チベット族)も成都に搬送されてくる重傷者を見舞い、お手伝いに病院へと出かけているという。いざという時に助け合い、支え合う民族性を存分に発揮している。同じチベット人(族)としてボランティアに奔走する彼ら、彼女らを応援していきたい。
(18日7時時点の被害状況)
死者:1484人
行方不明:312人
負傷者:12088人(うち1394人が重傷)

中国青海省地震レポート No.1

青海省玉樹チベット自治州において4月14日早朝、M7.1の大地震が起きた。
4月17日の時点で死者1144人、行方不明417人、負傷者11744人(うち重傷者1192人)。
中国ではすでに「青海玉樹4.14地震」と呼び始めている。玉樹州の97%がチベット人という民族色の濃いエリアである。「チベット」と一口に言っても、チベット人の旧住するエリアは現在の中国の行政区画のチベット自治区だけでなく、青海省、四川省、雲南省などの各チベット族自治州にまたがる。
青海省エリアはチベット人には「アムド」と呼ばれ、自らを「アムドパ(アムドの人)」と呼ぶ。一方、四川省西部からチベット自治区東部は「カム」と呼ばれ、「カムパ(カムの人)」と自称する。被災地、玉樹(ジェクンド)は、現在では青海省に属するが、元々は「カム」に属していたため多くの住民はカム方言を話す。アムドパなど同じチベット人でさえも言葉が通じない時もあるという。この玉樹は、すぐ南のカム地区、四川省カンゼ州やチベット自治区とも今でも結びつきが強い。やはり国や省の境を越えた民族圏、文化圏としてモノも観なくていけない。外省から来た救援隊の多くは、中国語が思うように通じない状況で苦労しているようだ。

【中国・青海省地震】天空の被災地、玉樹

中国・青海省地震の被害の状況が日々報じられていますが、当CODE災害援助市民センターは救援活動を開始したいと思います。現在は救助活動も難航し、一部報道では死者は1000人を超えていると報じています。一方、そんな中で一人、また一人と「もう一つのいのち」が救われています。地震直後の倒壊した光景を見るたびに、住まいの一部だけでも耐震にしておけば、もっと救命の可能性があがるのに・・・・、と悔しい思いをしながら見続けなければなりません。
CODEとしては、数字を中心としたニュースからはなかなか被災地の暮らしが見えにくい部分もありますが、玉樹県とはどのような所なのでしょうか。中国に詳しい、CODEスタッフのYさんから、可能な限りもうひとつの被災地の姿をお伝えします。あらためてこの被災地をよく知る
ことからはじめたいと思います。
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天空の被災地、玉樹
真っ青な空、荒涼とした青蔵高原を流れる一筋の清流、ディチュ(通天河)。その後、四川、雲南では「金沙江」と名を変え、そして「長江」(揚子江)の名で大陸を横断し、東シナ海へと注ぐ。6300kmのアジアの大河である。このディチュは、標高3680mの天空の町、玉樹県のすぐそばを流れる。
玉樹は、チベット語でジェクンドと呼ばれ、「王朝の遺跡」という意味を表す。その名の通り古くからチベット仏教の栄えた町である。町のシンボル、ジェグゴンパ(結古寺)は13世紀に創設されたサキャ派の大寺院。ジャナマニ(嘉納麻尼)は18世紀に創られた世界最大のマニ石塚(東西283m、南北100m)で、25億個の願いの書かれたマニ石が積まれ、ギネスブックにも掲載されている。玉樹周辺だけで約200の寺院がある。
四川省とチベット自治区との境の町、玉樹は交易の拠点としても古くから栄えていた。四川省から茶葉、青海省から塩がこの町に集まり、取引されていた。
周辺の草原には4000年以上前の人類の活動した形跡もある。夏には草原で競馬寨が開催され、きらびやかな衣装を身にまとったチベット族が一斉に集い、豪快に踊り、艶やかに歌う。玉樹草原を「歌舞の海」と伝えた旅人もいたという。
このような自然、民族、文化共に豊かな青海省玉樹が一瞬にして一面、土色の廃墟となった。町のシンボルのジェグゴンパ(結古寺)もこの地震によって倒壊し、僧侶の中にも死傷者が出ている。被災者の多くは、氷点下の空を見上げながら不安な夜を過ごしている。
四川大地震からまもなく2年、長江の源流近くで起きた玉樹地震。日本に伝わらなかった教えを残すチベット仏教サキャ派の聖地、玉樹。他人事ではない、隣国としてまさしく「一衣帯水」の思いである。
*「一衣帯水」:一つの帯のように細く長い川の意から派生して、細い川の隔たりがあるだけできわめて近い事のたとえ。
◎中国青海省玉樹チベット族自治州について
人口:玉樹州(人口約28万人)
    玉樹県(人口約9万人)
     結古鎮(人口約2万3000人)
民族:州の人口の97%がチベット族(青海省内で最もチベット族が集中)
面積:州面積19.8万?(青海省全体の1 /4)
生業:牧畜(半農半牧)
標高:平均4000m~5000m