【フィリピン台風30号】救援ニュース No.21

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フィリピン台風30号(Haiyan) 救援ニュース ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「貧困と災害」
フィリピン中部の島々で猛威を振るった台風Haiyan。28日のフィリピン国家災害対策本部の発表では、死者5560人、行方不明1757人に上っている。年に20ほどの台風が来襲するフィリピンでも、これほどの犠牲者を出したことは少ない。1991年にレイテ島オルモック市を襲った台風に伴う記録的な豪雨が洪水を発生させ、約8000人(正確な数字は不明。5000~6000とも言われる)が命を落とした。だが、この時の台風は決して今回のような大型のものではなく、洪水によって川の中州に住む貧困層の住民が多数亡くなった。これだけの大災害を引き起こした要因は、少数の大資本家によるココナッツやサトウキビなどプランテーション農園のために丘陵地帯の森林を伐採したことによると当時のフィリピンのメディアが報じている。
 今回、スタッフが訪れたセブ島北部の被災地は高級リゾート地もある一方で、貧しい人たちも多く暮らしているという。貧しい人たちが竹や木で自ら作った簡素な家屋は、この台風で跡形もなく吹き飛ばされている。また、そのような人たちの営む農業も収穫前で大きな被害を受けている。仕事を求めてセブの中心部へと出稼ぎに行く交通費さえも捻出できない人もいる。被害の甚大なレイテ島は貧困層が多い地域でで、バランガイ(地区、最小の行政単位)に届いた物資を取りにいく交通費や燃料さえもない被災者も少なくないという報道もある。また、レイテ島では多くの被災者がセブやマニラへと避難しているが、今もレイテ島に残っているのは、それさえできない貧しい人たちである。悲しいことに災害はいつも貧しい人たちを苦しめる。
近年、アジアでも経済成長が著しいフィリピンでは、富が極端に偏り、国民の1割にあたる1000万人以上が仕事を求め、海外に出稼ぎに出ており、人口の4割(約4000万人)が未だ1日2ドル以下で生活している。

(吉椿雅道)