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No.43「使い込まれたボート」

フィリピンの台風の被災地バンタヤン島に行ってきました。今回、CODEの漁業支援プロジェクトのセカンドステージとして、JICAの草の根技術協力事業を北陸学院大学と協働する事になり、そのプロジェクト締結に同行させていただきました。

2013年11月にフィリピン中部を襲った史上最大級の台風ヨランダ。CODEは、被災地のひとつであるセブ島北部とバンタヤン島の6つのバランガイ(最小行政単位)で漁業支援プロジェクトとして、ボートや漁網を提供しています。セブシティにあるNGOネットワークABAG ! Cetral Visayasの2つのNGO、SPFTC(Southern Partners Fair Trade Center)とFIDEC(Fisherfolk Development Center)をカウンターパートにプロジェクトを進めており、各バランガイに設立された住民組織(Association)がボートや漁具を管理し、2,3人の漁民たちによって共同利用されています。昨年よりボートの製作(船大工による手作業)、提供を開始し、来月にはすべてのバランガイにボートの提供が完了します。

昨年最も早くボート提供されたバンタヤン島のバランガイPOOCのAssociationの若きリーダー、ボニーは、「CODEのボートは毎日使っているから塗装がはがれたんだよ。今、エンジンのメンテナンス中だよ。」と語ってくれました。CODEのロゴの入った使い込ま
れたボートを見ると嬉しくなりますが、一方で台風後の被災漁民の置かれた状況は非常に厳しいものがあります。

もともと零細漁業で、わずかな収穫で何とかギリギリの生計を立てていた漁民たちは、台風によってボートや家屋に被害をもたらし、より生活は困窮しています。それに加え、気候変動の影響なのか、魚の獲りすぎによるものなのか、最近は漁に出ても、あまり収穫がなく、自分たちの自給の糧にさえ困る状況にあります。台風後に漁師が増えたことや支援機関によって被災地各所でボトの提供が増えた事も相まって、より収穫は減っているそうです。海岸線に住む人たちにとって漁は最も手っ取り早い生計手段であることがこの状況を生みだしているようです。そして政府は、今後、このバンタヤン島をエコツアーの拠点にしようという計画も立てています。そうなるとエコツアーのエリアは禁漁区になり、漁民の収穫はまた減る事になると危機感を感じています。

気候変動の影響下、海の環境と漁民の暮らし、どのようにバランスをとっていくのか、非常に難しい問題を突きつけられています。CODEは、北陸学院大学やJICA、そして地元の漁民と一緒にこの難題に向き合っていきたいと思います。引き続きご協力のほどよろしくお願いいたします。
(吉椿雅道)