ジャワ中部地震から6か月 (No 7)

家は壊れるもの!?
 「レポートNo.6」で「ジャワ伝統の家は壊れていない!」といいながら、ここで「家は壊れるもの!?」というのは誤解を受けるだろうか。しかし、こう言わざるを得ないのは以下の理由があるからだ。
 残念ながら阪神・淡路大震災でも、ジャワでも証明済みのことだが、地震で多くの方が亡くなる要因は、倒壊家屋にあることはいうまでもない。12年前に6,434名以上を亡くした私たちは、あれ以来国内外に向けて「耐震」を訴え続けている。しかし、先述した鈴木先生が書かれた資料を読み、またその論に基づいて現場を見ていると、建築家でもない素人の私がいうのは憚れるが、「家は壊れるもんだ!」という捉え方をする方が減災につながるのではないかと思うようになってきたからである。1999年の台湾地震の被災地でも、その論を裏付けるような建物に出会った。その家は140年前から建っており、この地震で大きな被害はなかった。釘を1本も使わない日本の在来工法とよく似た造りだった。大きく損傷したところは1ヶ所で、それは裏の土壁だった。鈴木先生の説明によると、「この壁が一手に地震のエネルギーを吸収し、この壁が壊れることで他の大きな損傷を免れたのでしょう」とおっしゃった。
 すでに紹介した「関善」やニアスの楕円形樽型住居も同じだが、大屋根を支えているのは架構式の軸組構造であり、地震の揺れによって一部分の横桟がはずれても、他で支えているから大きくは壊れないようだ。ニアスで見た架構式の一部が真新しく入れ替えられているのはそういうことだったんだ。そういえば、ヨーロッパの住居は、日頃からマメに手入れをするから100年以上も維持できるそうだ。日本の在来工法による木造住宅も、日頃から手入れをし、古くった部分などを取り替えておれば、「壊れても大丈夫!」となるのかも知れない。しかも地域で育った材料を使っているとますます安心感が伴う。
 来年から国土交通省は、「川は溢れるものだ!」という前提で防災計画を見直すそうだ。きっと住宅も同じだろう。建築基準に満たされた鉄筋とコンクリート使用であっても、絶対壊れないと云う保障はない。強固につくれば、つくるほど、もし壊れたときは被害が大きくなる。その時に「想定以上の地震だった。」では納得できないだろう。だから「家は壊れるものだ!」と向き合う方が結局減災につながるのではないだろうか。