神戸学院大学 教授浅野先生と同大学4回生高橋さんによるプロジェクト報告会 2009/02/13

聴講後の考察(CODE業務スタッフ 尾澤良平)
 今回の報告会はCODE版寺子屋としての小規模なものでありましたが、実際に現地に調査訪問された神戸学院大学の浅野教授と4回生の高橋さんが、わかりやすくプロジェクトの内容を伝えて下さったと思っています。詳細についてはここでは触れませんが簡略的にいいます。
 ジャワ島中部地震の被災地においては水の確保という懸念が常々あり、その潜在的な地域の脆弱性が震災をきっかけに顕在化していました。そのような情況の中で、被災地住民は水の確保に関する支援をCODEに申し出、CODEはこれに応えることを決めました。
プロジェクトの流れは、
・まずCODEの資金援助を基に住民の手により水道管を敷設し、そして水道組合を作ります。
・その組合が、安価な水を得られたことによって発生する余剰金の一部をマネージメントしていき、その利益を配当していきます。
このように一つのマイクロクレジットの形を呈するような復興支援プロジェクトです。
 私自身は一応事務局・実施側の立場でありますから、プロジェクトの内容については大方理解しているわけです。しかし、失礼ながら意外にも、今回の報告会では新しい発見や視点を見つけることができました。現地に足を踏み入れた方の感覚、アカデミックな視点、若い学生のセンス、これらの要素を含んだ上でのプロジェクトの計画、実行、フィードバックが非常に大切であると痛感しました。
 具体的には、浅野先生がおっしゃった、
・「防災マネージメントサイクルの観点」や、
・「サスティナブルな社会を目指していく1つのモデルになりはしないか、というこれからの前向きな展望」
です。
 浅野先生が強調している言葉の一つにSeamless Assistanceというものがありました。つまり継ぎ目の無い支援、継続的な支援ということです。減災や防災を考えた時に、災害発生前や発生後の~日後、~年後と多層なレベルにおいてやるべきことがあるわけです。しかし、それらの層には、実質的には層といわれるような区切りがあるべきではなく、緊急から復興・復旧ステージまで幅広い視野を持って対応していく必要があります。水道プロジェクトは単なるインフラ支援ではありません。そこから得られる利益をどのように運用し再分配していくか。復興に関わるものは皆そうでしょうが、プロジェクトに対する姿勢には本当に根気強いものが求められます。その上でこのモデルがひとつの復興支援の体系的な評価を持つことができれば、さらに他地域にも広げることができます。もうひとつの社会の生成といったところでしょうか。援助対象地域において防災を考えたとき、水の確保というものは欠くことができません。防災マネージメントサイクルの中で水道プロジェクトはどのように位置づけられるのか、どこまで継続したマネージメントを実行することができるか。この点について浅野先生はとても大きな期待をしておられました。
 もうひとつ強調されていたことはサスティナビリティ、つまり持続可能な社会、循環型社会を目指して、ということです。今回のプロジェクトは安全な水の確保が中軸となったものです。水道敷設支援となるとインフラ強化、開発に特化しているイメージを持つことも多いと思います。実際、防災と開発に明確なラインを引くことは極めて難しいです。しかし、先生はこのプロジェクトにはサスティナビリティを追求していけるような可能性があることを理由に、単に防災や開発の枠組みに縛られるのではなく、さまざまな分野を横断的に捉え、水を中心に考えた新しい環境モデルができることも示唆していました。ナマズの養殖やアヒルの飼育を始めたり、循環型営農に力を入れたりと、明からに村には変化が訪れています。お二人の話は、家畜の糞をナマズの餌に使うようになったことなど、かなり具体的なところまで行きわたっていました。
 もちろん、水道を敷設しただけで、自然に情況が良くなっていくわけではありません。このプロジェクトは仮にもまだスタート地点であり、ひとつのモデルであるわけです。CODEとしてはもう一歩踏み込んで、農業を中心とした水の供給源を得る必要があると考えています。しかもそれは、今回の報告会でもあったように、自然との共生のなかで見つけていく必要があると思います。そして自立した農業生産、自立した水資源の確保のためには、地域のコミュニティ力が何よりも大切であることは、本プロジェクトの現地カウンターパートであるエコプロワット教授も強く述べているところです。よって、今回の支援対象地域には長期的な視点を持って臨み、コミュニティ自立復興モデルとして活動を進めていく必要があると思います。
 ところで、今回の報告のほとんどは神戸学院大学の学生が行ってくれました。形式的なプロジェクトの内容はともかく、具体的な現地の生の情況はやはり学生の感覚を持って伝えてくれたほうがわかりやすいと思いました。ナマズの養殖ってどんなものであるか、どんなナマズなのか、現地の人は何を食べているのか、村の雰囲気はどのような感じか、このような言葉では伝えにくい、しかし重要な判断材料になるリアルな情況をわかりやすく伝えてくれました。これも1つ、学生が現地にいって調査するに当たっての大きな利点であるなと、話を聞きながら考えたりもしていました。
 本来であればプロジェクトの報告会やモニターなどはCODE自らが行うべきなのでしょうが、浅野先生や学生がフォローアップして下さるということは、本当に感謝すべきことです。このようなネットワークを最大限生かし、これから事務局側としてもプロジェクトの進行により力を入れていきたいと、改めて感じた次第です。
以上