つぶやきレポート「インドネシア被災地の今」 Scene.21
ジャワに息づく伝統文化のひとつに「陶芸」がある。ジョクジャカルタ特産の赤土を使って作る陶器や土器は、国内外からも高く評価され、日本やヨーロッパから買い付けに来る客もいたという。
【写真】陶芸の町、カソガンの惨状 |
【写真】地場産業である「陶器」 |
陶芸の町で知られるバントゥル県、カソガン。ジョクジャカルタ市の南西に位置するこの町では、人口2900世帯のうち約1割の約300世帯が陶芸にたずさわるという。本来、素朴な作風のジャワ陶器にヒンドゥー教の神話をモチーフにした芸術的要素を加えて高く評価され、70年代以降発展してきた。それにともなって多くの人が近郊から働きに来るようになり、陶芸の町として有名になったという。
このカソガンは被害の大きい活断層エリアからは離れているにもかかわらず、多くの被害を受けた。町を通る道路沿いでは、倒壊した家屋の中に割れた陶器の破片が散らばる風景が広がる。そして工房、ショップのオーナや職人と思われる被災者の人々が、ガレキの中からまだ「売り物」として使える物を分別していた。
倒壊したショップ兼工房(70年代に建てた)のオーナーであるティティさん(30)も売り物としてまだ使える壺や花瓶などの陶器などを倒壊した店から取り出していた。8人の家族の中では軽傷者のみで、このRT(隣組)では死者は出なかったが、隣のRTでは4人ほど亡くなっているそうだ。今は、POSKOから食料をもらいながら敷地内に張ったテントで暮らしている。「陶器はね、ここで作って、ここで売っていたのよ。マレーシア、オランダあたりからも買い付けに来てたわよ。」
今後の見通しの立っていないティティさんは、同業者の協同組合のようなものはないので自分達で何とかするしかないと言う。「親戚同士で家を建て直して暮らすわ。。。」
ティティさんと話していると実は、このカソガンの町の陶器の多くは農村部のパンジャングルジョーという被害のひどいエリアから来ていることが分かった。観光地ジョクジャカルタの地場産業のひとつでもある「陶器」。それを支えるのはカソガンのような近郊の町である。そしてそれを支えているのは農村部のパンジャングルジョーである。
被災地はこうやってつながっている。。。