【中国四川省地震救援ニュース】No.132 第3回日中NGOボランティア研修交流事業の感想 No.3

【自分と向き合う 神戸学院大学4回生 今中 麻里愛】

 私がこの研修で目標としてきたことは2つあります。
 1つ目は「自分と向き合う  こと」です。私は阪神・淡路大震災の日に生まれたので、たくさんの方に助けていただきました。なので“今度は私が助ける番だ”という想いを持っていたのですが、被災現場を目にすることが怖く、いつも被災地へ行くことから逃げていました。今回、四川研修のお話を頂いた時も気持ちでは「行きたいです」と言ったものの、頭で考えるとだんだんと怖くなり、パスポートを取る直前まで悩んでいました。このように被災地と向き合う勇気がなく、いつも引いてしまう自分と向き合い、変えていきたいと思いこの研修に参加しました。研修を終えて一番感じていることは、現場に行くことの大切さです。「私なんかに何もできない」などと考える前に、現場に行って被災した方と直接話をすること、被災地を直接見るということに意味があると感じました。被災地へ行くとこから逃げていた私は、被災地を写真でしか知りませんでした。実際に北川県城や学校の地震遺跡を目にしたときはやはり恐怖を感じましたが、同時に違和感がありました。自分が歩いている道は新たに舗装され妙に整っており、建物の周りには地震なんてなかったかのように草木が生えており、8年という時間の流れを感じました。それに対し学校や建物は8年前の地震が起こったその瞬間から時が止まっており、この違和感が恐怖に変わりました。遺跡として残すために今にも崩れそうな建物に新たに外側から柱を加え補強されている光景が信じられず、補強してまでこの建物を残す意味や、この遺跡は何を伝えようとしているのかが分かりませんでした。レポートを書いている今でも自分なりの答えは見つけられていません。しかしこの辛さは、被災地から逃げていた自分と向き合い被災地を目にしたからこそ感じることができたと思うので、最後まで向き合い必ず答えを見つけ出します。

 2つ目は「自分勝手に抱いている偏見や誤解をなくすこと」です。私は海外へ行ったことがなかったので海外へ対するイメージはテレビや新聞などメディアの情報のみでした。しかしCODEの食と国際協力に何度か参加しているうちに、意識はしていなくても自分勝手にこの国はこうだと頭の中で決め付けていることに気が付きました。中国も反日のイメージや日中関係の問題などからあまり良い印象を持っていませんでしたが、実際に中国へ行って現地の人と交流したことで自分は間違っていたのだと気付き情けなくなりました。一番印象に残っているのはチャン族の村でちょう楼を案内して下さったお父さんが言った「日本人は家族だよ」という言葉です。突然訪れた私たちを暖かく迎え入れ、ちょう楼の仕組みや歴史、建築の仕方などをとても嬉しそうに話してくれました。恐らく今までちょう楼について何度も何度も同じ説明をしているはずですが、説明している姿はどこか誇らしげで自分たちの歴史や技術を見て欲しいとさえ感じました。その他にも私たちのために予定を変更してまで来てくださった方や光明村での交流会で人の暖かさを強く感じました。この暖かさや信頼関係は地震直後からずっと被災者に寄り添っている吉椿さんや昨年訪れた先輩たちによって積み重なり、築かれたもので、今回私たちが交流したことによって、また積み重なり次に繋がっていくのかと思うと、この輪の一部になれたことがとても誇らしいです。
また現地の社会企業「壁虎漫歩」の取り組みは画期的で気付かされることが多かったです。教材を提供するのではなく自分たちが学校へ行って教えるという仕組みで、教えている人たちも20代の若い方が多く、防災意識の高さを感じました。若いスタッフは皆、仕事に“達成感”があると語っており、同じ年代の方々が活躍している姿に刺激を受けました。

最後に、今回の研修を受けていなければずっと自分と向き合うことから逃げていたと思います。今考えると、被災地を見ることが怖いから行けないというより、被災地を見た自分と向き合い乗り越えることに恐れていました。恐れて行かなければ、怖い思いはしなくて良いかもしれませんが、何も学ぶことはできないし成長もできません。研修中に辛い思いも怖い思いもありましたが、それ以上に得たことの方が多く、行けたことが自信に繋がり次へのステップとなりました。未来基金に協力をしてくださった方々、自分と向き合うきっかけを作って下さったCODEの方々、私たちを迎え入れて下さった現地の方々などたくさんの方の支えがあり研修に参加することができました。本当にありがとうございました。この研修で終わるのではなく、研修によって得たこと、感じたことを伝えていき次の輪へと繋げていきたいです。

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 帰国して昨年のインターンシップの期間のノートを見ました。一番大きく書いてあったのは吉椿さんが言った「人間はすぐ隣の人は気になるけど遠い人は気にならない。その輪が広がるともっと良い国になる」という言葉でした。当時とても共感し強調してノートに書いていたのですが、今回の研修でこの言葉が腑に落ちました。最初の研修で言っていたように日本の地震に全く興味のなかった村の人たちが四川地震を経験したことによって東北の支援をしてくれたという支え合いの連鎖が目に見えてわかりました。今日、吉椿さんのお話を聞いて、行動一つやちょっとした心遣いが積み重なり良い関係を築いていくということを学び、研修期間の吉椿さんの行動を改めて考えました。光明村に行った時の出会う人出会う人の名前を自分から積極的に呼び交流している姿がとても印象的でした。光明村の人々もとても嬉しそうで、この小さな積み重ねが、また次に来た時に繋がっていくのだと感じました。これからもたくさんのことを吉椿さんの背中から学んでいこうと思っています。
あと、上海のミーティングで泣いてしまったのは、思っていたことや溜めていた感情を吐き出せたというのもあったのですが、振り返っているうちに自分と向き合うことはできたが、引いてしまう自分を変えられなかった、被災地と向き合った結果、自分が感じた違和感の答えを見つけることができなかったということに気付き悔しくなりました。

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チャン族の村(1300年)を訪問                                         チャン族のちょう楼で

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地震遺跡で黙祷

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