スリランカより愛をこめて-クキさんの防災共育レポート・番外編

クキさんより、UNCRD(国連地域センター)防災計画兵庫事務所がタララ村で行うWSの準備の様子が送られてきました。CODEのプロジェクトではありませんが、プラトナチャイルドクラブの子どもたちの奮闘ぶりが描かれていますので、「クキさんの防災共育レポート・番外編」としてお届けします。少し長いですが読んでいただけたら幸いです。
なお、このUNCRDのWSは元CODEスタッフだった斉藤容子さんが担当していますので、その縁でタララ村で実施することになったものです。
—————-
UNCRDのWSを目の前に控え、停電との戦いの中、慌しい日々を送っています。今回のワークショップのプログラムの中に、プラトナチャイルドクラブの子どもメンバーらのドラマがあります。このドラマの内容は、プラトナボランティアリーダの一人であるナデュンが脚本を手がけました。ドラマの内容を紹介したいと思います。
 ある外国人の女性が避難所のTSUNAMI被災者と話し合いの場を持ち、TSUNAMIに関する質問をする。質問内容は、TSUNAMIが襲ってきた時に、どのような行動を起こしたのかなど、様々な質問を投げかける。被災者の中の一人が、彼女に向かって叫ぶ、「もう2年以上もTSUNAMI、TSUNAMIとウンザリしている!もっと他の現在直面している問題などを話しあうべきだ!」と。外国人の女性も彼の鎮痛な叫びを理解し気分を変えるために、皆で歌を歌う。歌を歌っている間にある被災者が呼吸困難に陥いる。すぐに、FISTAIDの処置を知っているある被災者を呼びに行く。彼が皆に処置の仕方を教えながら患者を処置する。
 更に話し合いが続く、災害(緊急事態)に備えて日ごろから何を準備しておいたらよいのか、避難の仕方など。そんな話し合いの、ある被災者が、「津波が起きたあの時期に人々の態度が極端に二つに分かれていた。ある者は、この災害を利用して、日ごろから恨みのある者を見殺しにしていたり、(溺れて助けを求めていても、見て見ぬふりをしていた)ある者は、息を引き取りそうになっている人の身に付けている貴金属を盗んだりしていた。しかしある者は、懸命に人命救助に努めていたり、隣人のために可能な限りの手助けをしていたりした。」と言い、話し合いは更に続く。
 コミュニティの結束力があらゆる災害(暮らしの中の問題などに対しても)に対しての防災となる。コミュニティの結束力を強めるには、日ごろからの暮らしのあり方を再検討し、直すべきところは再建しなおし、継続するところはよりよいものへ変えていく努力が大切であることを、話し合いの結論としてドラマは終盤を迎える。
 そして、観客に向かって歌に代えて約束をする。手と手を取りあおう♪ 助け合おう♪ 一緒に歩んでいこう♪ 希望を持とうTSUNAMIなんて怖くない♪ TSUNAMIは僕たちの心をつぶすことなんてできないんだ♪ TSUNAMIは僕たちのコミュニティをつぶすことなんてできないんだ♪さぁ、みんな起きて♪立ち上がろう♪ 私たちの知恵(経験)を広げようよ♪そして私たちの人生を光らそう!!
 今回のWSでは、このドラマを通して、タララ住民が自分たちが今後この村をあらゆる災害から守るには何が大切なのかを確認してもらい、更に何が自分たちに出来るのか(行動計画)を作成してもらうことになっている。その行動計画を元に、台本を作り、新たなドラマを作成する予定である。
 このドラマに関してのエピソードを紹介したいと思う。子どもボランティアリーダの一人である、ロッシャンという男の子がいる。彼は最後の最後までかなくなにドラマ出演を拒んでいた。他のリーダらも、「プルワン、プルワン、トライしてみろ!」と何度も応援していたが、それでも「やったことないから出来ない」と断り続けていたのです。このドラマの他にもプラトナ・チャリルドクラブの活動を紹介するプレゼンテーションがある。そのプレゼンテーションを各ボランティアリーダらが担当活動を決めて説明するというのだが、これもロッシャンは出来ないと言って断り続けていた。「僕は頭悪いから、こんなのできない」と言うのである。どうしようかと頭を悩ませていたところ、大親友のナデューンがある日、ロッシャンを自宅に呼びロッシャンに言ったらしいのです。ロッシャンはいつも自分が頭が悪いということを利用して何もトライしようとしない。ロッシャンは頭が悪いのじゃなくて、ただ怖いだけだ。間違って笑われたらどうしようって、、心配するな、僕が側についているから、誰も笑ったりしない。心配するな。笑ったやつがいるなら、そいつが馬鹿なんだよ。ロッシャンではない」と。
 その後、勇気を奮ってロッシャンはドラマの練習に参加した。すると、どうであろう、水をえた魚のように、生き生きと、本当に楽しげに演技していた彼の姿は、皆を本当に驚かせた。ロッシャン自身、驚いていた。その後、彼は自ら進んでドラマの練習に励んでいる。又、ドラマの練習が少なすぎると言いながら、自ら皆を呼び練習に精を出している。
 「彼らが欲するものが本当に彼らの必要とするものではない」
彼らの能力を引っ張りだす「エンパワーメント」とは、個人個人が他者を思いやる気持ちから生まれてくるものなのかもしれない。