~漁業復興支援プロジェクト~ 第5次現地レポート最終

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【写真】漁業組合員との話し会いの様子(スリランカ、7月8日)

7月 スリランカ
 津波で大きな被害を被った漁師達が1日でも早く仕事を再開することは、被災地の復興における優先課題の1つです。もともと漁業労働者は社会的に虐げられている人々が多く、津波後その状況はますます悪化しました。今日は、スリランカ南部海岸の、クダワラという漁村(マータラから東海岸へ30分程)の漁業組合の人と話をしました。村民のほとんどが漁業従事者であること、海岸から100mに設けられたバッファゾーンによりコミュニティが危機に瀕していること、津波で多くの漁民が船を失い暮らしの復興が見えないこと等の説明を受けました。クダワラには1200所帯(約8000人)が住んでいて、津波で450所帯が全壊し、200人が亡くなっています。漁業組合のリーダーのジャヤンタさんはこの地域で貧しく(大型船ではなく)小規模漁業に携わる労働者を組織して、漁業組合を設立しました。


 まず組合員約50人と話をしてニーズを聞いた後で、その代表者ら6人と具体的にどうするか話し合いました。漁業組合員によると、彼らのような小規模漁業労働者にはこれまで支援がまわらなかったと言います。政府の支援は漁獲量を増やすために大型船や中型船の支援に偏りがちであるそうです。国際NGO等の支援は一般的に多くの漁師に小型のボートを提供するが、ただ提供するだけなので、住民は次に網や釣り針等が提供されるのを待っているという状態です。
 ジャヤンタさんが設立した漁業組合には150人の組合員がいます。この中でボートを共有しながら(ボートはCODEが支援し、協同組合の持ち物になる)、売り上げの3分の1を協同組合に、3分の2を漁師に配分する予定です。さらにボートには限られた数の漁師しか乗らないので、その他の組合員は毎月小さい額のお金を協同組合に寄付します。そして、協同組合はそのお金を集めて、組合員と話し合いながら貯まったお金をどのように使うか決めていきます。具体的に提案された使い道は、新たなボートを買う、コミュニティの図書館のために英語の辞書を購入する、釣用のランプや漁具を組合員にマイクロクレジットの手法で提供する等です。協同組合にはルールを設け、経験のあるジャヤンタさんが組合員を組織し、組合員の意見をくみ取りながら協議し決定したことを委員会に提案します。委員会は代表、副代表、書記、ジャヤンタさんから成り、ルールに沿って物事を決定します。
 このようなことが目の前で住民側から提案されたことについて、とても感銘を受けました。協同組合についてこちらが提案しようと思っていましたが、じつは協同組合という概念はこのコミュニティに深く根付いているものでありました。そのことを組合員に伝えると、協同組合の考えは仏教(スリランカの6割以上が仏教徒)の考えと深く結びついているそうです。コミュニティの人々は昔から少しずつお金を出し合いながらお寺を守ってきたという。お寺はそのコミュニティの人々の共有する財産なので、共同で管理していくという考え方は、協同組合で少しずつお金を出して運営していくことと似ていると組合員は言いました。実際に協同組合だけが人々を助けると考えていた時代もあったと言っていました。1972年に協同組合の法律ができたが、現在は漁業協同組合は政府から補助金を得るための道具となっていたそうです。
 野崎氏によればコミュニティづくりで大切なのは、発明(新しい方法の押しつけ)ではなく発見(気づき)であると言われました。何か新しい方法を作り出したり、外部の人が新しいものを持って来るのではなく(もちろん情報や事例を提供することは大切)、その地域の文化や歴史に根付いた方法があることを認識し、その方法を住民が自ら発見し、誇りをもって行動できるようにサポートすることが大切です。残念ながら今回は半日しか滞在することができませんでしたが、これから住民の間で何回も何回も話し合うことが必要です。今日、初めて漁業組合の方と会って、漁業組合の設立やおおまかなルールが決定しましたが、これは本当にスタートでこれからは協議したり、調整したりしながら組合員自身が協同組合を運営したり管理したりしていくことになります。日本に帰って彼ら自身による復興の過程をこれからも見守り続けていきたいです。

事務局スタッフ 飯塚明子

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