「近くの山の木で家を建てる運動宣言」?
日本に標記のような運動があるのをご存じでしょうか?地域の資源を使って、日本の伝統的な在来工法による民家にこだわっている研究者や大工さんたちがおられる。この運動の呼びかけ人のお一人が、私が尊敬する鈴木有先生という秋田工業大学名誉教授である。先生は、大阪のある居酒屋のミニコミ誌で「(阪神・淡路大震災を機に)伝統民家は本来優れた耐震性能を持っているのではないか。これを契機に、私は襟を正して日本の民家に向き合った。そして伝統工法の奥深い仕組みに気がついた。」と書かれている。
今、CODEが被災地ボトクンチェン集落で再建して来た住まいも、同じ思想の元で建てられてきた。建築家のエコ・プラウォトさんが、師匠である故ロモ・マングンさんから受け継いだ住まいに対する思想も同じだ。地域の資源を使って家を建てるということは、住まいがもはや個人の財産のみならず、地域にとっての財産であるということが云える。しかも、ここジャワの場合は”ゴトンロヨン”(相互扶助のしくみ)で地域のみんなが建てるのだからなおさらだ。そして(日本で云うところの)棟上げ式には、安全を祈願してみんなで祝う。女性たちは、働き手のためにご馳走をつくる。きっと岐阜県にある「合掌づくりの家」を建てる”結”も同じようなしくみだろうか。
日本の法律では、災害後の住宅再建に対して未だに「個人の資産に公的資金は投入しない。」となっているが、こうして住まいが地域の財産だと認識できれば、公的資金を投入していいのではないだろうか。せめて「近くの山の木で建てた家」には公的資金を投入して欲しいものだ。何故なら、荒廃した森林の保全にもつながるからだ。そう言えば、新潟中越地震で倒壊家屋が予想以上に少なかったのは、もともとこの地が豪雪地帯であるためしっかりした家が多かったということなのだが、実は使用していた木材が、この厳寒の厳しい中で育った材木だからこそ”しなやか”であったということはあまり知られていない。