2008年5月12日14時28分、M8.0の巨大地震が中国四川省を襲った。死者、行方不明者約8万7000名の命が犠牲となった。
四川省政府は2012年2月に復興宣言を発表した。1兆7000億元(21兆6000億円)の復興資金を投じて、540万世帯の家屋再建と補修、3000校の学校の再建、1360か所の医療施設の建設を50万キロ平米という日本の国土面積(37万キロ平米)を超える広大な被災地の237の市県で完了させた。震災からわずか3年9か月でこれらの復興を遂げたことになる。成長目覚ましい中国の勢いを象徴するかのようなスピードと大規模な復興である。先日9日には、被害の最も大きかった北川県でも「5.12ブン川特大地震記念館」も正式にオープンした。
3月に四川を訪れた際に、震源地であるブン川県の映秀鎮に行った。再建された新しい映秀鎮では、倒壊した学校や共同墓地、博物館などの地震関連施設が整備されている。連日、たくさんの観光客が訪れており、それをあてにした被災住民たちは再建された住宅の1階部分でレストランやお土産物屋を経営し、2階に居住スペースと暮らしている。だが、皆が十分に利益を上げて生活を再建できている訳ではない。ヤク(毛の長い牛)の角で作った櫛などの工芸品を製作、販売するAさん(50代女性)は、「観光客はたくさん来るけど、皆すぐに通り過ぎていくだけだよ。」と語っていた。
映秀鎮の地震博物館である「5.12ブン川特大地震震中記念館」も長い間、建設中であったが、いよいよ開館した。広大な敷地に作られたこの記念館は、1階には政府による救援活動と功績の記録の写真や物品が展示されている。2階はブン川県、理県、茂県など被災地の再建された町や住宅の写真展示が延々と続き、防災・減災と書かれたコーナーは、避難広場や土砂ダム、避難訓練など数枚の写真のみで莫大な資金を投じて建設した割にはあまりにも乏しい展示と言わざるを得ない。だが、3階部分の地震の発生メカニズム、耐震工法のミニチュア模型、家庭で出来る防災、地震後の10分行動マニュアル、子供向けにクイズで災害を学ぶコーナーなどの展示は、明らかに神戸の「人と防災未来センター」などの展示を参考にし、今後の防災・減災を意識して設けられたことが分かる。だが、多くの観光客がこのコーナーを素通りしていく姿に伝える事の難しさを感じた。あの未曽有の大震災から5年、4月にはすぐ近くのの雅安市でも地震被害が発生した。被災住民はもちろん、観光客に防災・減災意識を浸透させるにはまだまだ時間がかかりそうだ。
(吉椿雅道)
No.3-1 四川省大地震から5年 ~四川大地震5周年レポート1~
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