一昨日、ウクライナのゼレンスキー大統領が日本の国会議員向けに演説をされた。演説終了後、直ちに岸田総理はウクライナに対する人道支援の追加を検討すると表明した。これまでも、同大統領は米国・英国・ドイツ・カナダ・イスラエルで演説をしてきた。各々の国のリーダーの名言や歴史を交え話す話術は、好感を持たれている。日本では「侵略の津波」という表現をし、連帯を求めた。確かに、歴史に残る演説でしょう。23日のフランスの国会では、「自由、平等、博愛に対する戦争だ」とフランス革命以来の国家理念を引き合いに出して支援を訴えたとのこと。評価は絶大だ。
しかし 、しかし、何故かもやもやしていて諸手を挙げて絶賛できない。確かに日に日にウクライナに対する国際社会からの連帯の声は拡がっている。その連帯の輪に水を差すつもりもない。昨日24日は、北大西洋条約機構(NATO)およびG7と関係国の首脳会議が開かれた。テーマは「対ロシアに対する制裁強化」の確認だった。でも、ロシア・ウクライナの双方に多大な被害をもたらした戦争は、もうすでに1ヶ月も続いてきた。今、急がなければならないのは、何とかして1ヶ月も続いた戦争を止めさせなければならないのであって、あくまでも結果的に“煽る”ことになる連帯では意味がない。
昨日(3月24日)の朝日新聞「私の視点」に投稿された千田悦子さん(元国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)職員)のメッセージに共感した。「世界が存続の危機に立つ今、唯一の被爆国であり、恒久平和を希求して戦争放棄した国民として、日本人が新しい戦争放棄というパラダイムを世界に提案すべきではないか」と提案されている。
先日、7千人の犠牲者を出した神戸大空襲から77年が経った日に、当時の惨状を聴覚障害の神戸生まれである山村賢二さん(90歳)が手話で語った。
「砲撃を受けるウクライナの街で地下壕に逃げ込む人たちを報道で見ると、77年前の自分と重なる。命を大事にして、一刻も早く戦争をやめてほしい」(神戸新聞2020・3・18)と。私はこの願いをしっかりと受け止めたい。
また同じ神戸市出身で、ソ連崩壊直前の1991年9月からウクライナ・キエフで暮らす江川さんの「怖いけど 逃げられない」という率直なことばが紹介された(毎日新聞2022・3・24)。江川さんは、2014年のクリミア戦争があったので「いつものように東部での戦闘が活発化するのだろうという程度にしか思っていなかった」と。そしてウクライナ人の妻は「どうして私がウクライナから逃げないといけないのか、ここは私の家」と。江川さんは「妻を残して逃げるわけにはいかない。極限状態になるとどうなるかわからないけれど、今のところ、家族がバラバラになるより、一緒の方が生き残れる確率があるのではないかと考えたんです」「(妻について)やっと手にした独立国を手放したくないないんです」と代弁されたそうだ。なんともやるせない・・・・。
でもこれだけは声を大にして言える。「とにかく生きよう!」
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)
*2022年3月23日に神戸市外国語大学が同大のロシア学科で学ぶ在校生の皆さん、卒業生そして新入生の皆さんに素晴らしいメッセージを発しました。こちらから是非、ご覧になって下さい。