月別アーカイブ: 2022年10月

憎しみの連鎖ではなく、支え合いの連鎖を!!-NO.30

露軍とウクライナ軍との戦闘が激しくなるにつれ、プーチン大統領の蛮行が目に余る。この出口の見えない“戦争”を解決するには、「ウクライナが徹底して戦い、勝つしかないのだ!」というような声も少なくはない。

しかし、私は前号で書いた「殺される側」にも、「殺す側にも」立ってはならないと思う。それは「最後の一人まで」という、27年前の阪神・淡路大震災で刻まれたメッセージがあるからだ。
当時ボランティアは、人間なら誰にもある“心根”に押されて、「何か役に立たないか」と目の前に現れた被災者に寄り添い、救援活動に取りくんだ。このメッセージは、その中から紡ぎ出されたメッセージである。

この「最後の一人まで」を、国際法学者として新聞紙上で解説されたのがCODEの前代表理事芹田健太郎(当時神戸大大学院国際協力研究科教授・現神戸大学名誉教授)だ。(*前号でも一部紹介し、全文のURLも貼り付けましたので、FBを見ることができる方は、是非全文を参照して下されば光栄です。)
芹田教授は神戸新聞客員論説委員として1997年12月27日付け神戸新聞―21世紀への針路―で、まず「多数決原理から考えても多数者の幸福は実現できる。だから、立法原理としては少数者の幸福にこそ目を向けるべきである」とし、その最後の一人の代弁者となるのがNGOなのだとも、普段私たちに説いてきた。
同論説では、「(最後の一人の生存権として)教育刑主義をとったことで知られる東京帝大教授牧野英一に『最後の一人の生存権』という論考がある」「牧野は、最後の一人の生存権を主張する根拠に、最後の一人まで戦うことを国民的理想とした第一次世界大戦を思い、最後の一人の生存権を保全することによってその最後の一人までを必要なら終わらせることができることを挙げている」。しかし、芹田教授は「(牧野は)つまり、最後の一人の生存権の原理は、国家をさらに強固にし、さらに偉大にし、さらに尊厳ならしめる原理と位置づけているのである。しかし、牧野は時代に抗することができなかったと言うべきであろう。我々の経験では、最後の一人の生存権の根拠は我々の人間としてのつながりにこそある。今こそ、立法・行政原理としては、最大多数の最大幸福から脱却し、少数者の幸福の徹底した重視へと転換しなければならないであろう」と締めくくっている。

CODEが、神戸に避難して来られたウクライナの一人ひとりに寄り添い、「MOTTAINAIやさい便」を届けている根底には、この思想が原点にある。

◎追記:芹田教授は神戸大学大学院国際協力研究科の最終講義で次のようにも表現しています。(2004年1月28日)「牧野は最後の一人の生存権を主張する根拠に、最後の一人まで戦うことを国民的理想とした第一次世界大戦を思い、最後の一人の生存権を保全することによって、その最後の一人まで必要なら戦わせることができることを挙げていました。時代に生きた牧野の限界です」
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)

●CODEが、ウクライナおよびロシアから神戸に避難している方々に、「MOTTAINAIやさい便」を届けています。この「MOTTAINAIやさい便」も、無数のちいさな橋をかける活動です。是非、応援して下さい。(9月2日づけ神戸新聞朝刊にCODEが行っているウクライナ支援の様子が掲載されています。)

●保育園に2歳の男の子を通わせているウクライナの一人の母親が、送迎のために、電動自転車がありませんか?と願っています。もし、提供できる電動自転車があれば、村井まで連絡してください。ただし、運搬の都合がありますので、勝手ながら神戸市内の方に限りますが、よろしくお願いします。

憎しみの連鎖ではなく、支え合いの連鎖を!!-NO.29

2022年10月22日付け毎日新聞に執筆されている伊藤智永さんの「土記」には、「(ロシア・ウクライナ)それぞれ世論の大勢は結束し、志願兵もいるようだ。一方で、逃げ出したい人も少なくない。『攻撃する』『守る』『解放する』『奪還する』。国が戦争を言い表わす動詞はいろいろだが、個々人が迎える結末は、兵士であれば、殺すか、殺されるか。非戦闘員でも国内に残れば、自分と家族は、死ぬか、生き延びるか。戦争が一人一人に突きつける意味は結局、『自分は祖国のために死ねるか』の問いに極まる」とある。

私は、本レポートのNO6,NO7で「殺す側に立つな!」と叫んだ。先述した伊藤智永さんのいう、「自分は祖国のために死ねるか」という問いには、「NO!」と答えたい。「殺す側に立つな!」ということは、「殺される側に立つ」ことの裏表の関係だろう。でも「お前は殺される側に立てるか?」と問われたら、正直「YES!」という自信はない。ただ、この問いには「誰に殺されるのか?」ということ、とも深く関連する。

本レポートの最初の頃にも書いたが、27年前の阪神・淡路大震災の直後、被災地のあちらこちらで「生きていてよかった!」「人間は一人で生きて行けない!」と涙しながら、つぶやいていたことを幾度となく聞いてきた。その都度、「人間しとってよかった!」と感動したことを覚えている。今、そのことを思い出すと、やはり「生きていてこそ」だと痛感する。

報道によると、プーチン大統領による部分的動員令で戦地に駆り出された兵士が、「(配属前の)訓練はないと告げられた」「ヘルソンに派遣される。砲撃経験も、その知識もない」「穴が開き、テープで補修された防弾チョッキ」「まともに寝るところもない」「持たされたのは支給された錆びだらけの自動銃だけだ」などとSNSに投稿したそうだ。まるで使い捨てのような形で「かけがえのない尊い人の命が扱われていいのだろうか?」、このような形で「殺される側に立たされていいのだろうか?」

CODEは27年前の震災がきっかけに誕生したが、この間被災地で大切にしてきたことは、「最後の一人まで救う」というメッセージだ。その背景には、CODEの前代表理事芹田健太郎(CODE名誉理事)は、神戸新聞客員論説委員として、同紙「21世紀への針路」で、「3年前の、あの1月17日、身を切る寒い闇の中の救出作業、その後の壊れた建物の中からの救出でも、最後の一人が助け出されるまで、我々は必死に祈り、助け出されて安堵した。その最後の一人の重さである」(1997年12月27日神戸新聞)と書かれたことが、その後の私たちの“羅針盤”ともなっている。

次号で、触れるが「最後の一人まで」というのは、阪神・淡路大震災がもたらした、人権に裏打ちされた大切な思想なのだ。
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)

*最後の一人までの記事はこちらから
https://www.facebook.com/328257977286826/posts/pfbid02x5KhA2NJfNtKGr8xBKjDWtwbx5vAD3x4Xi9qeksYvkXKHkBJ63eEhGf3Ge9iMDCcl/

●CODEが、ウクライナおよびロシアから神戸に避難している方々に、「MOTTAINAIやさい便」を届けています。この「MOTTAINAIやさい便」も、無数のちいさな橋をかける活動です。是非、応援して下さい。(9月2日づけ神戸新聞朝刊にCODEが行っているウクライナ支援の様子が掲載されています。)

●保育園に通わせているウクライナの一人の母親が、子どもを送り迎えするために、電動自転車がありませんか?と願っています。もし、提供できる電動自転車があれば、村井まで連絡してください。ただし、運搬の都合がありますので、勝手ながら神戸市内の方に限りますが、よろしくお願いします。

憎しみの連鎖ではなく、支え合いの連鎖を!!-NO.28

プーチン率いる露軍は、即刻ウクライナから撤退せよ!!

あろうことかロシアのプーチン大統領は、20日一方的に併合したウクライナの東・南部4州(ドネツク、ルガンスク、ザポーロ―ジャ、ヘルソン)に戒厳令を発動した。すでに同大統領は1か月前の9月21日、部分的動員令を発動した。「一時は100万人が動員できる」とも発表していたが、「ロシア国民に向けてロシア語で呼びかけ『動員令が出る前から30万人の徴兵令状が印刷され、署名されていた』」とも(神戸新聞2022・9・24より)。
ウクライナの激しい抵抗の前に、一部は撤退も余儀なくされたが、残念ながら “戦争状態”に突入することになったということだ。
ロシアの勇敢なる市民は、弾圧を恐れず、各地で抗議のデモに立ち上がった。

そもそも同大統領は、ウクライナへの一方的な“侵攻”にもかかわらず、「特別軍事作戦」と言い続けてきたが、この戒厳令発動を以って、自ら「戦争状態」と認めたようなものだ。ヘルソン州などからは、住民退避が始まった。同州親露派によれば、やがて退避者は5万~6万人になるとも。
しかし、同大統領が日々追い込まれ、極限状態と言えるほどの精神状態が続くならば、ギリギリのところで両国が保っていた緊張関係が一気に瓦解する可能性も出てくるという厳しい現実と直面する。

一方で、ウクライナから日本に避難されて来た中には、ザポリージャから寝たきりの母親を置いて避難してきた方もいる。ここ数日の報道に接し、胸がはち切れそうな日々を送っているだろうと想像すると、支援をしている私たちもうろたえるしかない現実に戸惑う。

露軍は、「中度対応体制」「高位準備態勢」「標準準備態勢」(神戸新聞同日付けより引用)と整備しつつ、ウクライナに対する全土攻撃をも辞さないようなので、ウクライナから避難されてきたすべての人々が、恐怖の中にいる。

でも、そうした中でも子どもたちは学校や保育園に通い、共に暮らす母親たちは毎日、日本語の勉強に行き、また一日数時間の就労についている。CODEは「MOTTAINAIやさい便」を届けながら、少ししか会話ができないものの、ある避難者がおっしゃった「いま、ここに与えられた宿命のような時間を、意義あることだと感じつつ、しっかり生きぬくことです。」という言葉に、涙ぐみながら「一人ひとりに寄り添いながら、いま、できることをしっかりやろう!」と決意させられる。届かないかも知れないが、「プーチン率いる露軍は、即刻ウクライナから撤退せよ!!」と叫びたい。
(CODE海外災害援助市民センター事務局 村井雅清)

●CODEが、ウクライナおよびロシアから神戸に避難している方々に「MOTTAINAIやさい便」を届けています。この「MOTTAINAIやさい便」も、無数のちいさな橋をかける活動です。是非、応援して下さい。(9月2日づけ神戸新聞朝刊にCODEが行っているウクライナ支援の様子が掲載されています。)

●保育園に通わせている一人の母親が、子どもを送り迎えするために、電動自転車がありませんか?と願っています。もし、提供できる電動自転車があれば、村井まで連絡してください。ただし、運搬の都合がありますので、勝手ながら神戸市内の方に限りますが、よろしくお願いします。