スリランカ第 7 次調査報告No.6

■広がる紛争
 
無邪気に笑う人見知りがちな子どもたちに出会い、仲間との助け合いを尊ぶ漁師たちに出会い、誇りをもって自分の仕事について話す女性たちに出会った。痛ましい津波の記憶はまだ鮮明かもしれないが、出会った人たちは少なくとも、前を向いていた。
津波から力強く立ち上がっていく人たちがいる一方で、悲しいニュースは途絶えない。道中、私たちはコロンボに一泊したが、そのホテルの近くで数日前にテロがあったと聞いた。車が爆発し、2歳の幼児とその母親が犠牲になったそうだ。また、私たちがスリランカを後にした直後にも、再びコロンボでの爆発が報じられていれた。北部・東部で激化している政府と反政府武装組織との紛争が広がっているのだろうか。地理的な広がりだけでなく、民間の人が犠牲になるという広がり。津波に奪われた命があり、間一髪救われた命があった。その生き残った人たちが、人間によって殺されているのかもしれなかった。
ある反戦団体が、キャンペーン用に作った栞(しおり)を私たちにくれた。表側にはやわらかいタッチの鳩の絵と英文。「平和とは、『望み』でもなく『願い』でもない。『権利』なのだ」。裏にはシンハラ語で、「少数の好戦的な人々の欲のために、多くの人々の権利を侵害することを許してはならない。いかなる戦争行為にも反対しよう、団結しよう」とある。
現地で会ったイタリア出身の国連職員は言った。「これを日常と思うことにしたの。先月の私の誕生日にもテロで誰かが亡くなった。だから私は誕生日も素直に喜べないと思っていたのだけれど、この状況に慣れなくてはいけないと友人に言われた。毎日のことだから。それで、誕生日を祝ったわ。」慣れなくてはいけないのだろうか。栞の「平和は与えられて当然の権利」という文言とは反対に、「戦争は慣れることができるほど日常のできごと」と言い聞かせる人。さなかに生きる人は、どちらの目線で世界を視るのだろう。