■女性組合
漁業組合の代表と一緒に、「FCWU訓練センター」に向かった。FCWUとは、漁業組合のなかの女性委員会にあたるもので、女性や子どもたちが職業トレーニングを受けている。
センターでは、女性たちが職業に役立てるためにコンピュータや刺繍の技術を習うことができる。この町の女性たちは、夫がやっていた店が津波であらかた流されてしまい、自ら家事に加えて収入を得るための仕事を始めざるを得なくなった。職業訓練に加え、自営業の開業資金として融資を受けることもできるプログラム。ふと見ると、ある女性が、紙とペンを取り出し何かの図を描いている。聞いてみると、私たちに同行してくれた男性が着ているシャツの刺繍の模様を描き写していたのだ。デザインの参考にするのだと言う。
家事は無償労働だからその価値が低い、というのは間違っている。けれど、それまで無償労働に従事してきた女性たちが自分で生計を立てられるようになると、離婚しても生きていけるという自信からか、家庭内やコミュニティ内で発言力が増したり、外に出た女性どうしの結束が固まったりするといったケースはいろいろなところであるらしい。家事の合間の気晴らしにもなり、いきいきしてくる(逆に負担が増えることもあるだろうけれど)。ここでコンピュータを学ぶ女性は、どのような仕事に就くのだろう。災害によって、ある一帯に住む人々はその人生の送り方を変えることを余儀なくされる。時が経ち、それは一時的な例外として再び何もなかったかのように鳴りをひそめるかもしれないし、次の世代にも受け継がれ、新たな文化として社会に定着していくのかもしれない。