シスター須藤 講演と対談 No.3

「ハイチの人の美しい心」

貧困やクーデター、国連による経済制裁という過酷な時期をハイチで過ごしたシスター須藤。そんな中で出会ったハイチの人の美しい心を感じるエピソードを語ってくれた。

ある日、シスターたちが子どもたちにパンを配っている時、一人の女の子は食べようとしなかったという。シスターが訊ねるとその女の子は、「妹がいるんだけど・・・」と言う。「もう一つ下さい。」が言えないでいるその女の子。パンをもう一つあげると飛び上がって喜ぶ姿を見てシスターは、「貧しくても自分の事だけを考えない」のその子の気持ちを感じた。

また別の日、山の中から死にかかった子どもを連れてきた母親がいた。治療の甲斐なく結局、その子は亡くなってしまったが、その後の母親の行動にシスターは驚いたという。数日後、その母親はお礼に大きな重いヤシの実を抱えて山からやって来た。「子どもは亡くなってしまったのに。しかも自分たちの貴重な飲み物を。。」シスターは、その気持ちで心がいっぱいになってその母親と一緒にヤシジュースを飲んだそうだ。「ハイチの人たちは貧しいながらも非常に優しい心を持っている。そういう経験をハイチでさせてもらった。」と語るシスター。

そしてある時、シスターは、警察がある事件で道を封鎖している事態に遭遇した。この道を通らないと帰れない状況で困っていると、村人たちが別の道へと通してくれた。その時、一人の女性がシスターの顔を見ながら「神様、この人を通してくれてありがとう。」と言った。見ず知らずの自分にしてくれた、その素直な気持ちを感じたそうだ。

シスターはこの三つのエピソードから物や金だけでない幸せをハイチで経験させてもらったという。「人間はどうしても一人で生きていく事はできない。心の支えが必要。物がなくても、あげられることが出来なくても、何もできなければ、微笑だけでも相手にうつせばいい。」日本人はそういう事を恥ずかしがるが、ハイチ人のように恥ずかしがらずに素直にその時の気持ちを言葉に表したらいいと言うシスター須藤だった。(つづく)
(吉椿雅道)

シスター須藤 No.3

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