2010年1月12日のハイチ大地震から今日で3年となりました。この震災で23万人以上が亡くなり、150万人以上が家を失ったと言われており、今でも35万人以上がテント生活を送っています。
地震直後、被災地KOBEからの呼びかけで、ラジオ関西を通してメッセージを集めてこれをハイチのラジオ局から発信してもらいました。遠く離れていても心は寄り添っていることを伝え、痛みの共有をしたいとの思いからです。ハイチの困難は震災に始まったわけではありません。以前から深刻な貧困が問題となっていましたが、ハイチという国のことをあまり知らなかった方が多いと思います。私も恥ずかしながらまったくといってよいほど知りませんでした。世界中の地域や日本国内の種々の問題にも言えることですが、苦しみに対する無関心は、当事者にとって一層苦しみを募らせます。メッセージはお腹を満たす役割は果たしませんが、それでも思いを寄せることの大切さを、KOBEの人から教わったように思います。
さて、ハイチのマルテリー大統領が1月1日、次のような発表を行ったことを世界各紙が報じています。大統領は2013年を「環境の年」にすると言います。「自然災害に立ち向かうため、ハイチ人一人ひとりが1本ずつ木を植えてほしい」。彼は特に森林の再生に注目しています。ハイチの森林は国土の2%未満。毎年来るハリケーンですぐに川が溢れ、甚大な被害をもたらしています。雨も多く暑いこの地域は、かつて豊かなみどりに包まれていました。しかし独立後の外国の干渉や独裁政権下で命をつなぐ手立てが尽きたとき、人々は森に資源を求めるほかなかったのです。
首都から40kmほど西にあるレオガン市に「GEDDH」(ジェッド。ハイチの環境保全、改善のために持続して働くグループ)というNGOがあります。GEDDHは2005年から、日本人医師シスター須藤(※注)のもとで植林と炭焼きに取り組み、着実にその実践方法を広めてこられました。いまでは総会に全国から300人以上が集まるほどだそうです。一人が100本の木を植えるよりも100人が一本ずつ植えることが、目指す社会を築く上では大切です。まさに木の枝のように全国のGEDDHのメンバーがそれぞれの地域で活動を広げるとともに、しっかりとそれが根付いていっています。CODEは2012年8月、シスター須藤の紹介でGEDDHとお会いしました。さらにたくさんの人に農業と植林の大切さを伝えたい、とGEDDHが計画していた農業学校の建設をお手伝いさせていただくことになり、そのお話を進めています。
大統領はまた、「ハイチの食糧自給率を70%にする」とも述べています。従来から、ハイチの主要な産業は農業です。植林によって農地を確保し、そこから自分たちの食べるものと雇用が生まれる――長いプロセスかもしれませんが、このように自然とともに生きることがまさにナチュラルなあり方だと思えます。KOBEももうすぐ1.17を迎えますが、ハイチの復興から私たちも学ぶことがたくさんあります。
(※注)シスター須藤:ハイチで1976年から医療活動を行ってこられた日本人医師。医療を行うなかで、人々の暮らしと健康のために農業が欠かせないと考え、自ら炭焼きを学ばれ地元の青年に伝えたことからGEDDHが生まれました。
(岡本千明)