「インドネシアの津波の教訓と伝承」
11日午前1時44分(現地時間3時44分)、インドネシア・ジャワ島の東ジャワ州沖でM6.0の地震が発生し、3名(7歳児を含む)が亡くなり、4名が負傷しています。
スラウェシ島の地震津波災害ですが、インドネシア国家防災庁は、10日、死者が2045名、行方不明者671名、負傷者1万679名、被害家屋6万7310棟になったと発表しました。1636名の死者を出したパル市では、地震や津波、そして液状化による地盤沈下、地滑りなど複合的に発生したことにより甚大な被害を出しました。
その一方で、地震発生後、高台に避難した事で全員無事だった村もあります。震源に近いドンガラ県ワランダノ村は、人口約1200名(280世帯)の村ですが、7月、8月に連続して発生したロンボク島地震の際に高台への避難方法を学んだ村長は、住民に避難を進めた事で死者を出す事なく難を逃れました。その際に住民が実践したのは2つだといいます。一つは、「大きな地震が来たら津波の可能性を考えて、高台へ逃げる」、もう一つは、「家族、友人を待たずに一人でも逃げる」ということだったそうです。まさに「津波てんでんこ」です。
2004年のスマトラ島沖地震津波(死者約22万人、13か国が被災)の際にも、伝承が残っていたことで被害を免れたインドネシアの島があります。スマトラ島の西に位置するシムル島(アチェ州)には、ナンドンと呼ばれる叙事詩が歌い継がれています。1907年にシムル島を襲った津波の教訓として「♫強い地震が来たら、とにかく高いところに逃げましょう。自分の身を守るために♫」という歌が島全体に伝わっていたことでほとんど被害がなかったといいます。「津波てんでんこ」とまったく同じではないようですが、「家族を探さない」ということは、必ず生きて再会するという信頼が、その根底にあるのではないでしょうか。(吉椿雅道)