パキスタン北東部地震 第1次派遣 vol.5

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<ムザファラバード>
アザド・ジャンム・カシミール州のムザファラバードという街の様子です。
拠点としている街マンセラからムザファラバードへの道は絶えず曲がりくねった山道です。カシミール州への入場ポイントでは警察による簡単なチェックがありました。途上の山道は壊れていませんでしたが、カシミールへ入ると家屋の損壊が目立つようになりました。
ムザファラバードでは、バラコットほど全壊している家屋は多くありませんが、やはりすべてと言ってよいほど損壊しています。かつて大学だった敷地に設けられたテント村を訪れました。大学は瓦礫も処理されて跡形もありません。テント村周辺には、瓦礫を集めてきて立てた掘っ立て小屋でチャイ屋、八百屋、果物屋、食堂などが再開していて賑わっています。もっと山の手の方に歩いていくとかなり崩壊しているところが多く、お墓を作っている人も見かけられます。偶然出会ったアリさん(29歳)という男性が通訳をしてくれることになりました。アリさんは政府機関のコンピュータ・オペレーターをしており、地震が起きた時は建物の外にいたので助かったそうです。
彼も家族を亡くしました。残った彼の家族は現在イスラマバードの親戚の家にいます。話してみると、ほとんどの人は、政府の指示を待っているのだと言います。何か今後の計画はありますかと聞くと、お金がないからどうすることもできない。できるなら帰って家を建て直したいという人もいれば、政府がここへ行けと家を用意してくれるのであればどこへでも行くという人もいました。
出会った人たちです。男性は働きに出ていて、テント村では主に女性や子どもたちが表で炊事をしたり遊んだりしていました。両親を亡くしておじさん家族と暮らしている姉妹。もとは学校を経営していたある男性。彼はけがをして左足が動かなくなりました。ここでは男性の職業は、トラックの荷の積み卸し、軍人、ホテルのレストランでウェイター、ずいぶん昔にインド側カシミールからこちらへやってきた絨毯職人なんて人もいました。労働者や自営業者の平均月収は4,000~5,000ルピー(約8,000~10,000円)ですが、アリさんのように政府系機関で働いていると10,000ルピー(約20,000円)以上になるそうです。
女性の職業は何ですかとある男性に聞いたらみな主婦だと答えたけれど、中学生・高校生くらいの女の子たちに聞くと、教師、医者、公務員なんかだよ、と言いました(この地域の就学率は高く80%だと言います)。それにこんな人もいました。シャミームさんという女性が、テントの中でミシンを使い縫い物をしていました。近所のテントの人の依頼で女性の服を作っているそうです。一着作ってあげると120ルピー(約240円)をもらいます。以前は他の女性3人と共に縫い物の学校の先生をしており、生徒も20名ほどいたそうです。1日4着のペースで作ることができると言います。
タルカバードという町から来た生徒たちは、毎日2時から5時に「学校」を開いていて自分は「先生」だと言います。集まって遊んでいるようです。主に話してくれた女の子は16歳で11年生。彼女のお父さんは10数年前にインド側カシミールに「ジハード」に行って以来音沙汰がないそう。今キャンプで女の子として困っているのはお風呂とトイレだと言います。トイレはあるけれども汚くて使いたくない、と嫌な顔をしました。これからどうするの?わからない。道がきれいになったら家に帰る、と言います。
知的障害のある中年の女性がいましたが、話しかけもしないうちにアリさんが、「彼女は異常(Abnormal)だから話すことないよ」とさっと素通りしました。語彙を知っていて言葉を選ぶことのできる彼があえて「異常(abnormal)」と言ったことや、そのときの態度が気になりました。後で私が別のテントの中にいるときにまたその女性が顔を覗かせたけれど、彼とテントの住人は彼女を帰してしまいました。
数日後、同じテント村を訪れると以前よりもテントの数が減っているのがわかります。テント村を移動したか、道が開けたため家に帰った人がいるのでしょう。先日キャンプで出会ったアリさんは、足が不自由になった教育関係者の男性とキャンプで話をしていました。テントには車椅子があります。今後マレーシアの友人が電動のものを送ってくれるそうです。3000ドルするそうです。前回渡した「まけないぞう(神戸の被災者の方が復興の思いをこめて作ったぞうのぬいぐるみタオル)」がテントの支柱にぶらさがっていました。使ってくれているようで嬉しいです。
シンポジウム「世界の1年を振り返って次の1年へ」
日 時:2006年1月8日(日)14:00~17:00
場 所:JICA兵庫 2階ブリーフィングルーム
参加費:無料(要予約)
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