「社会に役立つ仕事がしたい…!」そんな人が増えてきた今日、NGO/NPOで働く、ということが注目され始めています。
でも、「NGOやNPOで働くってイメージしづらい…」KoNNecTはそんな学生の「?」を解消すべく、NGO、NPO職員のリアルな働き方、生活についてお話を聞いていきます。
今回お話を聞いたのは、神戸ソーシャルキャンパスの大福聡平さんです。
神戸ソーシャルキャンパス
関西大学外国語学部卒、総合情報学研究科修士課程修了学部時代のフィリピン留学中、少数民族を支援するNGOの活動に参加した事をきっかけに、国際協力活動に関心を持つ。帰国後、フィリピンやカンボジア、国内の限界集落などをフィールドにし、学生が多様なアクターと関わり合いながら課題解決に取り組むProject Based Learningの研究活動に従事する。修士論文のテーマは、継続的な社会貢献と学びを両立する教育環境のデザイン。大学院修了後、新卒でNPO法人しゃらくに入社。神戸ソーシャルキャンパスの開設にあたりコーディネーターを担当。学生が学校の外に出て、街で主体的な活動に取り組む「学街活動」をサポートしている。
NPO法人しゃらく:http://www.123kobe.com/
神戸ソーシャルキャンパス:http://kobesocialcampus.net/
ソーシャルビジネスはくそ大変
ーーお話を聞いた中でも色々大変そうだなと思うことはあるんですが、神戸ソーシャルキャンパスの運営の中で大変なことはありますか?
大福:体力的なしんどさは今はないですね。
さっき言ったように自分で仕事を生み出さないと仕事がなくなるし、ここの事業も止まっていくので常に何か自分で生み出さないといけない、そのために色んなアンテナを張って色んなネットワークを繫げていくようなそのアイデア出しは結構大変…というよりは楽しいですね。
ーー今まで活動をしてきた中で辞めたくなったこととかありますか?
大福:辞めたいと思ったことは全然ないですね。
ーーあんまりマイナスなモチベーションにになったこともありませんか?
大福:落ちてるというか、落ち着いてくるときはありますけどね。なんか仕事がルーティーンになってくるとなんか新しいことしたいなと感じることはあります。
ーー働く前と実際の仕事のイメージのギャップみたいなものはありましたか?
大福:イメージのギャップ…1つはソーシャルビジネスはくそ大変だなと。
それはめっちゃギャップでしたね。それは今の働き方というよりソーシャルビジネスに対するギャップですけど。
ーーそれはどういういう時に感じるんですか?
大福:うまくいかなかった人たちともたくさん出会うし、まだ続けているけれど自分の生活だけで大変という人もたくさんいる。そういう姿を見ているとソーシャルビジネスやばいなと、簡単にはできないなと。
僕の勝手な想像では3年でしゃらくを辞めてソーシャルビジネスの知識を得て独立できたらいいなと学生時代は思っていたんですけど、そんな簡単なもんじゃないなと今感じているところですね。
ーー今でも自分自身で何かやりたいという思いはありますか?
大福:そうですね。
特に独立という形にこだわってはいないのですが、最終的にはフィリピンに恩返しがしたい。何とかそこに結び付けられればどんな形でもよいかなと思っています。
ーー今のソーシャルキャンパスの事業をやっている中でやりがいを感じるのはどんな時ですか?
大福:やっぱり目的としては学生が学外でいろんな活動をして経験を積んで何か自分のやりたいことを明確に持ってもらうことが僕の個人的な思いでもあるし、僕は学外活動にのめり込んだ結果今のキャリアが見えてきてやりたい事が見えてきたというのがあるので、学外活動が将来につながるという経験を一人でも多くの学生がしてくれればいいなと思って、いろんな企画をしています。
その中で、そういった企画に参加してくれて、僕らが用意していた活動を越えて発展させていったり活動に愛着を持ってこういうことをしていきたいとか、そういう学生の姿を見ることができた時はすごいうれしいですね。
事務作業というのはやりたい事を実現するための手段
ーー休日はどのように過ごされていますか?
大福:休日は月曜日が定休日でそれ以外はシフト制で1日休日がもらえる週休2日制で、休日は本当にだらだらしています。
そういう時もあれば、色んなNPOの方とつながっているので半分仕事みたいな感じでイベントに出かけたりするときもあります。
ーープライベートと仕事の境が少し曖昧な感じですかね?
大福:んーでも休めてはいますよ。完全に休みの日ももちろんあるし、めんどくさい時はもちろんいかないし。
ーー会社とかと違って、NGO/NPOっていうと会社がその人に保証とかそういった福利厚生的な部分が少し心配なイメージがあるんですが、そのあたりはどうですか?
大福:しゃらくはちゃんとやってくれている方だと思います。社会保障も年金も払っているし整っている方だと思います。ただ残業代やボーナスはないです。
ーー突然ですけど、今幸せですか?
大福:幸せなんちゃいますかね。
ーーどんな時に感じますか?
大福:やっぱりやっている仕事は楽しいですよ。
楽しいしめちゃくちゃ困窮しているわけではないし、幸せを他人と比べるのもおかしな話なんですけど、NPOの業界に関わっていると問題の当事者の人たちやそれと真正面から向き合っている人たちとか色んな人たちと会うんですよね。
そういった姿を見ていると文句言える立場ではないよなと。
ーー仕事の中で事務作業とか多くなってしまうと退屈だなぁと感じてしまうことは無いですか?
大福:そうですね、退屈な時はあります。ただ、事務作業というのはその作業自体の事じゃないですか。でも、事務作業というのは、やりたい事を実現するための手段なので、作業だけを切り取るとつまらない作業かもしれないですけれど、作業をしながら頭の中ではすごい面白いことになっているので、それは全然楽しいですね。
ーー自分の知っている誰かと誰か、また団体とを繫げてこの人がすごい活躍するようになったという瞬間の楽しさや満足感もある中で、それを準備する準備段階から楽しさをすごい感じているんですね。
大福:そうですね。
「このイベントは楽しくなるぞー、企画書が進むなぁ」と思って企画していても、イベントの2日前に参加者2人とかで、「やべぇ、全然受けてない、これからまた拡散していかないと」という時はしんどいですけど、受けるイベントもあれば、受けないイベントもあるのは当然なので、それはそれで楽しいですね。
ーー人生設計や人生の最後にこういう感じになりたいというものはありますか?
大福:なんか今までの話を聞いてもらったら分かると思うんやけど、そういうの苦手なんですよね。
目の前の事を継続していくことの方が得意なので。よく10年後の自分の未来を想像してとか言われるんですけど、全然できないんですよね。
数年後に何かしたいというものも少しは考えていますが、それはまた動き出してからのお楽しみということで。
原動力はもやもや
(神戸ソーシャルキャンパスに入ってすぐのところには、様々な団体のパンフレットなどが所狭しと飾られている。)
ーー自分がこの仕事をしていなければ何をしていたと思いますか?
大福:全然想像つかないですけど、非常勤講師ですかね。
一応非常勤講師を1年間続けて、そのまま常勤講師になって、教員になっていたのかな。友達が言うようにフィリピンでふらふらしていたかもしれないですけど、一般企業はなかったと思いますね。
ーーなんで一般企業はなかったんですか?
大福:一般企業は違うなというのも今考えればめちゃくちゃ視野が狭いと思います。
一般企業と言ってもめちゃくちゃ広いですし、本当に社会貢献的な活動をしている企業というのはもういくらでもあるので、その時点で視野に入っていなかっただけで今考えると一般企業も全然いいのかなと思います。
でも、どうなんですかね…、馴染めたかと言われればあんまり自信がないですね。就職してスーツで毎日働くというのが嫌だなと思っていたので。
ーースーツをあんまり着ない生活を送ってますもんね。
大福:この前友達の結婚式があって久しぶりにスーツを出したらカビが生えてましたからね。
んーでもほんとにこの仕事をやっていなかった自分というのはあんまりイメージができないですね。それくらい他に選択肢がなくてここに来たという感じだったので。
ーー「大学時代に一般企業で就職を考えていなかった」と言っていましたけれど、その時の就職活動への違和感は大福さんの中での大事な価値観なのかなと思います。そこについてもう少し詳しく教えてもらってもいいですか?
大福:いい質問ですね。
違和感…やっぱりさっきも言ったけれど、大学時代に今まで一緒に頑張ってきた人たちが就職で全然違う業界に入っていくという違和感に基づいていると思います。
僕は学生時代に色々やってみて、なんかこれだなと思ったものに就職するのが1番良いと思ってるんですよ。
ーーこれだなと思ったものに就職する?
大福:どういうことかというと、今って例えば大手に入りたいとかいうのは自分のやりたい事というよりはその会社がどうであるか、待遇がどうであるかということによって決めていると思います。
僕は自分がやりたい事であればNPOだろうが、中小企業だろうが大企業だろうが、公務員であろうがなんでもいいと思っていて、そのなんかやりたい事の軸を見つけてほしいと思っています。
そのためには多分色んな所に顔を出しながらそれにのめり込まないとそれが見えてこないと思っています。
僕の場合はフィリピンとカンボジアでの活動にのめり込んだ結果ソーシャルんビジネスというものが見えてきて、たまたま引っかかった団体がしゃらくだったんですね。
そうやって振り返った時、僕としてはとても自然な流れだったと思います。
これはよく言われる表現なんですが、就社ではなく就職をしろと。要は「組織ではなく職業で選ぼうよ」ということなんですが、こういった職業選択がもっと一般的になればうれしいなと思います。
ーーなんでそんなにフィリピンやカンボジアでの活動にのめり込んだんですかね?
大福:やっぱり最初の衝撃というのは本当に大きかったですね。
大学の費用も留学の費用も親に出してもらって、バイトもしていなかった僕がフィリピンに行ってそこにはもう本当にたくさんの人がいたんですね。
NGOの人もいれば、ホームレスの人もいて、それで物乞いの方もたくさんいたんですが、初めて出会った時にとてももやもやを感じたんです。
ーーもやもや?
大福:僕は親の金で大学も留学も行って、何不自由なく暮らしていて、今フィリピンに来てボーと立っているのに、目の前の物乞いをしているお母さんは子供を抱えて1日1日を必死に生きている。
目の前のお母さんの方が絶対に1日を努力しながら必死で生きているのに、僕が物乞いをされる方なんですよ。
この違いって何だろう、生まれた環境が違うだけで物乞いする側とされる側がある世の中ってどうなんだと、そういうことを感じました。
その時の疑問やもやもやを抱えながらも、NGOの人などに出会い、社会の矛盾に真正面から取り組んでいる人たちと出会ったそれまでボケーとしていた大福少年の衝撃、というのが今も続いているのではないかと思います。
だからこそ、そこまでのめりこめたし、NGO側の人たちに近づきたいと感じたんだと思います。
ーーしゃらくに入ると決めた時の自分に声をかけるとしたらなんと声をかけますか?
大福:ええと思うで。とかそんな感じですかね。
ーーMGO/NPOに興味はあるけれど、なんとなく踏み出せない人に一言声をかけてもらってもいいですか?
大福:「やりたいことをやろう!」ですかね。
僕はNPOとか株式会社というところにこだわりはないですが、何をするにしてもすごく大切なことかなと思います。
編集後記
「違和感」、「もやもや」、そういった感情を持つことはおそらく誰にでもあると思います。しかし、大福さんのようにその感情と向き合って、就活をしないという選択をしたり、将来の自分自身の夢というところと結びつけている人を僕はあまり知りません。
大学の4年間は光のスピードかと思うくらい早く過ぎるし、就活を一斉に始めさせられても自分のやりたい事が22歳で一斉に見つかるはずもありません。
世の中はものすごいスピードで進みますが、そんなものよりきっと自分の感じる「違和感」や「感情」は大切なのかもしれない、ということを感じさせられたインタビューでした。
大福さん貴重なお話をありがとうございました。
しゃらく:http://www.123kobe.com/
神戸ソーシャルキャンパス:http://kobesocialcampus.net/
2018/2/22
高橋大希
今回の記事をみて自分もこの活動に参加したい!
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