No.13 バングラデシュ・サイクロン・シドル(2007年11月15日発生)

フィリピンの台風災害についてレポートをお送りしておりますが、アジアは非常に水害の多い地域です。6年前にバングラデシュ南西部を襲ったサイクロン・シドルも、死者4234人、被災者は約900万人、被災家屋(全半壊)151万棟以上という甚大な被害を出しました。
この災害に対して、CODEは以前から協力関係のあるバングラデシュ防災センター(BDPC)と協力し、壊れた孤児院の再建を支援しました。建物はサイクロンシェルターとしても使われています。
支援の対象となった孤児院は、ベンガル湾に接する2つの川に挟まれた地域にあります。コミュニティの人々が自力で建設し、寄付で運営してきたこの孤児院は、サイクロン・シドルにより大きな被害を受けましたが、公立校ではないため政府の支援を受けることができませんでした。BDPCがこの孤児院と出会ったことがきっかけで、災害から約2 年後の2009年7月、CODEの支援によって孤児院の再建が始まりました。
コミュニティの人々はとても意欲的でした。作業初日から、コミュニティ全員が自発的に参加しました。皆、孤児院を地域の財産と考えており、当事者意識と貢献意欲を持っていたからです。リキシャー(三輪車)引きや貸しボート屋は無償で資材を運ぶのを手伝い、石工は無償で建設を手伝いました。大仕事となる屋根の取り付けに関わった人たちの半分はボランティアです。資金面でもCODEの支援だけに頼らず、コミュニティ内で約450米ドルを調達しました。資材を提供した人もいます。こんな声も聞こえて来ました「これはただのレンガではないんだよ、ここにたくさんの愛がつまっているんだ!」。こうして作られた孤児院は、単に外から与えられたものではなく、「私たちの作ったものだ」と地域の人たちの自信となりました。
建物は硬い基礎の上に建てられ、強い構造を備えています。大きさは縦約15m、横約8m、高さ約3mです。屋根の厚さの基準は12.5~15cmですが、約23センチあるため、将来2階が必要になったときに増設が可能です。このような構造の建物はこの地域にはほとんどありません。ひとつひとつ丁寧に作られているため、業者に丸投げして手抜き工事をされるよりも数段長持ちするだろうとBDPCは見ています。サイクロンを避けることはできませんが、質にこだわったこの建物をシェルターとして活用できることから、安全のシンボルにもなっています。
2010年5月の完成後、孤児院では67人の生徒が学びはじめました。地元の人は子どもたちに食事を与えるなど、引き続きボランタリーな活動で運営が支えられています。やがてここを巣立ちゆく子どもたちも、将来この孤児院を支えてゆくことでしょう。
フィリピンにおいてもこのように、復興・防災の支援を通してコミュニティの人たちの自信や地域の財産になるような活動を考えてまいります。
(岡本千明)