下記の「国境なき医師団」の調査レポートからは、物資や医療などの支援の不足
やその展望が見えないことから、被災者が自ら心的な傷を癒すきっかけを掴むこ
とも困難になっている状況が見えてきます。このような時に「あなたたちのこと
を見守っている」という世界の人々のメッセージを届けることは大きな意味を持
つのではないでしょうか。
<以下はCODE翻訳ボランティアさんからのものです。>
情報源:IRIN(国連統合地域情報ネットワーク) 2008.6.12 レポートより
抜粋要約
デルタ地帯で二週間調査してきたMedecins Sans Frontieres(国境なき医師団、
以下MSF)の心的外傷の専門家であるKaz de Jongは次のように語った。「風がま
た吹いてきて、今残っているものも全て吹き飛ばしてしまうのではないかと心配
している人がたくさんいた。悲嘆の限りにあるのにもかかわらず、人々はその感
情を抑えようとしていた。多くの生存者達は大災害の時の様子が、特に愛する人
の最後の姿が、取り付いてしまったかのように頭の中に甦っていた。多くの犠牲
者は35キロ内陸まで流れ込んできた高潮に押し流され、溺れてしまったのだった
。
また他の人達は不眠に悩まされ、動悸や高血圧に苦しんでいた。全ての兆候はス
トレスによるものである。」
子供を含む多くの生存者達は、内向的になっていて、将来に向かうエネルギーに
欠けていた。
「あなた方はみんな米のことを心配しているが、人間は食べるという意欲を必ず
持っているものだ。でも今この時点で私は生きている意味が無い。私は家族を全
て失ってしまったのだから。」とある老婦人は彼に言った。
絶望や落胆は大切なものを失う経験をした時に「普通に」おきることだが、生活
再建の能力の限界が重大な心理学的な問題の兆候を加えることはそうあることで
はなかった、とMSFは説明した。我々は人々が立ち直り、自分が生きていく価値
があると思えるように支えていく必要がある。そのためにMSFはコミュニティの
リーダーを特定し、ストレス管理の基本的な訓練をして、家族の中で自分だけが
生き残った子供や老人のような最も傷つきやすい人々の様子をみて不安を何とか
処理していくことを支援していく。村人達を瞑想に導いてくれるよう仏教の修行
僧に頼んだり、経験したことに対する感情を表に出すよう人々を励ましたり、亡
くなった家族のことを考えるのは一日のうちの決まった時間だけにしてその思い
出に異常なまでにこだわってくよくよ考え続けるのを防ぐように提案するするこ
となどがその支援の方法に含まれている。加えて、専門的な知識を持つ地元のカ
ウンセラーをデルタ地帯へ派遣している。
「アジアでは人々は感じていることについてオープンに話すことがないのが一般
的なので、人々は黙って苦しんでいる。我々はコミュニティとともに活動し、
人々を訓練し、心的外傷の兆候を捉えることができるように支援していく。」と
World Visionの報道官のJames Eastは言った。
家から追い立てられるようにして出てきた多くの生存者達は、1カ月以上たって
も地方都市の一時避難所で込み合った状態で暮らしており、水や蚊を原因とする
病気が発生すると多くの犠牲者が出ることになる。MSFはこの災害の前からミャ
ンマーで大規模に活動してきたので、被災地にすばやくたくさんの医療従事者を
派遣した。43の医療チームは、何万人もの嵐によるけが人を診察し、何例かの下
痢と重大な呼吸器感染症の症状に出会っていた。モンスーンの強い雨は、この地
域の飲料水の主な水源であるのだが、水を原因とする病気の危険性も高いので、
支援要員は、水を集めるためのゼリ-缶と一緒に石鹸と基本的な衛生設備も渡し
ている。