月別アーカイブ: 2022年7月

No.19-ウクライナ編⑪「日本とウクライナの間で・・・」

神戸市内に住むウクライナからの避難者の方々は、今引っ越しに追われています。4月に来日した人たちは、民間企業の提供するアパートに住んでいましたが、3か月の期限が来て、今、公営住宅に移ろうとしています。民間の住宅は家財道具などすべて備え付けでしたが、公営住宅に移ってからは家財道具すべてを買い揃えなくてはなりません。

この日、通訳ボランティアKさんのご協力のもと、これまでに野菜や自転車を提供してきたSさん(20歳)にお話しをじっくりお聴きしました。
Sさんは、婚約者Vさん(25歳)と共にVさんのお姉さんの住む神戸へと避難してきました。この戦争の前、Sさんはウクライナでアジア料理店で働いていたこともあり、現在は、神戸市内の結婚式場の厨房でコックとして働いています。元々日本やアジアに関心のあったSさんは、少しずつですが日本語も覚え、日本料理にも慣れてきています。この日は明るくたくさんの話をしてくれました。

Sさんの故郷ルーツク(西北部)は、東部のような地上戦はありませんが、軍用機が飛び交い、時折、工場などにミサイルが飛んでくるそうです。また、北のベラルーシからの攻撃も懸念されています。Sさんは、「家はまだ無事だけど、私たちがポーランドに避難した後に、家のすぐ近くにミサイルが落ちたわ」と教えてくれました。また、自身のご家族のことを聞くと、「父と兄は軍人としてニコライエフで戦っています。時々写真や映像を送ってくれます」と悲しそうな表情を見せます。
「母は他の兄弟と共にルーツクに残っています」と言うので、なぜお母さんたち一緒に避難しなかったのかと聴くと、「母国を出たくない」と言ったそうです。また、婚約者のVさんは戦争のときにポーランドで働いていたのですが、ウクライナに戻って戦おうとしてのをSさんたちは必死で止めたそうです。
ご存じの通り、ウクライナの18歳から60歳までの男性は、この戦争後に出国禁止になりました。それは、徴兵だけではなく、経済を支えるために男性たちは母国に残っています。国外に避難した人のほとんどは女性、子供、高齢者です。Sさんは、少しずつ慣れてきた日本での生活とウクライナに残る家族の状況の間で揺れ動いています。
(吉椿)

*MOTTAINAIやさい便へのご協力お願いいたします。
MOTTAINAIやさい便では、新鮮な野菜をお届けする中で見えてきた問題やニーズに対してもサポートしています。
自転車の提供、通訳、引っ越し、傾聴などのボランティアに学生さんなどにかかわってもらっています。
ご寄付は、野菜の購入だけでなく、ボランティアの方の交通費などにも活用させていただいています。
ぜひご協力お願いいたします。

No.18-名付け親―山本健一編①「ボランティアに徹する“79歳のスーパーボランティア”」

“ヤマケンさん”、と親しみを込めて若い学生さんたちからも呼ばれる「山本健一さん」を紹介します。“ヤマケンさん”は、何が凄いかというと(というか凄い話はヤマほどありますが)、一日4時間くらいを毎日軽トラで走るのも平気という人なのです。本業は造園業ですが、お住まいのある兵庫県たつの市では農業もされています。毎週、兵庫県丹波に行き(片道2時間)、氷上や奥丹波、農(みのり)の学校、そして丹波篠山(ジコモ・ファーム)などと農家の手伝いを“はしご”しながら、MOTTAINAIやさいを調達して来て、神戸のCODEまで運んでくれます(丹波―神戸が2時間)。ヤマケンさんの地元からはニンジンが来ます。神戸で新鮮な野菜を卸した後には、また2時間ほどかけてたつのに帰ります。時にはこのサイクルを1週間に2回繰り返すこともあるのです。つまり、「MOTTAINAIやさい便」の名付け親でもありますが、ヤマケンさんがいなければ成り立たないという、かけがえのない存在になっているのです。

79歳ながら、本業の造園も現役で、大変忙しい毎日をおくっています。「MOTTAINAIやさい便」に関わるCODEの学生さんたちが、農業に触れることでいろいろなことを勉強し、育って行くことに自分も励まされていると常々言っておられます。また学生さんたちは子ども食堂では食育を子どもと学び、またMOTTAONAIやさいを、ロシアやウクライナから避難している人たちや外国人技能実習生や留学生として日本で働き、学ぶベトナム、ミャンマー、インドネシア、中国、アフガニスタンなど人たちに届ける活動を通して、日本で生活することの大変さに触れ、学ぶことを支えてくれています。脇役に徹しているのです。

こうして、ヤマケンさんは「MOTTAINAIやさい便」を届けることを主とし、人と人をつなぐボランティアに徹しているのです。ヤマケンさんは、こういう活動を通して、実に多様な“MOTTAINAI”に触れ、「後期高齢者だからと言って、ボーと毎日を過ごすほどMOTTANAIことはない!」といつも仰っています。
(村井)

No.17-生産者編④「暮らしの学校農楽(の~ら)」

CODEの前理事の村上忠孝さん(専業農家)が、MOTTAINAIやさい便として1~2週間に一度のペースで新鮮な野菜を届けてくれます。ここでは、業者に販売している訳ではないので、綺麗で、新鮮な野菜が届けられます。そして村上さんは、以前からおつき合いをされている一般社団法人「暮らしの学校農楽(の~ら)」(兵庫県豊岡市出石町)さんから、ジャガイモやタマネギ、キュウリなどを段ボール箱3~4ケース分も購入して、月に一度くらいのペースで送ってくれます。

その通称「の~ら」さんは、―発達障害や対人関係の不調など、さまざまな理由で社会参加できなくなっている人のための支援施設です。ひとと繋がり、農作業をはじめとするさまざまな活動を経験しながら、ゆっくりと自分の課題を克服していくお手伝いをしています。―とパンフレットに紹介されています。「MOTTAINAIやさい便」ですから、もちろん化学肥料も、農薬も使っていません。先日野菜と一緒に頂いた『ぼちぼちいこか』(2022年6月発行)というニュースレターを拝読させて頂きました。それには「一年で一番忙しい時期に突入しています。夏野菜をのんびり定植してたころが懐かしい!無農薬の米作りのための除草作業、そして、ニンニク、タマネギ、ジャガイモと、トン単位の収穫が続きます」と書かれていたので、結構、ハードな毎日なのだろうなぁと想像します。除草は農家さんから機械を借りてやれるようになったので「20倍?」の速さとか!

でも農作業って大変だろうと思います。特に今年の夏は、半端じゃない程温度が急上昇しているので、熱中症にならないかと心配でもあります。(6月29日の最高気温は38℃を越えました。)

村上さん、の~らさん、ほんとうにありがとうございます。ウクライナの方は、じゃがいもが主食です。凄く喜ばれます。先日の3ケースも、二日で配り切りました。せっかく精魂込めて作って下さっているので、できるだけ新鮮なうちに届けようと努力しています。きっとみなさん喜んで下さっていることでしょう。

あらためて「MOTTAINAIやさい便」は、作っている人と、食べる人がいてなり立っていることを痛感します。是非、みなさんこの活動を支えてくださいね!

No.16-ウクライナ編⑩「市民の連帯の力」

MOTTAINAIやさい便をウクライナの避難者の方々に提供し始めて約1か月半。東灘区に住むウクライナ人Mさんから始まり、現在、8世帯16名の方々に野菜を届けています。
在神戸のウクライナ人家族を含めると、11世帯19名になります。現在、兵庫県に避難してきたウクライナ人は、54名(出入国管理庁調べ)です(その中には個人のつながりで避難してきた方などは含まれていません)。という事は、兵庫県の避難者の3分の1に野菜を届けていることになります。人が人をつないで、このように「野菜がほしい」というウクライナの方が増えてきました。

「最近、野菜など物価が上がっているから助かるわ」、「ビーツやディルなどの野菜で故郷を思い出すわ」などの声をいただいています。また、野菜を届けた際にお話しをお聴きしているのですが、それがきっかけで通訳ボランティアさんの協力や自転車の提供、引っ越しなどの活動にも広がってきました。

ある方が、「MOTTAINAIやさい便は足湯ボランティアみたいですね!」と言ってくれました。そうなんです。足湯というものの提供の根っこには、それを通じて「目の前のひとりの声に耳を傾ける」という阪神・淡路大震災からずっと大切にしてきた事があり、このMOTTAINAIやさい便も新鮮で栄養のある野菜を食べていただくという事はもちろんですが、野菜を届けることを通じて、その方々に寄り添っていくという事を大切にしています。目の前の人の声を聴いていれば、その人たちの置かれた状況や問題がとてもよくわかります。直接、僕たちが解決できる問題を決して多くはありませんが、取りこぼされている人たちの声には耳を傾け続けていきたいと思っています。

CODEの「C」はCitizens(市民たち)という意味です。この「MOTTAINAIやさい便」には、たくさんの「普通の市民」の方々にかかわっていただいています。丹精込めて育てた野菜を提供していただいている農家の皆さん、捨てる野菜ではないけれどウクライナの人に何かをと家庭菜園の野菜を送ってくれる方々、言葉で力になりたいと通訳をしていただいているボランティアさん、通訳を探して紹介してくれる方、学校やアルバイトで忙しい中、合間を縫って野菜と届けている学生さん、いつも遠方から野菜を神戸に届けてくれるYさん、野菜を買ってと寄付をしてくれる方々、ウクライナではこんな野菜を食べるらしいよ、あそこに種が売っているよ、などの情報をくれる方、うちのキッチンを使ってウクライナ料理を作って売ってみたら?とアイデアをくれる方など、本当に市民の皆さんの力に支えられています。まだまだ小さな活動ですが、NGOとして「市民の連帯の力」の重要性を強く感じています。
みなさん、いつもありがとうございます。引き続きよろしくお願いいたします。
(吉椿)