<幻のローティー>
ナンというパンは、インドやアフガニスタンにもあり、主食に近いほど毎食についてくる。食べても食べなくてもでてくる。もちろん「いらない!」といえば引き上げるのだろうが。
さて、ナンの一種類で名前が「バックラハニ」というローティーがある。薄く薄く何層にも小麦粉を重ねて焼いており、ほんとに旨い。小麦粉の間にタマゴの黄身と油を混ぜ合わせた液体を塗布するのがミソのようだ。これを一度口にすると、贅沢だが他のナンはまずく、食べたいと思わなくなる。ところが、この「バックラハニ」を探し求めて街を歩いても見つからないのだ。現地の人曰く「それはこちらの人が、毎朝食べるものだし、どこでも売っているよ、ホテルの隣のショップにも置いてるよ!」とのこと。そんな筈がない、あんな店に置いているわけがないと、またあきらめずに探し回る。だが、ない! とうとう、騙されたと思って、ホテルの隣のショップで聞いてみた。「あるよ!」とのこと。「えっ?」と目が点になる。「置いている訳がない」とは失礼なことだ。なんと傲慢な私たちなのか?
しかし、店員が出してくれた「バックラハニ」は、私たちが描いていたものとは違っていた。二度目の「???」である。お店に悪いから、一つだけ買って食べた。確かにあの何とも言えない感触はある。一口かじると、ポロポロとはみ出した口からこぼれる。あのクロワッサンの大きめのパンを想像して欲しい。でも、私たちが追いかけているのはこれではなく、あのローティー風のパンなのだ。では、あんなにおいしいものが、どうして街中で売られていないのだろうか?「バックラハニ」は、ムザファラのオリジナルだよと教えてくれたのだが・・・・・。これを造っているところは、間違いなく「ワード13」に一軒は存在しているのだが。