ミャンマー南部デルタ地帯を中心にサイクロンが襲ってから2ヶ月余り
が過ぎました。下記のレポートでは詳細な医学的調査結果が出され、様
々な伝染病が蔓延していることなど状況がわかります。未だ支援があま
り届いていない地域の危機的な状態にある被災者への支援が急がれます。
<以下はCODE翻訳ボランティアさんからのものです。>
WHO(世界保健機関) レポートより
WHOと協力する医療関係支援団体によるミャンマーサイクロン被災地で
の疾病調査(早期警戒・警報応答システム(EWARS)に基づく調査、数
字は症例数)
6.1~6.7 6.8~6.14
・急性呼吸器感染症 685 1191
・出血性下痢 117
・急性下痢 542 863
・心的外傷・外傷 337 708
・はしか 10 25(ラブッタにて疑いのあるもの 6.26
現在)
・マラリヤ 5
・デング出血熱の疑い 3
[デング出血熱対策]
デング熱はミャンマー地方特有の病気で通常でも起こるが、サイクロン
後、蚊の繁殖地が増加していることから発病の増加が考えられるため、
予防と抑制の計画(媒介生物による病気の管理The Vector-Born
Disease Control:VBDC)が立てられている。この計画は被災地の26の街
区の90万以上の世帯を対象としている。蚊の幼虫駆除は2,3週間にわ
たって行われ、8週間後に再度行われる。これほど大規模な駆除はミャン
マーでは初めてのことである。ヤンゴン管区の11の街区の選定された所
では6月第3週目から開始される。大きな範囲で行うのには要員や輸送な
どいくつかの条件が必要なため、地方のコミュニティでは、水貯蔵コンテ
ナにふたをすることや適切なごみ処理を行うことなどの簡単な注意喚起が
行われている。
[はしか対策]
WHOは9ヶ月から10才までの子供達への予防接種のため保健省を支援
している。6.19現在で、10のキャンプにおいて7691人の子供達(うち5才
以下4174人)にワクチン接種を行った。
ラブッタでは小規模の発病が避難キャンプや隣接した村などで報告され
ているのでワクチン接種年齢を15才まで引き上げて行う必要がある。6.23
現在では、エヤラワディ管区とヤンゴン管区で23,000人以上の子供達に
ワクチン接種を行った。
[肺炎対策]
ミャンマーは肺炎患者の多い国のひとつであり、2007年には133,000人
の肺炎患者がいた。そのうち10%が肺炎とHIVの重感染者と推測されて
いた。サイクロン以来、ニャピドウー、ラブッタ、ボガーレで行方不明になっ
ていた162人の患者のうち126人(うち46人死亡、6.23現在)の情報を村
や避難キャンプでの熱心な住民参加によって得ることができた。
[ハンセン病対策]
行方不明になっていた患者の100%の消息をつかむことができている。
[水への対策]
水の品質と清潔な水を利用できる度合いは健康に一番直結する問題とし
て残っている。一日600万リットル以上の水を塩素消毒し、約200万人の
人々の需要に応えている。50の水浄化ユニットがミャンマーに送られ、そ
のうち10がデルタ地帯へ送られた。地元のスタッフはそのユニットを使え
るように訓練を受けている。デルタ地帯南部の村では生活用水として利用
していた池が海水によって汚染されてしまったので、雨水を集め浄化する
ことが優先される。
[心理的・精神衛生]
現時点では専門的なケアには格差が生じており、WHOと保健省は6つの
街区に精神衛生を扱う施設をおいて対応している。
Save the Childrenでは初期の適切な心理的支援を行うスタッフを訓練し
ている。
[その他]
ミャンマー赤十字社 水・食料・救援物資をこれまでに30万人以上、現
在も一日1万人以上に渡している。
国際赤十字社・赤新月社連盟 雨期の病気の増加に備えるキットなどを
ミャンマー赤十字社に配給。人材育成。
UNICEF ラブッタとボガーレの被災街区の5才以下の子と妊婦に
免疫記録カードを配っている。
[地域格差]
Bogale南東部、Mawlamwinegyun, Pyapon,Dedayeなどにはまだ十分な支
援が届いていない。
WHOはラブッタ、ボガーレ、ミャウンミャに現地事務所をおいて、地元医療
関係者と協力しながら地域に密着した支援を行っている。
国連、ASEAN(東南アジア諸国連合)、ミャンマー政府はナルギス後共同
調査(Post-Nargis Joint Assessment:PONJA)により、被害損失調査
(damage and loss assessment:DALA)とコミュニティ重視の村落地域調査
(village tract assessment:VTA)を行い、そのデータを被災者の健康に関
するニーズに効果的に応える支援につなげていく。
DALA:あらゆる分野・組織の20~30人からなる6つのチームが、政府の
制約なしに現地調査を行う。そのうちの1つのチームは健康・教育・住宅
に集中して調査した。
VTA:被災地のコミュニティの様々な人々(農民・漁師・看護士・ソーシャ
ルワーカーなどから得られた草の根の情報による調査である。128の村に
おいて10日間それぞれ10戸の世帯でインタビューを行った。特に健康に
関する5つの分野(病気の流行状況、薬の有効性、医療従事者の充足
度、健康管理に必要なもの、衛生状態)に集中して調査した。(以下、
6.26現在の調査結果)
・約7%の世帯で1人またはそれ以上の家族が亡くなっている。
・22%以上の世帯で、サイクロンによる心理的問題に苦しんでいる。
・人口の30.5%の人にとって雨水が飲料水の主な水源となっている。国際
的な援助によって設置された50の水浄化設備によって25万人以上の人
に毎日1人3リットルの清潔な水を供給している。
・サイクロン前に10.9%だった屋外での排便が、サイクロン後には24.8%と
二倍以上になっていた。このことは病気の発生の可能性が増えるという
重大な危険を表している。
・聞き取り調査したうちの22%に下痢、26.8%に発熱、26.3%に咳や風邪
の症状があった。
(PONJAの全報告書は7月18日に発表される予定である。)