月別アーカイブ: 2020年8月

No.32 「第2波とロックダウン」

世界で猛威をふるう新型コロナウイルス感染症(COVID19)は、依然として収束の兆しを見せていません。
米・ジョンズホプキンス大学の集計によると、8/25現在、世界全体の感染者数は2364万7377人、死者は81万3022人となっており、累計感染者数は、アメリカ約574万人、ブラジル約362万人、インド約316万人、ロシア約96万人、南アフリカ約61万人、ペルー約59万人、メキシコ約56万人、コロンビア約55万人、チリ約40万人となっています。

日本同様に、第1波以降、減少傾向にあったヨーロッパ、アジアなどでも第2波によって再びロックダウンなどの規制が実施されて始めています。
中国の後に爆発的な感染地となったヨーロッパでは、スペイン、フランス、ドイツなどで感染者が再び増加しており、スペインでは、7月下旬の1週間で1万人以上の感染が確認されており、バルセロナのあるカタルーニャ州では外出禁止令やナイトクラブの閉鎖命令が発令、北西部ガリシア州では一部移動規制も始まっています。この両州の一部地域ではロックダウンが再開されています。スペインは、夏の行楽シーズンでEU諸国に国境を開放したばかりでした。ヨーロッパでは、経済への影響からロックダウンは以前のような大規模なものではなく、一部地域に限定していくようです。

一方、アジア・オセアニアでも、第1波の封じ込めに成功したと言われるオーストラリアやベトナムでも、再び感染者が増加しています。アジアで台湾に次いでコロナ対策の優等生であったベトナムでも、中部ダナンで3か月ぶりに感染者が確認され、国内初の死者も出て緊張感が高まっています。
オーストラリアでは、第2波によって感染が増加していることからビクトリア州とニューサウスウェールズ州の州境の封鎖を開始しました。人口500万人の第2の都市メルボルンでは、感染者が1日で700人以上出たことから外出禁止などの実質的なロックダウンを再開しています。

現在、冬を迎えているオーストラリアやニュージーランドのような南半球の国々での感染の動向を世界の疫学者が注視しています。自国ファーストにならずに世界に目を向けることは、結果的に日本に還ってきます。(吉椿)

No.31 「九州の豪雨被災地からの学び―その②佐賀」

「被災地の現場から」と題したオンライン報告会の第2回を開催し、佐賀県の一般社団法人おもやいから、鈴木隆太さんと満原早苗さんにご報告いただきました。昨年の佐賀県豪雨から、地元武雄市で丁寧な支援を続けている「おもやい」のみなさん。今回の豪雨では、佐賀県太良町を中心に支援活動をしています。非常に学びの多かったお話の、一部をお届けします。

〇ボラセンのかたち
地元社協が平時の相談業務の延長上で被災宅を訪問し、そこから見えたお困りごとに
対して、おもやいがボランティアを募りつつ、経験を活かして対応する。「ボラセ
ン」の形態にとらわれない役割分担。

〇ボランティアを「県内限定」にする意味
県境よりも「半径○km」で募集する方が実際の生活圏に即している。と分かりつつ、
今後を見据えて佐賀県内のつながりをつくるために、ボランティアを「県内」募集す
るという「チャレンジ」。でも「県内で頑張ってるからOK」ということにはしたく
ない。

〇専門家との協働
チームに建築士がいる強さ。専門性を住民の生活目線で活かすことで、被災した方と
支援者の両方に安心や選択肢を届けられる。一緒に悩み考えることができる。

〇制度からこぼれる人を支える
災害救助法が適用されなかった太良町。件数は少なくても一人ひとりの被災者がい
る。制度による支援からこぼれる人を支えるために、民間でクラウドファンディング
を立ち上げ。誰かが動き出すことで、社会を動かすしかないということ。

コロナ禍の被災地支援でも、ウルトラCの解決策はきっとなくて、真摯に向き合っ
て、できることを、自分たちから、やってみるしかないのかなと。
その時に、一緒に考えられる仲間がいること、その真ん中の真摯なアクションが、さ
らに輪を広げること。おもやいのみなさんから、その大切さを改めて感じました。
正解をたどっているのではなく、ベターを模索するチャレンジ。
(立部)

佐賀県では、お家が浸水していても公的支援を得られない方がたくさんいます。おも
やいのみなさんが始めた民間による被災者支援。ぜひ応援をよろしくお願いします。
「令和2年7月九州豪雨災害支援金~小さな被災地にも支援の手を!ひとりひとりの
復興を目指して寄り添うための寄付をお願いします。~」
https://congrant.com/project/omoyai/1958?fbclid=IwAR10QUvhSJc61W5V5XM26bTGNrLiL9no-VGaP1orig87PUXeQOmmPRJDOU8

No.30「九州の豪雨被災地からの学び」

先日、「被災地の現場から」と題して、7月豪雨の被災地である大分県日田とオンラインで開催しました。日田のNPOリエラの代表理事の松永鎌矢さん、副代表理事の河井昌猛さん、被災地NGO恊働センター代表の頼政良太さんの3名より現場ならではの報告をしていただきました。

3年前の九州北部豪雨をきっかけに設立されたリエラは、今回、地元の団体として天ケ瀬や中津江村の被災地の支援をおこなっています。天ケ瀬は、温泉地でコロナ禍で営業自粛をしていて、これからという時に豪雨災害で大きな被害を受け、すでに廃業を考えている温泉旅館も出てきていると言います。
また、道路が寸断し、一時完全に孤立状態になった中津江村では、地域の顔の見えるつながりで助け合ったといいます。中でも、話題になったのが、「生活文化圏」。日田市は、大分県ではあるものの玖珠川沿いを西に大分市に出るよりも、三隈川沿いに東へ福岡県のうきはや朝倉出る方が早いし、便利であると。
思えば、江戸時代は、天領日田の名産、「杉」は、三隈川から筑後川を通じて下流の家具の町、大川に搬出されていた。今も、日田から福岡県内に通勤する人もいるように福岡文化圏なのです。
また、2005年に日田市に合併した中津江村は、福岡県の八女市と熊本県の小国町に境を接していて、中津江村の住民は日田市内ではなく県境を越えて小国町に買い物に行ったり、家族親戚などの行き来もあるそうです。このように生活文化圏という視点で見ていくと、災害ボランティアの募集を県内外で分けることが現実に即していない事が見えてきます。そこに暮らす人たちの暮らしの視点からものを考えることの大切さに気づかされます。実は、これは日本各地の中山間地域にも言える事かもしれません。

CODEの姉妹団体でもある被災地NGO恊働センターの頼政代表は、リエラの理事でもあり、いち早く日田の被災地に入り、リエラのバックアップをしています。現地だけでは、なかなか知りえない住宅再建に関する相談などをオンラインで外部の専門家とつなぐ役割を担っています。コロナの影響で、これまでのように現地に入ることが憚られる状況はありますが、やはりキーになる経験や知恵、ネットワークをもった人が現地に入り、外部とつなぐことの大切さも語られました。やはり、現場に寄り添った人たちならではの生の報告でした。
新型コロナウイルス感染症は、世界各地で第2波が確認されており、収束の兆しすら見えませんが、このコロナ禍の中でも現場から生まれてくる智恵や経験知を学びながら、一人ひとりにできることを考えていきたいと思い
ます。(吉椿)