「海外の学びを日本へ⑥-インド-」
2019年末に中国武漢で新型コロナウイルス感染症(COVID19 )の感染が始まり、ピークは、中国からヨーロッパ、アメリカ、そしてロシアへと移り変わっています。最近では、ロシアやブラジルでも毎日1万人以上の感染者が確認されています。現在、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)と呼ばれる新興国で感染が拡大しています。
インドでは、1月30日に南部ケララ州で最初の感染者が確認されました。ロックダウンが開始された3月末時点の感染者は562人でしたが、その後右肩上がりに増加し、最近は連日4000人近くの感染者が出ており、歯止めがかからない状況が起きています。昨日(5/17)の感染者は4987人と報告され、現在、感染者96,169人、死者3,029人となっています。(5/18 Johns Hopkins大学)
政府は、3月25日にインド全域で世界最大かつ最も厳しいといわれるロックダウンを開始しました。13億人の住むすべての町がロックダウンし、公共施設、商業施設はすべて閉鎖、交通機関もすべて運行停止、生活必需品の買い物以外は、厳しく制限され、違反すると罰則も課されます。
そんなインドでも5月末までロックダウンは延長されていますが、この状況で段階的に外出規制が緩和されつつあります。それは、先進国のように政府の手厚い補償はなく、多くの人は自ら働かざるを得ない状況にあり、STAY HOMEさえできないのです。出稼ぎ先から150㎞歩いて帰郷しようとした12歳の少女が故郷の15㎞手前で息絶えた、死因は脱水症状と栄養失調だったという悲惨な状況も起きています。しかし、未だ感染が収まっていない中で出稼ぎ労働者を帰郷させるためにバスの運行が開始したことで、感染の拡大が懸念されています。
CODEが中国のNGOと共に立ち上げた国際アライアンス「IACCR」のメンバーでもあるAbdhesh Kumar Gangwarさん(RCEスリナガル:持続可能な開発教育のNGOコーディネーター)は、「現在、インドの最大の課題は生計です。多くの人にスキルを身につけさせるための財政援助が必要だ。帰郷する多くの出稼ぎ労働者たちが自宅に戻る前の14日間の隔離検査のマネジメントに政府はNGOやボランティアの力を借りている。」また、レッドスポット呼ばれる感染者の多い地域では完全に封鎖されており、人や物の往来さえもできません。これらの地域では、ドアからドアへ物資を届けるボランティアを必要としており、医療など緊急の場合は、ボランティアに許可が出され、支援に動いているそうです。
そして「最前線で活動するボランティアは、健康で若い人だけが活動が許可され、インドではソーシャルディスタンスがなかなか守られていないので、それを実行するためにボランティアが必要だ」、「隔離や検疫の施設のマネジメントでも行政職員だけでは不十分なのでボランティアが消毒などもしている。NGOは政府の許可を得て、周辺業務をサポートしている。」と教えてくれました。
そして最後に「インドでは、いつもNGOたちが、パイロットベースで支援プロジェクトを始め、その後、政府がそれを取り上げて政策や計画にすることで長期的なものにしていく。そうやって主流化していく。 NGOは資金を政府に依存しているが、時に政府の政策と対立することもあり、政府に資金を期待することはできない。その場合、外国の資金を得て活動している。すべてのNGOではないが・・・」とインドのNGO事情を語ってくれました。
コロナウイルスで世界中が厳しい状況に陥っていますが、インドの状況は日本とはかなり違う事を思い知らされました。(吉椿)