月別アーカイブ: 2022年5月

アフガニスタンからの贈り物に感謝!!—45

アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権は、「独立人権委員会」を廃止したと17日までにロイター通信が伝えたようだ。昨年の8月15日以来、女性に対する就労機会や教育機会を制約する行為を強くして来た経緯を見ると、同委員会の廃止によって、さらに圧力がかかることが懸念されるだろう。

さて、先日から映画『明日になれば~アフガニスタン、女たちの決断~』が上映中だ。監督は、難民二世のサハラ・カミリさん(36)。先日、テレビでカミリさんのインタビュー放送があり、観る機会があった。カミリさんは、昨年の8月15日にカブールから避難する際に、ウクライナ政府に難民として受け入れられ、一時キーウ(キエフ)にも滞在した。カミリさんは、カブールから脱出したようすをツィッターにアップし、世界に向けて「アフガニスタンを見捨てないで」と訴えたそうだ。

以下は、サハラ・カミリ監督のコメントです。

―伝統に縛られた社会での生活を変えようとしている同胞の女性たちについて語ることは、アフガニスタン出身の女性映画製作者としての私の使命です。アフガニスタンの多くの町や村を回り、ハヴァ、ミリアム、アイーシャのような女性たちの実話を見つけました。ハヴァはアフガニスタンの主婦、ミリアムは知的で学のある女性、アイーシャは中産階級のティーンエイジャーです。彼女たちは家父長制社会に屈服しないように努めています。彼女たちの選択は、あらかじめ決められた人生への抵抗です。私が目指したのは、何年も声を出すことができずにいたけれども、運命を変える覚悟ができた女性たちの人生について語ることです。―

アフガニスタン国内で取材をしていた時に、多くの女性の声を聴いたなかで、カミリさんが感じたことは、「アフガン女性は、母になることは女性の選択ではなく強制されることだ」「アフガン女性はどんなバックグラウンドをもっていても皆、人生のある時点で同じ運命をたどる」とも。そして「アフガニスタンでは、母になることは女性の選択ではなく強制されることです。結婚した女性は必ず母にならなければいけない。母になることで社会的立場が保証されるのです」と。(毎日新聞2022年5月16日より)

この映画『明日になれば~アフガニスタン、女たちの決断~』の上映による収益の一部はウクライナ大使館に寄付されるそうです。
是非、ご覧になってください。詳細は映画公式サイトへ。
(CODE事務局:アフガニスタン 担当 村井雅清)

●昨年の8月15日以来、CODEが支援してきたぶどうの生産地などの状況が全く伝わらないので、これまでご案内していた「ぶどう畑の様子はこちらから」とそのURLは省略します。現地からの情報が入り次第、都度ご報告しますのでご容赦下さい。

アフガニスタンからの贈り物に感謝!!—44

2020年にノーベル平和賞を受賞したWFP国連世界食糧計画(国連WFP)は、昨年8月15日に暫定政権を樹立した「イスラム主義組織タリバン」が統治するアフガニスタンでは、「(2022年の)6月から11月にかけ、人口の45%に当たる1890万人が深刻な食糧危機に陥るとの予測を発表した。」(神戸新聞 2022・5・17)
さらに、「降水量が少ないこと、ロシアによるウクライナ侵攻で国際的な食料や燃料価格も高騰のため状況改善の妨げとなった」と。(同紙)
また国連WFPは「技術訓練や気候適応プロジェクトを通じて、家族が自分たちの土地を耕し食料を育てられるよう、人びとの生活に投資し続けていきます。」とも述べている。

以前、本レポートで同暫定政権が「ケシ栽培の禁止」を発表したことを伝えまた。“ウクライナ戦争”の影響で、アフリカなどでは「パンが食べられず、しかも一日一食で、キャッサバを食べている」との報道もあった。また、ケニアは長期的かつ記録的な干ばつで、家畜の多くが死に絶え、飲料水は塩水を飲まざるを得ない状況で健康被害が広がっている。こうした食糧危機は、アフガニスタンに留まらず、これまでに例を見ない深刻な事態だ。
ならば一つの対策として、国連の関係機関(WFP)や国連食糧農業機関(FAO)など)は全力をあげて、アフガニスタンのケシの耕作地の全てで小麦や大豆、ぶどうを育て、そこからの全収穫量を農家から買い取り、飢餓対策の食糧支援に回すとともに、アフリカなどで食糧危機になっている国々にも供給するということを提案したい。これには日本のNGOはじめ各国のNGOも賛同するだろう。当然国連は、タリバン暫定政権に人道的援助に携わっているすべての援助者の安全の保障を約束させるべきことは言うまでもない。

おそらくこんな知恵は、すでに実施していますとたしなめれるかも知れないが、アフガニスタンにおいては、昨年の危機状態から10カ月が過ぎようとしているのに、状況は改善されるばかりか、ますます悪くなっている現状に愕然とせざるを得ないからだ。
「FAOは、生計支援を継続し、アフガニスタンの7割の人口を占める農家と家畜業を営む家庭には、生産性を保てるように、命を救う支援と現金支給を行っている」「高品質で現地で手に入れた種、肥料と訓練を含む小麦の耕作パッケージを提供している」という国連レポートもあるので、いわゆる総合的なプログラムで考え、実施していると思われるが、人道的支援として叡智を絞って実施すことを願う。

こうした惨状を見ると、むしろタリバン暫定政権を国際的にも承認することを積極的に考え、同暫定政権自らが自国の為に活躍できるようなプログラムを提案することも一考に値するのではないか・・・・・?「制裁」を課するだけでは何も解決しないばかりか、さらに被害を被るのは一般の市民であることを忘れてはならない。
(CODE事務局:アフガニスタン 担当 村井雅清) 

●昨年の8月15日以来、CODEが支援してきたぶどうの生産地などの状況が全く伝わらないので、これまでご案内していた「ぶどう畑の様子はこちらから」とそのURLは省略します。現地からの情報が入り次第、都度ご報告しますのでご容赦下さい。

アフガニスタンからの贈り物に感謝!!—43

アフガニスタンの記事が、極端に少なくなってきた。ここ数日前からのマスコミの記事を見ると、北部マザリシャリフや首都カブールでの自爆などの爆破事件が相次いでいる。特に、モスクに一般の人たちが集まっているときの行為は、決して許されるものではない。昨年の8月15日以来、一応暫定政権を維持しているタリバーンは、イスラム教のシャーリア法に則って政治を司っている。その象徴であるモスクが攻撃のターゲットになっているということは、大変気がかりだ。

さて、そのシャーリア法に基づく政策の一つで、「勧善懲悪省」を設置したことから、就労や教育に対する制約が厳しくなっていることは周知の事実だ。その制約の一つに、女性の服装のことがある。暫定政権は、つい先日5月7日に「女性が外出する際に全身を覆うことを義務づける」と発表した。そもそもアフガニスタンでは、タリバーンだからということではなく、また政権による義務付けでもなく、女性の外出時の服装に制限があった。2001年にタリバーンが陥落した後、2002年からアフガニスタンに出入りしていたときにも、私は何度も女性の服装には目が奪われた。
先述した「全身を覆う」というのは、アフガニスタンでの女性用の伝統衣装「ブルカ」の着用のことだと言える。しかし、国際社会からは「人権侵害だ」との批判の声が上がっている。

シャーリア法にはどのように表現されているのか正確には知らないが、巷で言われてるのは「既婚の男性の前では、むやみに肌を露出してはいけない」ということらしい。私がアフガニスタンの家庭を訪問した時に、やはり女性はブルカを被っていた。こんなこともあった。ある真夏の暑い日に、デコボコの悪路のため、ゆっくりと車で路地を走っているときに、かなり前方遠くに一人の女性が歩いていた。「あれ、あの人ブルカを被っていない?」とちょっとびっくりさせられた。でも、その女性はブルカを着用していたのだが、あまりにも暑いからなのか全身を覆うようにスッポリとは被っていなかったのだ。ところが、車がゆっくりとその女性との距離を縮めて行くと、その女性は私たちと目があったのか、慌てるようにブルカで覆うように頭から被ったのだ。「えっ、こんな状態でも・・・・?」と私は苦笑いを抑えることができなかった。
その後、アフガニスタンの北部で地震があったときに、路上に並んで女性が主食である「ナン」を支援団体から配って貰っていたときには、みんながブルカを被って並んでいたのも印象的だった。

CODEは、支援のモットーとしている一つに「被災国の宗教や生活習慣を尊重する」と掲げているので、あくまでもこのような習慣もすべてを否定しない。ただ、難しい選択だが、宗教上の文化が違っていても、「人権の尊重」という視点から考えると、必ずしも「べき論」で理解すべきではないだろう。尊重するものの、「どんな服を着るのかは、あくまでも着る人の意志を尊重するのが「人権の尊重」ではないだろうか?
(CODE事務局:アフガニスタン 担当 村井雅清)

*CODEは、アフガニスタンからの退避者に野菜を提供しています。ご支援、ご協力お願いいたします。