「雲南地震 被害が少なかったのは?」
7日午後21時50分、中国雲南省南部のプーアール市景谷県タイ族イ族自治県でM6.6の地震が発生した。現在のところ、死者1名、負傷者324名、倒壊家屋2000棟以上の被害が報告されている。雲南省では8月にも北部の昭通市魯甸県でM6.5の地震(魯甸地震)が起き、617名が亡くなり、地震の大きさ、震源の浅さ(12km)、人口密度、家屋の耐震性の弱さなどが専門家によって指摘されているが、今回の地震は前回の地震と同規模だったにもかかわらず、人的被害が少なかった。
これについて雲南省地震局の局長は、今回の地震の被害の少なかった原因をいくつか指摘している。現地の釘を一本も使わない伝統家屋が地震に強かったことや人口密度が低かったこと、被災地の植生が豊かだった事が地滑りなどのリスクを軽減したと語っている。
確かに魯甸地震の被災地では、人口密度がこの地震の6倍で、土レンガを積み上げただけの家屋も非常に多かった。
以前、雲南省に3年ほど暮らしていた際に、雲南省南部のタイ族やハニ族(タイではアカ族)の多くの人たちが、高床式の木造家屋に暮らしている姿を沢山見てきた。タイ族やハニ族の住居は竹楼(バンブーハウス)とも呼ばれ、壁や柱に竹が使われ、蔓などで接合部を固定し、釘や金具は一本も使っていな伝統構法で、屋根は薄い瓦で葺いているシンプルな構造である。気候が年中暑い事から高床式の二階が住居スペースやテラスで涼を取れるようになっており、害虫などからも身を守る。また、一階部は家畜小屋を設け、二階のトイレからそのまま糞尿が家畜の餌として落ちてくる効率的なシステムに驚いた事を思い出す。
雲南省では、このような伝統的な暮らしが、地震から身を守った。だが、現在、著しい成長を遂げる中国では、その余波は雲南省の少数民族エリアにも及んできており、一見、高床式の伝統家屋のように見えるが粗末なコンクリートやレンガを使ったエセ伝統家屋も増えてきている。
災害を機に、今の暮らしを見つめ直す。これは成熟社会と言われる日本も、中国の少数民族の貧困エリアでも同じことである。(吉椿雅道)
タイ族の高床式住居(2005年吉椿撮影)