フィリピン北部Samarの村人が語る、生命と経済を守ったマングローブの再生

フィリピン北部Samarの村人が語る、生命と経済を守ったマングローブの再生
情報源:国連開発計画
日付:2013/11/13
歴史的な記録として残る最大級の台風の結果、フィリピンの広大な地域が壊滅したが、マングローブの再生に取り組んでいる草の根的な構想は、災害の危険を減少させるための健全な生態系と環境保全の重要性を示している。
Trowel開発財団は北部Samarにおける地域密着型の組織である。台風Haiyanによってもっともひどい被害を受けた地域ではないとはいえ、ここでも深刻な影響を受けた。過去10年以上この構想は海洋生物の再生と地元の食料の安全を強化する手段として、悪化したマングローブの生態系の植林を行ってきた。
沿岸に木を植えることは、自然災害に対する天然の緩衝装置を構築することも意味している。それは地元経済の中心を占めている魚やカニの内陸部の養殖場を嵐の大波から守る手段となるということである。台風Haiyanの結果として、環境保全に対する地域社会投資への回帰は予言的に高まると明確に示している。
その組織とのEメールでの今日のやり取りによると、地域計画の場所への被害は最小限であったということだ。Trowel開発財団事務局長のLeonardo Rosarioは地元の村の復元力は生態系機能の回復によると言っている。「非合法な伐採からマングローブを守っていなかったとしたら、そして魚の養殖場を取り囲む地帯に木を植えていなかったら、貧しい漁民が作ってきたもの全てを巨大台風は破壊してしまっただろう。」
マングローブの植林活動と、カニ養殖において気候による打撃や環境による災害を減らす地元の方法を採用する取組みによって、この草の根的構想はUNDP(国連開発計画)の2010年度赤道賞を受賞した。
Trowel財団が地元の村と共に推進したtie-crab(結びカニ)養殖は、それぞれのカニをブイの付いた竹の棒に結び付けることを導入した、カニを太らせる技術である。もし養殖場の水があふれることがあれば―これは緩衝装置としてのマングローブを再び植えることの動機づけになる頻繁に起こる事態だが―カニはしっかりと棒に結び付けられていて、海に流出してしまわない。もし棒が洪水にのまれて折れるような時には、ブイが洪水の水の上に容易に見えているのでカニを取り戻すことができる。この取り組みによってこの組織は地元の漁業世帯の平均収入を2倍にした。
「たとえ強い波が来てもマングローブの森によって弱められて、結んだカニは影響を受けなかった。太ったカニは養殖場の中で無傷の状態で残っていた。カニ達は泥の中に穴を掘って潜っていたのだ。」とRosarioは書いている。木を植えることは命を救い、地元の経済の崩壊を救ったとRosarioははっきりと断言している。
「Taclobanの状況は一層悪かった。というのもこの地域は開けた海の近くに位置していて、海と陸とを隔てるマングローブの木という緩衝装置がない。そこには嵐の力を弱めるマングローブの森がなかったので、巨大台風が最大の力とスピードで陸地を襲った。」と彼は書いている。
健全で適切に機能している生態系は、人間の健康、安全、そして満足できる生活状態にとって絶対必要であるさまざまなサービスを提供する。Trowel財団の経験は自然資本への投資とそれを行う公共サービスの責務の有用性をたくさん物語っている。それは良好な環境への認識をもたらすだけでなく、良好な経済への認識もつくることになる。今回の場合でいえばマングローブの植林は命を救うだけでなく、地元のインフラへの打撃に対する緩衝装置となり、地元経済に対するかなり大きな損失の可能性を防ぐことにもなる。公共投資を検討している政府は注目すべきである。-開発と安全の点において環境の回復は最重要課題である。
「マングローブの森が沿岸地域の人々と生活を守っていることの重要性を政府が今すぐ認識することを私は望んでいる。」とRosarioはメッセージを締めくくっている。
原文URL:http://reliefweb.int/report/philippines/mangrove-restoration-saved-our-lives-and-our-economy-says-villager-northern-samar
参考:
・Trowel Development Foundation http://www.equatorinitiative.org/
・カニの種類-Mud Crab(和名ノコギリガザミ)、別名マングローブクラブ
・赤道賞-環境を保護しながら地域コミュニティを力づける行動をとっている草の根組織に対し国連主導のパートナーシップである赤道イニシアティブから授与される賞
訳:Y.Kさん