「残っている建物と倒壊した建物の違いは何ですか?」。被災地で出会った人たちに何度も尋ねた言葉だ。
カフラマンマラシュ(マラシュ)の中心部SaziBey Mahallesi地区はこの日も重機の騒音の中、砂ぼこりが舞っていた。軽く見渡すだけでも十数ヵ所で重機による捜索活動が行われていた。
砂ぼこりの中がれきの山をじっと見つめる女性がいた。小学生の教師であるこの女性は、母親の帰りをじっと待っていた。約20年前に建てられた9階建てのマンションの2階に彼女の母親が住んでいて未だ発見されていないという。先の質問をすると彼女は、「ここで倒壊したマンションはすべて同じ会社の人が建てたのよ」と語る。
周りにいた男性からも「マンションの1階が店舗で、面積を広げるために柱を抜いたんだ!」と声が上がる。
マラシュの高校の避難所に応援に来たイスタンブール教育コーディネーターの男性は、「地盤と構造の問題の組み合わせだ」と言っていた。
暗いマラシュの街で明かりの灯る一室から手招きをする人たちがいた。行ってみるとパン屋さんの職人さんたちだった。マンションの危険度判定を終えたので、ここでパンを焼いてボランティアで被災者に配っているそうだ。
彼らにも同様の質問をした。
「政府の建設チームが建てた住宅はひとつも倒壊していない」「この前大統領がマラシュに来て、被災地のすべての街を1年で再建すると約束したんだ」「今も内務大臣がマラシュに残って指揮している」と政府への期待をにじませる。
他方、トルコの若者たちは、「建設業者は政府にお金を払えば、簡単に建設許可がおりる」「政府には色々な顔がある」と口を揃えて語る。世代や人によって政府に対する見え方が違うようだ。
最後に職人さんたちに、日本や外国に期待することはあるかと聞くと「いや、何も期待していないよ」という。
その言葉を聴いた同行の藤本さん(トルコ・ネブシェヒル在住)は「トルコ人は、他人に何かやってもらうよりも、自分たちでやりたいという気持ちが強いからね」と教えてくれた。
(吉椿)
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