【CODE四川スタディーツアー2016年 感想 米川安寿】
今回のスタディーツアーに、私は人と防災未来センター(21世紀研究機構)の研究員として最年長で参加しました。普段は京都に暮らしていますが、偶然の縁に導かれ、2015年4月から21世紀機構で働くことになり、4月1日から神戸で週2回、勤務しています。ところが直後の4月25日、ネパール地震が発生しました。ネパール生まれだった私にとって、このタイミングで防災の研究所で働くことになったことは偶然とは思えず、「いったい何の関係で防災の研究所で働くことになったのだろうか」と悩み続けることになりました。というのも、私が担当したのは「少子高齢化対策」の研究であり、周囲にいる防災の専門家たちがネパール地震で慌ただしく動く中、私の担当研究は地震や防災に関与することが出来ず、自分の故郷で起こった地震に対応して、専門家たちを眺めるばかりだったのです。
そんな私自身は、神戸で働く以外の日々は、海外の養蜂家とともに、豊かな森の植生の保全活動を行う蜂蜜専門店ハニールネッサンスを運営しています。地震後は、自らの事業活動内で被災地の森の先住民の支援を行っていました。それまで防災は必ずしも意識している分野ではありませんでしたが、これをきっかけに「森の保全は防災ともいえるのでは?」という思いも沸き起こるようになりました。そして今回、不確かだった自分と防災との繋がりを発見したいと考えスタディーツアーに参加することとなりました。
元々防災に対する活動経験や専門知識はなかったのですが、スタディーツアーに参加した結果、大変大きな収穫がありました。それは、「一週間、防災分野の研修にどっぷり浸かる」ことによって、自分自身の中に「防災分野と関わっている感覚」が生まれていたことでした。ネパール地震発生直後から、防災の専門家たちがバタつくのを眺めていたときは、むしろ自分と防災は関係がないという一種の虚しさに耐えるばかりで、心に溝が出来ていました。しかし一週間、参加者メンバーとともに被災地を巡り、四川の人々に出会い、話を聞く中で、気が付かぬうちに、自分自身の世界観の中に、大きく防災という文字が生まれていました。吉椿事務局長は「防災という言葉に拘らなくても、日々の出会いと生活を大切にするということ自体が大きな意味をもつ」とおっしゃっていましたが、人と防災未来センターという場で防災の専門的研究活動を目撃し続けてきた関係からも「防災」と自分自身との関係は発見したい事でもあり、テーマとしてこだわっていた点でもありました。今回のスタディーツアーでは、何も知らなくても一週間じっくりとその世界に浸ることにより、新しい世界感が身近になっていくことを知りました。今後も、こうして何も知らなくてもツアーやCODEの活動に参加する人が増えればいいなと思います。私は、帰国してすぐに、人と防災未来センターへ行き、以前とは違う、理解を伴った親しみをもって研究スタッフの人々と新たな交流を始めています。ありがとうございました。