「四川に思いを寄せて。」 佛教大学教育学部通信教育課程4回生 中山 迅一
今回の四川研修の感想を述べさせていただくにあたり、まず始めに今回1週間という長い期間、私たち研修参加者の安全と、より深い学びのために尽力してくださったCODE事務局長の吉椿さん、2008年の四川地震以降、様々な形でご支援いただいた支援者の皆様、CODE未来基金を通じて、まだまだ学ぶべきことの多い私たちに今回貴重な学びの機会を与えてくださった皆様に心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
四川へのお誘いを受けた時は、初めて中国に行ける、被災地を訪れることができる、そして小さな農村に入り現地の方と出会うことのできる、吉椿さんをはじめNGOで活動されている方、ボランティアで被災地と関わっている方と行動を共にできる、と兎に角自分自身が求めていた機会に一度に出会えた喜びで一杯でした。
吉椿さんから1月末にお誘いいただいた後で、個人的に2月上旬に初のトルコ、初のタンザニアでの現地滞在を経験し、日本から見る諸外国のイメージと現地の雰囲気との差を肌で感じたこともあって、ちょっとやそっとのことでは心が動くことはない、言ってもすぐ隣の国、日本で一番会える外国人の出身国…と思っていたのですが、結局7日間で1日たりとも驚かない日は無かったです。それだけ沢山の気づき、学び、出会いに溢れた日々でした。ここではそのうちのほんの少し、今お伝えしたいことを3つ書きます。
一つ目の驚きは、中国はとにかく広いということ。そして多様だということ。まず上海で中国に入国するまでよりも、上海から四川までのフライトの方が長かったことから始まり、自分の中で「中国」という単一の小さなイメージしかなかった国が膨張し、躍動する感覚は、今まで行ったことのある国では味わったことのないものでした。料理の種類やルーツ、都市部と農村の暮らしの違い、話の端々に出てくる「多民族」というキーワード、そういったものにとにかく自分の中のイメージを壊され続けました。
二つ目の驚きは、中国人の「自力更生」の力。震災から復興するにあたって掲げられたスローガンの中の言葉として出会ったのですが、まずは自分で立ち上がる、という精神が決して言葉だけが一人歩きしているのではなく、四川、特に震災によって大きなダメージを受けた地域の方ほど、震災以前とは違う暮らしをせざるを得ない状況の中で、それでも逞しく生きてらっしゃる様子には、自分自身を顧みた時にまだまだ生きることに対して甘いと痛感させられました。
三つめの驚きは、「支え合いの連鎖」でした。それが、この旅で経験したもっとも大きな驚きです。私自身、これまでの短い人生の中で一度だけ、本当に行き詰ってどうしようもなくなったことがありました。今はその行き詰りから抜け出して幸せに過ごせているのですから、そんなに大したことはなかったのかも知れませんが、その時はただただ苦しかったことだけは今でも思い出されます。そんな時に、一人の女の子と出会いました。彼女は阪神淡路大震災の記憶はほとんど無いのですが、自分なりの課題意識をもって東北支援と関わっていました。私は彼女の話を聞いて、自分を見つめなおした時に、阪神淡路大震災の一番大変だった時に神戸に育ててもらった自分が、自分のことだけを考えて小さなことで落ち込んで誰の役にも立てていないことが悔しいと思うようになりました。そして、自分がしっかり前を向いて生きることに意味があるのだと少しずつ信じられるようになってきました。そんな変化を自分にもたらしてくれた彼女が帰りたいと言っていた場所、会いたいと言っていた人々が、光明村であり、そこで住む人々でした。彼女にとって光明村を訪れたこと、そこの人々と関われたことは彼女自身という人間に本当に大きな影響を与えていたように思います。
今回の研修で色んな方のお話を聞く中で、実はその光明村とのかかわりというのは震災直後から吉椿さんを始めとしたボランティアの方がガレキの撤去を手伝ったことが今につながっていることを知りました。そして、ある日本人のボランティアの方がご自身も辛い経験を四川大地震の中でされている中で、誰かのためにというより何かを掴もうとされて必死に光明村の方と関わったことが、光明村の人の心を動かしたのだということを聞かされた時に、私自身はその日本人のボランティアの方にただただ感謝するしかなくて涙が溢れました。誰かのことを支えるだけじゃなくて、辛い人でも誰かのことを支えようとすることが本人を支えることにつながる、という「支え合いの連鎖」の中で、ついさっきまで全然知らなかった人なのに、回りまわって、実は知らず知らずの内に自分の人生を支えてくださっていたということを実感できたこの経験は自分にとって本当にかけがえのない宝物になったと思っています。
今後は自分のしたことがどこかで誰かの支えになれることを願って、もっともっと自分自身がよりよい社会のためのよりよい一員になっていきたいと考えています。