【中国四川省地震救援ニュース】No.123 第1回日中NGO・ボランティア研修交流​の感想 その2

NGO・ボランティア研修交流事業 感想」 神戸大学 北川和真

 今回、NGOボランティア研修交流事業で2008年5月12に発生した四川大地震の被災地を視察し、被災地で活動したNGOやボランティアの講義をうけてきた。3月24から29まで約6かけて映秀鎮や水磨鎮、旧北川県地震遺跡などを見学し、CODEの吉椿さん、NGO備災センターの張国遠さん、光明村の方々、光明村でのボランティア活動に従事したIさんなどの話をきいた。

 研修で印象に残っていることは複数ある。まず、光明村の方々と吉椿さん、Iさんが親しげに交流している姿である。つぎにIさんのボランティア体験談が、そして吉椿さんが言っていた言葉「NGOは平等じゃなくていい」が印象に残っている。吉椿さんもIさんも2008年5月には光明村に入り、瓦礫の片付けなどを住民の方とともに汗をかきながらおこなった。光明村でのボランティア活動は2008年に終了するも、その後、現在にかけて村の行事に参加したり、老年活動センターを建設したりして光明村の方々と吉椿さんをはじめとするボランティアやNGOとの関係性は育まれていった。これらの活動は四川大地震の被災地のでも光明村、そのでも四組と五組というかなり限定的なコミュニティに向けられた取り組みであり一見すると不平等なものに映る。しかし、被災直後にともに汗をかくことで築かれた関係性にひたすら尽くすことで、救われた人が存在するのは確かなのである。光明村のXさんもLさんも、地震はとてもつらいものだったが、そこでいろいろな人に助けられたことは人生を変えたと語る。ボランティアとして光明村での瓦礫の片付けなどに関わったIさんは、四川地震で恋人を亡くした悲しみが光明村の人びととともに汗をかくうちに癒されていった。Iさんは現在も成都に住み、光明村の人を雇用できるような店を開くため奮闘である。平等性にこだわっていては、このような、被災者・ボランティア双方にとって人生を変えるほどの関係性は築かれていなかっただろう。
 偶然むすびついた被災者と支援者が、互いに助け助けられながら力を得て、お互いを喜ばせるためのとりくみを積み重ねていくという支援の在り方は、私自身が東本大震災の被災地でおこなってきた支援と重なるところもあり、特に言葉の壁を越えてそれを実現した点は参考になるものであった。私は2011年の8月から2015年3月にかけて東本大震災の被災地で足湯ボランティア活動をおこなってきた。だいだい2カ月に一度のペースで活動するのだが、私はほぼ毎回、岩手県大槌町のとある仮設住宅に行っては、その仮設住宅で暮らすおばあちゃん達と足湯をしたり、手芸をしたり談笑して過ごしている。2011年秋、仮設住宅に入居してすぐのころに初めて活動をおこない、その時私のたわいもない話を面白がって聞いて下さったことが私には嬉しく、それ以降、この人たちと楽しい時間をともに過ごそうと思い活動を続けてきた
この経験は支援を考えるにあたっての私の原点となっている。

 今回の研修に参加するにあたって最も大きな関心事は、言葉の壁を越えて関係性は築けるのかということであった。私が岩手のおばあちゃん達と築けたような関係は言葉が通じない人たち相手でも築けるのか、ということが知りたく参加した。参加してみて、私は国語が話せないのでコミュニケーションをとることが難しく、やはり言語は関係性を築く上で重要なのかと痛切に感じた。しかしIさんが、2008年当時、国語が話せなかったにもかかわらずボランティアとして光明村に訪れ、村の方と親しくなったという話をきくと、もちろん言語は重要だが、関係性を築くために必要なことは言語だけではないと思うようになった。むしろ言語はわからずとも相手となにかを分かち合おうと、積極的に働きかけようとする姿勢がより大事なのではないかと思うようになった。そう思うと今回の研修の私は、言葉がわからないということで何かしらのコミュニケーションをとる積極性に欠けていたので、その点を反省しなければならない。言葉が通じない相手ともコミュニケーションをとるために何が必要で、何が自分にはできそうなのか、言語なのか、それともそれ以外の何かなのか。このあたりを今後もっと突き詰めていきたい。

 最後に、このような大変意義深い学びの場を提供して下さったCODEの皆さま、CODE未来基金、そして2008年四川地震発生から今に至るまで、四川の被災地に足を運び、今回私たちが研修する礎を築いて下さった多くのボランティアの皆さま、私たちも含め来訪者を温かく迎え入れて下さる四川の被災地の皆さま、ありがとうございました。

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